第216話 神守聖王国オリュンポス パート25



 ネプチューンもアポロも私に倒されて、ずっと意識を失っていたが、オリュンポス城の地下牢でやっと目が覚めた。



 「アポロ、お前もやられたのか」



 ネプチューンは静かに言った。



 「そうみたいだ。しかし、急に頭に衝撃を受けて倒れたので、誰にやられたかはわからないぜ」



 アポロは悔しそうに言った。



 「おそらく俺をお仕置きにきた亜人の少女だろう・・・あの子の強さは規格外だ。お前を一撃で倒すことができるのはあの子くらいだろうよ」


 

 ネプチューンは怯えながら言った。



 「俺はケレスと戦っていたから油断しただけだ。俺の太陽の能力を持ってすれば勝てない相手などいないのだ」



 アポロは強気で言った。



 「俺も自分の力は最強だと思っていた。しかし、あの子の前では赤子同然だった。アポロ、お前も現実を受け止めた方がいいぞ」


 「ネプチューン・・・いつからそんな弱気な男になったのだ。俺はまだ負けたとは思っていないぞ。こんな牢屋など、俺の太陽の能力を使えば、一瞬で溶かして逃げ出すことも可能だぜ」


 「無駄な事はやめておけ、このオリュンポス城にはネテア王妃がいる。ネテア王妃の前では神の子の能力は通用しないぞ」


 「どういうことだ!」


 「お前は知らないのだな。俺はネテア王妃の秘密の力を知っている。俺がこの城を攻めるには、ネテア王妃がどうしても邪魔だった。だからユーピテル様とアレスに神剣を持たせて、ネテア王妃を倒すことを決めていたのだ」


 「ネテア王妃の秘密とはどういうことなのだ」



 アポロが必要にネプチューンに問いかける。



 「教えてあげるわ」



 ネテア王妃が地下牢の入り口に現れた。



 「ネテア、何しに来たのだ」



 アポロが焦りながら言った。



 「ネプチューン侯爵は、叛逆の意思は折れたみたいね。でもあなたはまだ戦う気なのね!」



 ネテア王妃は不敵な笑みを浮かべて言った。



 「俺は誰にも屈しない。俺の太陽の能力は最強なのだ。ここに1人で来たのが失敗だったみたいだな」



 『太陽光』



 アポロの体が激しく燃え上がる。アポロは鉄格子を握ると、鉄格子はすぐに溶けてしまった。アポロは簡単に牢屋か抜け出した。



 「お前も一瞬で溶かしてやるぜ」



 アポロはニタニタと笑っている。


 ネテア王妃は、白く輝く細長い美しい槍を構えた。



 「そんな槍で俺を倒せると思っているのか?好きなだけ俺をその槍で射抜くといいぜ」


 

 大声で笑いながらアポロは言った。


 ネテア王妃は、槍をアポロに突き刺した。



 「そんな槍一瞬で溶かしてやるわ」



 ネテア王妃の槍がアポロを突き刺した瞬間・・・槍が溶けるよりも先に、アポロをまとう炎が消えたのであった。



 「どういうことだ」



 アポロが呆然としている。



 「あなたの神の子の力は奪ったわ。もう、あなたは神の子ではないわ」



 ネテア王妃は女性である。しかし、女性なのに神の子の力を授かったレアな存在なのであった。そしてネテア王妃の神の子の力は、神の子の力を消滅させることである。『アテネの槍』で突き刺された神の子は、神の子の能力を失うのであった。ネテア王妃の神の子の能力は『裁きの力』であった。



 『太陽光』『太陽光』『太陽光』



 アポロは、何度も叫ぶがもう神の子の力を失ったアポロの体が燃える事はない。



 「そんな・・・」



 アポロは、項垂れるように倒れ込む。



 「アポロ公爵とネプチューン侯爵を他の牢に移しなさい」



 ネテア王妃の背後に待機していた兵士が、2人を他の牢に移送した。



 「ネテア王妃様、無茶はしないでください」



 フレイヤすぐさま駆けつけた。



 「アポロ公爵には、まだ叛逆の意思があるのはわかったいたわ。アポロ公爵の能力は厄介なので、早急に対応する必要があったのよ」



 ネテア王妃は笑顔で言った。



 「次はデレク王のところへ行くのですか」



 フレイヤが尋ねる。



 「そうね。デレクの言い分も聞かないとね」



 デレク王は、地下牢ではなくお城の部屋に監視付きで幽閉されていた。



 「デレク、気分はどう?」


 「俺をどうするつもりだ」


 「あなたには、王位から退いてもらいます」


 「どうせ俺は、名前だけの王だ。お前にほとんどの権限は奪われたからな」


 「それは、あなたがあまりのも神守教会に肩入れするからよ」


 「そんな事はない。俺は国民の為に神守教会の教えを、全ての国民にわからせるように努力していたのだ」


 「その考え自体がもう間違っているのよ。神守教会だけが利益を独占する体制に、国民は不満を持っていたのに気づかなかったの?それに人間だけが特別であるという思想もおかしいわ。この世界には、たくさんの種族が共存して生きているわ。みんなが手を取り合って生きていける世界を目指すのが、王としての務めだと思うわ」


 「なら、言葉の通じない魔獣や動物ともお前は仲良くするのか。俺は人間以外の種族の考えなど理解できない。俺は、神守教会の教えである人間だけが、神から選ばれた種族だと信じているのだ」


 「そうね魔獣や動物とはわかりあうのは難しわ。それに魔獣や動物を殺して私たちは生きるための食材としても利用しているわ。その点は、私の言っていることに矛盾点があることは認めるわ。私の目指す全ての種族が、仲良く暮らせる世界を実現するにはかなり難しいことだわ。それでも私は、その目標を掲げて、この国を作り上げていきたいのよ」


 「好きにしたらいいさ。俺には争う術はない。俺は正式に国王の座を退いて、この部屋でのんびりと過ごすさ」



 デレクは全てを諦めたかのように呟いた。

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