第218話 神守聖王国オリュンポス パート27


 王都では『グルメ祭り』と銘打って、揚げ物のお店が3店舗出店することになった


 1つは『ラスパ』が出店する唐揚げ店。2つ目は『金玉』が出店するフライドポテト店。3つ目が『王国騎士団』が出店するフィッシュフライ店である。


 私が、ネテア王に油をアピールするなら、唐揚げだけでなく、他の食べ物も出店した方が良いとアドバイスしたことによって、この3店舗が出店することになった。


 私が作ったピンク色の小さなお城みたいな出店は、一際存在感がり他の2店舗より注目を浴びていた。


 『金玉』の出店は、ハートマークがふんだんに描かれていて、可愛らしく仕上がりになっている。たぶん、マーニの好みだろと私は思った。


 『王国騎士団』の店舗は、いかにも騎士団らしく、国旗がはためいていて、装備屋さんのように盾や剣が飾られていた。





 「ルシスちゃん・・・本当にこれを着るの?」



 ロキさんは躊躇っていた。



 「俺もこんなフリフリのついた服なんか着たくないぜ」



 トールさんも嫌がっていた。



 「私にはちょっと地味だわ。もっと翼がついていたりして艶やかな制服のが良かったわ」



 ポロンさんは私の作った服にクレームをつけてきた。



 「皆さんに絶対に似合うから、これを着てください」



 私はフリフリのついて4色のメイド服をのようなお店の制服を用意した。この異世界にはメイドさんはいるが、私がいた世界のようなメイド服を着ている人なんていなかった。


 ロキさんには赤いメイド服を、トールさんには黄色のメイド服を、ポロンさんには緑色のメイド服を用意した。そして、ポロンさんの翼がほしいと言う要望を採用して、それぞれに可愛い翼を即席でつけてあげた。もちろん頭には大きなリボンも用意している。



 「ポロンが余計なこと言うこら、ヘンテコな翼までついてしまったぞ」



 トールさんが嫌そうな顔をする。



 「ルシスちゃん・・・このリボンも付けないといけないの」



 ロキさんが悲しそうに言う。



 「どう、似合うかしら」



 ポロンさんは翼が付いたのでノリノリになってくれた。



 「とっても似合います」



 私は嬉しそうに言った。


 ちなみに私は黒のメイド服にした。翼も尖った魔王のような翼にした。


 ロキさんとトールは私に催促されて渋々メイド服に着替えた。


 私はみんなを広場に連れて行き、ピンクの可愛いお城のような出店をお披露目すると・・・



 「可愛い」



 ロキさんは、いつもはクールだが可愛い物が好きなのでとても気に入ってくれた。



 「私にぴったりだわ」



 ポロンさんも喜んでくれた。



 「俺は帰らせてもらうぜ」



 トールさんは逃亡した。


 ロキさんがすかさず魔剣ルーヴァティンで空間を切った。逃亡したトールさんはすぐにロキさんの目の前に連れ戻された。



 「トール、せっかくルシスちゃんが作ってくれたのだから、この出店で頑張って唐揚げを売るのよ」


 「へい、へい」



 トールさんは逃げれないと悟って、しゃーなしに返事をした。



 「可愛いわ」



 マーニが私たちの出店にやってきた。



 「こんな綺麗なピンク色のお城の出店を作るなんて、ルシスちゃんもなかなかやるわね」



 マーニがライバル心丸出しで言った。



 「マーニさんの出店もハートがたくさんあって可愛いですね。でも私のお城の方がもっと可愛いです」



 私も負けじと対抗した。



 「確かにルシスちゃんのお城のクオリティーの高さは見てめるわ。でも、私の愛情のこもった一つ一つのハートのキュンキュン度は私の方が優っているわ」


 「その通りだ。出店に1番大事なの事は恋愛と同じでキュンキュン度だ!」



 とハデスが言った。



 「教祖様、さすが私の出店のキュンキュン度をわかってくれたのね」



 マーニが嬉しそうに言った。



 「待ってよ!ルシスちゃんの作ったピンクのお城の出店にも、キュンキュンポイントはいくつかあるわよ」



 ロキさんが割って入ってきた。



 「確かに、ピンクの色使いがキュンキュン度を上げているかもしれないな。それに、天井は淡いピンク色にして、乙女の恋心を表現しているのかもしれないな」


 「待って、教祖様。私の出店のハートの色使いもきちんと確認してよ。淡い恋をイメージした色と、切ない恋をイメージした色、それに情熱的な恋をイメージした色もあるのよ。そこをきちんと見てもらわないと困るわよ」


 「焦るなマーニ、俺はきちんと理解していたぞ・・・」



 なんだか話が面倒になったので、私はそっとフェードアウトして唐揚げの準備をした。初めから作り置きしてもよかったのだが、3店舗で『グルメ祭り』をすることになったので、平等を保つために、みんなと同じ条件で挑むことにしたのであった。


 唐揚げは私が作って、ロキさん達が販売する。私が唐揚げの準備をしていると、フレイヤが出店の前にやってきた。



 「ルシスちゃん、可愛い出店ですね」


 「ありがとうございます」


 「私たち『王国騎士団』は国の威信を背負っているので、あんなむさ苦しい出店になってしまったわ」



 フレイヤは悲しそうに言った。



 「誰が出店をデザインしたのですか」


 「副団長のジュノよ。あの子はセンスのかけらもないのよ。私は、もっと金と銀をふんだんに使って、派手でゴージャスな出店にしたかったのよ。でも、贅沢はよくないとジュノに怒られたわ」



 フレイヤは寂しそうに言った。私は、ジュノよりフレイヤのがセンスがないと思ったのであった。



 

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