第232話 ホロスコープ星国 パート9
ハダルの町は、北にウルフの森、西にグリの森、南にケルの森に面している町であり、魔獣が住む森に面しているので、とても危険な町と言われているが、あることが理由でこの町を魔獣は襲わないのであった。
ウルフの森はウルフキングの森であり、グリの森はグリフォンの森であり、ケルの森はケルベロスの森である。ケルベロスの配下であるキマイラが、ケルベロス軍団派閥から抜け出して、キマイラ軍団を立ち上げるために、カプリコーンの話を信じてウルフの森へ行った。そしてキマイラの手下の羊の魔獣も後を追ったのである。
フレキのウルフでの姿の走行は爽快であった。心地よい風を感じながらハダルの町へ向かった。
「フレキさん、町が見えたきたよ」
「本当ですね」
フレキは、町が見えてきたので人間の姿になった。
「フレキさん、町に入るには身分証が必要なの・・・私は身分証はないし、フレキさんもないよね」
「もちろんありません」
「でも、身分証がなくても、町へ危害を加えないと判断されたら、町へ入ることができるので、フレキさんは大人しくしていてね」
「私はいつもおとなしいので大丈夫です」
私は、フレキと姉妹という設定でこの町に入る事にした。
私はハダルの町の門番に声をかけた。
「町に入りたいのです」
「身分証を見せてください」
門番は答える。
「盗賊に襲われて持ち物は全て奪われました。なので身分証はありません」
私は適当な嘘をついた。
「たぶん・・・盗賊の正体はホロスコープ星国の連中でしょう。命があっただけでよかったですね」
門番は心配そうに言った。
「この町は、ホロスコープ星国ではないのですか?」
私は門番に聞いた。
「この町は、どこの国も属さない町です。ホロスコープ星国は、星の使徒から力を授かった12使徒が支配している国です。12使徒に従わない者は、容赦無く殺される危険な国です。なので、この町はホロスコープ星国から逃げ出した者で作られた町です」
「そうなのですね。ホロスコープ星国は危険な国なのですね」
「そうです。あの国へは行かないほうがいいでしょう」
門番は親身になって答えてくれた。
「わかりました」
私は満面の笑みで感謝を示す。
「旅で疲れているでしょう。町へ入る許可を与えましょう」
「ありがとうございます」
私は門番にお礼を言って町の中へ入って行った。
「どうして、あの姉妹を簡単に町の中へ入れたのだ」
もう1人の門番が言った。
「美人の姉に可愛い妹ではないか。町長様も気に入られるだろうよ」
門番は不敵笑みを浮かべていたのであった。
「フレキさん、優しい門番でよかったね」
私は元気よく言った。
「そうね。でもなんか変ね匂いがしたわ。この町は本当に人間の町なのかしら」
フレキは不安げに言った。
「フレキさん問題はありませんよ。そんなに簡単に人間に変身できる魔獣なんていないですよ」
「そうですね。私の考え過ぎでしたね」
フレキは一抹の不安を拭いきれなかったが、私の言葉を信じたのである。
私は町に入るとすぐに冒険者ギルドを探した。しかし、この町には冒険者ギルドはないらしい。この町はどこの国にも属さないのでギルドが存在しないのであった。
私は、南の森で手に入れた素材を売ってお金に変えようと思っていた。フレキの仲間の素材なので、フレキには丁寧に説明して許可はもらっている。
私は、素材は道具屋さんで売れると聞いて、道具屋さんに行き素材を換金することができた。
フレキは、初めて町にきたので、物珍しそうにキョロキョロと周りも見ている。
「あの食べ物を食べてみたいです」
フレキはフランクフルトを指さした。
「あの飲み物を飲んでみたいです」
フレキはオレンジジュースを指さした。
「あの食べ物も美味しそうです」
フレキはパンを指さした。
私は、フレキに人間の食べ物を食べさせてあげたいと思って、気になる物は全て買ってあげる事にした。
フレキは、両手一杯の食べ物飲み物を持って嬉しそうにしている。
「人間の食べ物は美味しいです。森を出てよかったです」
フレキは満足そうに言った。
私はフレキと食べ歩きをして町を散策した。そして、町の散策を終えて宿屋に泊まることにした。
フレキは、初めての森を出ていろいろな経験をしたので、かなり疲れていたみたいであった。なのでフレキはすぐに眠ってしまった。
私もフレキの隣で、お姉さんに甘えるようにフレキに抱きついて寝る事にした。
『ガタン』
私たちが寝静まった後に宿屋の部屋の扉がゆっくりと開いた。
「あそこに寝ているのが、昼間にこの町にきた綺麗な女性と可愛い女の子ね」
1人の女性の声がした。
「はい。そうです。ホロスコープ星国から逃げてきたと思われます」
男性が静かに言った。
「かわいそうに・・・私があの姉妹を救ってあげるわ」
女性が言った。
「それがいいと思います。美しい姉妹なので姫の仲間にピッタリだと思います」
男性が言った。
「そうね。私の美貌には敵わないと思うけど、私の次に美しいと認めてあげるわ」
女性は自信ありげに言った。
「姫も美しいですが、あの姉妹のお姉さんのが美しいと思います」
男性が張り合うように言う。
「そんなことないもん!私のが美しいもん」
女性は、自分のが美しいと言い張る。
「もちろんです。姫はとても美しいです。世界で2番目に美しいと思います。しかし1番は彼女だと思います」
男性は頑なにフレキが1番だと言い張る。
「私だもん」
「彼女です」
「私だもん」
「彼女です」
2人の争いは止まらない。
「うるさーーーーーーい」
私は、2人のやりとりがあまりにもうるさいので、目を覚ましてしまった。
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