第233話 ホロスコープ星国 パート10


 

 私は男女のうるさい言い争いで目が覚めてしまった。


 しかも、フレキと部屋に侵入してきた女性とどちらが美人かで言い争っている。私も美人なのに争いの対象外であったのでさらに怒りがおさまらない。




 「なんで、私も入れてくれないのよーーー」



 私は子供同士の殴り合いのように手をバタバタして怪しい男性を叩きつけた。



 「やめなさい。あなたはとても可愛いです。しかし、まだ子供なので対象外なのです」



 男性は私を諭すように言った。



 「5年待ちなさい。そうしたら、私のライバルとして認めるわ」



 女性は偉そう言った。




 「必ず、5年後に見返してやるーーー」



 と言って私は部屋を飛び出した。



 「美しくなって帰ってくるのよ」



 女性は哀愁を込めて言った。



 「いやいや、ここは私が泊まっている宿屋なのよ。なんで私が出て行かなあかんのよ」



 と言いながら私は部屋に戻ってきた。



 「あら、もう5年経ったのかしら」


 「時の経過は早いものです」



 男性が私のフォローに入る。


 

 「それなら、5年後の成果を見せてもらうわ」



 女性は真剣な眼差しで私をじっと見ている。



 「ここは私が泊まっているお部屋です。戻ってくるのは当然です」



 2人のボケにはのらない私である。



 「全然変わってないやんけ!」



 女性が慣れない関西弁で言った。



 「いい加減にしてください!この部屋は私たちが泊まっている宿屋です。なぜ勝手に侵入したのですか」



 私が真剣に怒鳴る。



 「ここの宿屋の主人は私の仲間なのよ。仲間の宿屋に入って何が悪いのかしら」



 女性は開き直った。




 「そんな、理論通用しません。私はお金を払って泊まっているのです」



 私は正論を言う。


 

「お金が欲しいのね。それなら、あなたが支払った額の倍の額をあなたに渡しましょう」



 女性が現金をチラつかせる。



 「倍・・・」



 私はかなり動揺した。私の手持ちはかなり少ない。なので少しでもお金が欲しいのである。



 「お・お・お金の問題ではないのよ。勝手に入ったことが大問題なのよ」



 私がお金の力に勝利した瞬間であった。



 「4倍払うわ」



 女性は倍プッシュした。



 「ありがたくいただきます」



 私は即答した。私がお金に負けた瞬間であった。



 「部屋に侵入したことは許します。しかし、何しに侵入したのですか」



 私は女性に問いかけた。



 「あなた方姉妹を救いにきたのよ」



 女性は笑顔で言った。



 「どういうことですか」



 私が聞いた。



 「姫、私が説明いたします」



 男性が割って入ってきた。



 「あなた方姉妹はホロスコープ星国が嫌になって抜け出てきたのでしょう。この町は、ホロスコープ星国から逃げてきた人々を助けるために作られた町と言っても過言ではありません。しかし、魔獣の森に囲まれていて、しかも、いつホロスコープ星国の兵士が襲ってくるかもしれません。そんな不安な日々を暮らすのはとても大変です」



 男性は静かり語りだした。



 「その不安な日々から救ってくれるのが、この町の町長でありバンパイヤであるドラキュン様です。ドラキュン様に血を吸っていただければ、あなた方もバンパイヤになることができます。バンパイヤの力は強大であり、ホロスコープ星国の兵士が攻めて来ても対処できるでしょう。それに魔獣とも対等に戦うことができます」



 部屋に忍び込んできた女性の正体はバンパイヤであり、私たちを助けようとしているのであった。



 「私たちバンパイヤはドラキュン様を姫と呼んで慕っております。あなた方もバンパイヤとなって強大な力を手に入れて、この町でスローライフを楽しみましょう」



 男性は笑顔で言った。



 「お気遣いありがとうございます。しかし、私は自分の力で生きていけるので問題ありません。しかもフレキさんはとてもお強いので、バンパイヤになる必要などありません」



 私が丁重に断る。



 「残念だわ。美しい姉妹が仲間になることをとても楽しみにしていたのね」



 ドラキュンは悲しそうな顔をした。



 「やはり、この町の人は人間ではなかったのですね」



 フレキはウルフの姿になってドラキュンの前に現れた。



 「あなたこそ、人間ではなかったのね」


 「そうです。私はウルフの魔獣です」


 「魔獣・・・あなたからは魔獣の気配は感じないわ。魔獣とはまた違った種族なのではないのかしら」


 「私には過去の記憶はありません。気づいたらウルフの森に居たので、自分は魔獣だと思っているのです」


 「人間に変化できる魔獣なんて聞いたことないわ。あなたは魔獣でも特殊な魔獣なのか、それとも魔獣ではない別の種族かもしれませんね」


 「今はそんなことどうでもいいです。あなた方の目的はわかりました。私たちはバンパイヤになる必要はないので、部屋にから出ていってください」


 「ちょっと待ってくれるかしら?私とあなた、どちらが美人か白黒はっきりと付けるまでは、ここを出ていくことはできないわ」



 ドラキュンは必死である。



 「姫、諦めましょう。ウルフの女性のが美人だと私は判断しましたので、もう決着はつきました」


 「私のが美人だもん」



 ドラキュンは頑なに認めない。


 フレキは人間の姿に戻って、ドラキュンにさっと近寄った



 「あなたがの美しいですわ」


 「わーーーい。私のが美人だぁーーー」



 ドラキュンは子供のような無邪気な笑顔で喜んだのであった。

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