第386話 カースド共和国編 パート8


 兵士たちの叫び声を聞いて町の人達が続々と港集まってきた。



 「戦争が始まるか?」


 「どうなってしまうのだ?」


 「こんなこと今までなかったわ」



 町の人々は、兵士たちが倒れている姿を見て、絶望的な表情をして立ち尽くしていた。



 「ウーラノスと名乗る不届者を連れてこい!」



 長身の男は町の人々に怒鳴り上げる。



 「ウーラノス様はこの町を救いにきてくださった神様です。ウーラノス様は不届者ではありません」



 俺のことを崇めている町の人々は、勇気を振り絞って自分たちの思いをぶつける。



 「俺は神から力を授かった神人だ!そいつが本当に神かどうか確かめてやる」



 この町に大軍を引き連れて現れたのは神人であった。



 「あなたのような方が神から力を授かった人物だと思えません。すぐに町から去ってください」



 恐怖で震える体を抑えるようにして、絞り出すように声を上げる。



 「うっとしいやつらめ」



 神人は、また手を振り上げて下に振りかざした。



 港に集まった町の人々達も兵士たちと同様に地面に倒れ込む。



 「不思議な魔力を感じるな。あそこに偽物の神がいるのだな」



 神人は、魔力を感知した教会の方へ翼を羽ばたかせて飛んで行った。


 俺は、外が騒がしいのに気づいて、教会から外の様子を見に行った。



 「何が起こっているのだ・・・」



 俺は外に出て異様な光景を目の当たりにした。港のあたりでたくさんの町の人が倒れ込んでいるのであった。



 「お前はナレッジか?」



 上空から凄まじい魔力を感じたので、頭上を見上げると神人いた・・・



 「ボル・・・お前がなぜ人界にいるのだ」



 俺は一度だけウーラノスの許可をもらって裏天界へ行った事がある。その時にウーラノスの弟子と名乗る強大な魔力を持った神人と会った事がある。その人物こそが表天界の王になる予定だったボルである。



 「ウーラノス様から授かった力を最大限に引き出せるようになったから、この俺様が人界の民を救いにきてやったのだ」


 「お前が人界を救いに来ただと・・・笑わせるな!どうせ征服しに来たのだろ?」


 「言葉の表現などどうでも良いわ。俺が支配してあげるのだから人界にとってはありがたいことに違いはない」


 「好きにすればいい。俺には関係ないことだ」


 「俺のことよりも、お前はなぜウーラノス様の名を語っていたのだ?」


 「この国の人間を治療してやったら、俺のことを神だと言い出したので、神の名を使っただけだ」


 「そういうことか・・・しかし、ウーラノス様の名を語るとは許し難い行為だ!」



 俺はボルの強さを知っている。原初の神と呼ばるウーラノスは全知全能の神である。そのウーラノスから寵愛を受けて、強大なる力を授かりさらに、力の使い方を直接神から教わり最強の神人となったボルに勝てる者は表天界にいない。もしかしたら、カァラァやリプロでも勝つことができないと俺は思っている。



 「すまない」



 俺はすぐに謝った。ボルとは争いたくないのであった。



 「俺は素直に謝る奴は嫌いではない。お前の真摯な態度に免じて許してやるわ。それよりも、お前はこれからどうするつもりなのだ」



 「特に予定はない。これからどうするか考えていたところだ」


 「それなら、俺の配下に加えてやろう。お前の能力はウーラノス様に聞いているぞ。もしもの時には非常に役に立つ能力だ」


 

 俺は考えた。ボルの性格を考えるとNOという選択肢はない。ボルはなんでも自分の思い通りになると考えている男だ。しかし、魔族の俺が神人の配下になるのは屈辱的だ。



 「ウーラノス様、大丈夫ですか?」



 サーヤが、俺のことを心配して教会に来たのである。



 「俺たちの会話の邪魔をするとは無礼者め!今すぐに殺してやる」



 「ボル、待ってくれ!俺はお前の配下になる。しかし、条件があるのだ。この国だけは俺の配下にしてくれ」




 ボルは、サーヤを殺すのをやめて俺の話に耳を傾ける。



 「こんな小さな国でいいのか?」


 「構わない」


 「それくらいならお前の望みを叶えてやろう」




 俺は、どこかでサーヤやこの国の住人の優しさに感謝の気持ちを感じていたのだろう。だから、この国だけは俺が守ってあげなければいけないと感じてしまった。


 ボルは、俺が配下に加わる代わりに、この国には一才手出しをしない約束をした。そして、回復魔法を使って倒れ込んだ町の人の治療もしてくれたのである。



 「この国はお前にやる。だから、俺の人界制服を手伝え!」


 「わかりました。しかし、人界で派手に暴れると魔界と竜人族が黙っていないと思います」



 俺はボルの配下になったので、対等に声をかける事はできなくなった。



 「それが俺の狙いだ。人界の民など俺の敵ではない。だから、人界の民を餌にして竜人族と魔族を呼び寄せるのだ」



 ボルは三世界を支配するつもりである。なので、人界の頂点に立つ竜人族と魔界の魔族を滅ぼすつもりである。



 「俺は何をしたらよいのですか?」



 俺は自分の役割を確認する。俺は自慢ではないが戦闘能力は、魔界でもかなり低い方である。なので、竜人族や魔人相手では役に立つとは思えないのである。



 「お前は絶えず俺の側にいろ。お前の能力はいずれ役に立つはずだ」



 ボルは俺の『時空の番人』の能力に期待しているのであった。



 

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