第387話 カースド共和国編 パート9


 ボルは俺を連れて帆船に戻って行った。スピナッチの町の住人達・兵士はボルが国から去って行きホッとしている。俺はカースド共和国を出る際に、サーヤに、もうボルはこの国を襲うことはないと告げて去って行った。


 


 「俺の仲間を紹介するぜ」



 俺はボルと一緒に1番大きな帆船に乗り込んでいた。帆船にはいくつか部屋があり、俺はその中で1番大きな船室に案内された。そして、船室には4人の神人が、円卓を囲んで偉そうにふんぞり返って座っていたのである。



 「ちょっと待てください。なぜ魔族がここにいてるのでしょうか?」



 水色の長い髪をかき上げながら、女性のように美しい男性が、俺を馬鹿にするような目つきで言い放った。



 「オーシャン!黙れ。俺が仲間を紹介すると言ったのだ。俺の邪魔をする奴は誰であろうと許さないぞ」



 「失礼しました」



 オーシャンは、頭を地面に着くほど下げてボルに謝る。



 「もう一度言うぞ。俺の仲間を紹介するぞ・・・とその前に、説明しておくぜ。最近アトラースとプロメーテウスが、人間を使って人界で遊んでいたらそのまま姿をくらましてしまったらしい。アトラースは未だに消息不明。プロメーテウスは竜人族によって連れ去れらたとの情報が入っている。アトラースは150年前から人界へ来て、人間に力を与えて遊んでいたようだが、それが仇となって誰かに殺されたのではと俺は思っている。プロメーテウスもアトラースと同様に人間に力を与えて遊んでいたら、竜人族の怒りに触れてしまったらしい・・・が、俺はあいつらとは違う。人間などに力を与えたところでなんの役にも立たない。いや、返って足手まといになると俺は思っている。だから、俺は表天界の『一天四神』であるお前らを連れてきたのだ」



 ボルは長々と説明を始めた。ちなみに『一天四神』は、オーシャン、フレイム、ムーン、ビバレッジの4人である。



 「それでは、皆のもの自己紹介をしてくれ」


 「俺はポセイドン様から力を授かったオーシャンだ。魔族などの力など借りる必要はないと俺は思っている」



 冷酷な青い瞳で俺を睨みつける。



 「俺はフレイムだ。ヘファイトス様から力を授かった『一天四神』最強の男だ。そこの魔人!ボル様が連れてきたのだから少しは役に立ってくれよ」



 黒髪の短髪で燃えるような赤い瞳の男がフレイムだ。小柄で華奢の男性だがこの4人の中で1番強いと自分で言っている。



 「最初に訂正しておこう。『一天四神』最強はこの俺だ!」



 満月のような黄色い瞳の男はフレイムを睨みつけながら言った。



 「俺はムーンだ。何度も言うが『一天四神』最強はこの俺だ。文句がある奴はいつでも相手をしてやる」



 ツーブロックの銀髪のムーンは円卓の椅子に座る『一天四神』の残りの3人にガンを飛ばす。



 「アルテミスごときに力をもらったお前が最強だと・・・笑わせるな!」



 2mを超える巨漢の男が円卓を叩き割った。



 「ビバレッジ!騒がしいぞ」



 険悪な4人の雰囲気を察してボルが怒鳴りつける。



 「申し訳ありません。しかし、『一天四神』で1番強いのはディオニュソス様に力をいただいた俺です」



 ビバレッジは身長2mで体重は200kgというスケールの大きい体をした男である。


 『一天四神』の4人はお互いにガンを飛ばしあって、いつ殴り合いの喧嘩が起こってもおかしくない雰囲気である。



 「『一天四神』は表天界で最強と自負する4人を呼ぶ名称だ。どれだけ強いか俺が試しみたが、俺に勝てるヤツはいなかったわ。しかし、人界でこいつらに勝てる者などいないはずだ」



 ボルは自分が1番強いとアピールしたいのである。



 「ボル様、なぜ魔人を仲間に入れたのですか?」



 オーシャンが俺を睨みつけながら言った。



 「こいつも可哀想なヤツなんだ」



 ボルは、俺が魔界から逃げてきた経緯を笑いながら4人に説明した。



 「こいつがあのナレッジなのか!」


 「ギャハハッハッハ!魔界から逃げて居場所がなくなってボル様に拾われたのだな」


 「ウケるぜ。でも魔界から逃げた根性なしなんて役に立つのか?」


 「俺は知っているぜ。こいつは『時空の番人』というレアな能力を持っているんだ。こいつがいれば、いつでもどこにでも行く事ができるぜ」


 「そうだ。弱いコイツを仲間にしたのは『時空の番人』の能力があるからだ。俺は3世界最強だが、魔界の王子達の実力は本物だ。カァラァとリプロがどのような力があるかは未知数だ。だから俺は、念の為にナレッジを味方にすることにしたのだ」



 ボルは、次の魔王候補のカァラァとリプロには警戒している。人界を制圧するとなれば必ず、それを阻止するために、あの2人が人界にくる可能性は高いのである。俺もボルを利用してあの2人から守ってもらおうと思っている。



 「もう、着く頃だな。俺が支配しているチャンプル王国を紹介するぜ」



 帆船はカースド共和国を出発して3時間を経過しチャンプル王国の港に着いたのであった。


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