第385話 カースド共和国編 パート7
「神様ありがとうございます」
ゼラチン王は俺に頭を下げてお礼を言った。
「お礼などいらん。約束の物を用意しろ」
俺は吐き捨てるように言った。
「もちろんです。今すぐに準備をさせます」
ゼラチン王は急いで屋敷に戻って兵士たちに命令を出した。
ゼリー王女の火傷を治癒したことで、俺の教会での生活はかなり快適なものになった。フカフカのベッドに、毎日3食の食事、それにお酒も好きなだけ用意してくれる。これでしばらくは、この教会でスローライフをおくることができるので、ゆっくり過ごして今後の自分の活動を考えることにした。
しかし、そんな簡単には俺の思い通りにはいかないのであった・・・
次の日から、教会にはロイの難病が治った事、ゼリー王女の火傷が完治したことが、スピナッチの町中に広まって、それを聞いた町の人たちが、一目神様にお祈りをしたいと長蛇の列を作っていたのであった。
普段は教会など誰も訪れないし神父もいない。しかし、こうなることを想定していたサーヤは、率先して教会の管理をすることにしたのであった。サーヤは教会の聖堂に立ち、神様を一目見たいという町の人をおとなしく席に座らせていた。そして、俺の部屋である司祭館へ食事を運びに来た。
「神様!お食事をお持ちしました」
「食事よりも、なんだか教会が騒がしくないか?」
「神様を一目見たいと教会に長蛇の列ができています。しかし、安心してください。こうなることは想定ていましたので、国王様にお頼みして、数名の兵士をお借りしました。神様の睡眠を妨げないように静かにするように伝えてあります」
「俺は神などではない。2度と俺を神と呼ぶな!」
「それでは、なんとお呼びしたら良いのですか?」
「そうだな・・・そうだ、今後俺のことはウーラノスと呼べ」
人間どもは俺を神だと勘違いしている。なので、神の名前を語ることにした。
「わかりました。では、ウーラノス様、町中の人々がウーラノス様の姿を一目見たいと懇願しています。ご面倒だと思いますが一声かけてもらえないでしょうか?」
「無理だ。人間の相手などするつもりはない」
「お願いします。ウーラノス様が一声かけるだけで、お供物が増えると思います」
「お供物かぁ・・・」
「そうです。神への感謝としてお供物を捧げます。今まではこの国の住人は、神にいくら祈っても助けてくれないので、信仰心を捨てて教会に来ることを辞めました。しかし、ウーラノス様が2つの奇跡を起こしてくれました。この2つの奇跡の事を知り、町中の人々は信仰心を取り戻したのです。なので、ウーラノス様からありがたいお言葉を聞けば、さらに信仰心が高まりお供物も増えると思います」
確かに、食べる物がたくさん集まることは良いことだ。サーヤ1人に頼っていては、いずれサーヤの食料も尽きてしまうだろう。それなら、この町の住人から食料を調達したほうが効率的だと俺は思った。
「仕方がない。少しだけだぞ」
こうして、毎朝俺は、町の住人に対してありがたい言葉を発するのが仕事になったのである。もちろんありがたい言葉の内容はとてもくだらない言葉ばかりである。
「神などアテにするな!己の力でなんとかしろ」
「祈るな!祈る暇があったら働け!」
「俺は何もしないぞ!本当だぞ!」
など毎日俺は神への悪口など言い続けた。しかし、スピナッチの町の住人は、俺の言葉をありがたく受け取って、毎日いろんな物をお供物として捧げるのであった。
しかし、そのうち熱が出たとか、ケガをしたとか言って俺の治癒魔法をアテに教会へ訪れる者も増えつつあった。そして2週間後には教会ではなく診療所としての役割が増えていったのである。
「ウーラノス様、今日は朝のお言葉かけが終わりましたら、4名の治療をお願いします」
サーヤは、いつの間にか俺の秘書のようにスケジュールを管理するようになった。
俺はサーヤに4名の状態を確認し、簡単な治癒魔法で問題なかったので、4名の治療を請け負うことにした。
俺の生活は慌ただしくなったが、それなりに快適に過ごしていた。人間との共同生活も悪くないと俺は少し思っていたところに事件は起きたのである。
カースド共和国にウーラノスという凄腕の治癒士がいると近隣諸国に噂が流れ始めたのである。それを聞きつけた大国チャンプル王国が20隻の帆船に乗ってカースド共和国に上陸したのである。
「この国にウーラノス様を名乗る不届き者がいると聞いたぞ!そいつに合わせろ」
1番豪華で華やかな帆船から降りてきた、背中に白い羽を生やした色白の長身の男が大声で叫んだ。
帆船が20隻もカースド共和国に乗り込んできていたので、カースド共和国の兵士たちも港で臨戦体制をとっていた。
「お前は何者だ!ウーラノス様になんのようだ」
兵士は負けじと大声で叫んぶ。
「人間ごときが俺に意見を言うとは何事だ!」
長身の男は、兵士たちを鋭い眼光で睨みつけ、手を大きく上にあげてから素早く下に降ろした。すると港にいた100名ほどの兵士たちは、上空から大きな手で押しつぶされたように地面に叩きつけられる。
「グワァーー」
兵士たちが断末魔のような悲鳴をあげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます