第217話 神守聖王国オリュンポス パート26


 次の日、デレク王は王の座を退くことを発表した。そして北の領主アポロ公爵、西の領主ネプチューン侯爵の爵位が取り消されて、オリュンポス城の地下での幽閉が発表された


 北の領土はアポロの弟であるケレスが引きつくごとになり、西の領土はハデスが引き継いだ。東の領主であるイージス伯爵は『天からの鉄槌』によって重傷を負って、療養しているとヴェスタの報告で、明らかになった。


 ヴェスタは『天からの鉄槌』事件後、すぐに王都へ駆けつけて、雷霆をネテア王に返還して、ジュピターの殺害を報告して自首をした。


 ネテア王は、ヴェスタの話を聞いたが、ジュピターの生死は確認できていないので、ヴェスタを捕らえることはしなかった。ネテア王はすぐにジュピター王子の捜索をギルドへ依頼した。


 こうして、ブラカリ襲撃事件を発端にして起きた神守聖王国オリュンポスの混乱は、無事に解決したのであった。その解決に多大な貢献をした『ラスパ』の名は、神守聖王国オリュンポスで知らない者はいないくらいに有名になったのであった。



 私達は、しばらくは王都ジンジャーでのんびりと過ごすことにした。ロキさん達は、王都には、ほとんど滞在したことがないので、のんびりと王都を観光をしようとソールに誘われていた。


 神守教会は、教皇ドウェイン、司祭ヘクターが行方不明になってから、王都での神守教会の信者は激減し、ドウェイン、ヘクターがネプチューンの手によって殺されたことが明るみになると、神守教会を支援していた一部の貴族からも支援はなくなり、神守教会は崩壊したと言っても過言ではないのであった。


 それにデレクが王位を退き、ネテア王が誕生したことにより、他種族を差別することは、大きな罰則が設けられたので、以前のようにあからさま差別はなくなり、また他の国の冒険者への差別も少なくなったのであった。



 「ロキさん、どこへ行ってみたいですか?」



 ソールが、ロキさんに問いかけた。



 「そうね・・・装備品の手入れをしたいわ。王都にはどんな鍛治師がいるのか気になっていたわ」



 ソールさんらしいと私は思った。


 トールさんとポロンさんは、すぐに飲食店街へ消えていったので、私はロキさんと同行していた。



 「ロキさん、ハデスが神守教会の大聖堂を改修して『キュンキュン教団』の本殿を王都に作ると言ってましたわ。ちょっと見学に行きませんか?」



 マーニがロキさんに声をかける。



 「それは気になるわ。急いで見にいきましょう」



 ロキさんはノリノリであった。


 こうして私達は、王都ジンジャーの観光を楽しんだ。




 そして数日後・・・



 「ロキ、ネテア王から、C1ランク冒険者としての依頼が来たぜ」



 嬉しそうにトールさんが言った。



 「国家からの直接の依頼・・・なんて響きがいいのかしら」



 ロキさんも嬉しそうに言う。



 「C1ランクの依頼よ。どんな依頼なのか少し不安だけど興味もあるわね」



 ポロンさんはドキドキしながら言った。



 「C 1ランクに恥じないように頑張りましょう」



 私も気合が入っている。



 「トール、どんな内容なのかしら」



 ロキさんがトールさんに確認した。



 「そうだな・・・・・・」



 「トールどうしたの?どんな大変な依頼だったの?」



 トールさんが言葉を失ったかのように黙っていたので、ロキさんは心配になった。



 「それが・・・・」



 「トール、依頼書を渡しなさい」



 ロキさんが、トールさんの依頼書を奪い取った。



 「・・・」



 ロキさんも言葉を失ったかのように口を閉した。



 「私にも読ませてよ」



 ポロンさんがロキさんから依頼書を取り上げた。



 「唐揚げの販売を依頼します?どういうことなの?」



 ポロンさんの頭の上に?マークがたくさん浮かんでいる。



 「私も読みたいです」



 私はポロンさんから依頼書を奪った。


 依頼書の内容はこうであった。


 私が、ディーバ伯爵夫人にパースリの町の復興の為に渡した油を作るのに必要な植物の苗が育ったので、油を使った料理を国民に知ってもらう為に、唐揚げを作って油料理の美味しさを広めてほしいとの依頼であった。



 「C1ランクの最初の依頼が、唐揚げの販売員なのか!」



 トールさんが悔しそうに言った。



 「販売員なんて私にはできないわ」



 ロキさんが悲しそうに言った。



 「唐揚げ・・・どうせならフッシュフライにして欲しかったわ」



 ポロンさんが悔しそうに言った。



 「まずは、制服が必要ですね。とびきり可愛いのを作ります。それにリボンをつけた方が良いかもです。広場での販売になると思うので、可愛い出店を作らないといけません」



 私だけノリノリであった。


 ネテア王の依頼を断ることはできないので、ロキさん達は、渋々了承してくれた。唐揚げの販売は 1週間後なので、私は急いで出店、制服の準備に取り掛かった。


 ネテア王からは、全て準備をするので、調理方法と油を欲しいと言われたが、私は全てを自作で作りたかったので断ったのであった。


  1週間後、私はフリルの着いた可愛い4色の制服と、ピンク色の可愛いお城みたいな出店を王都の広場に制作したのであった。

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