第388話 ボルの人界征服編 パート1


 チャンプル王国は、ボルによって一夜にして滅ぼされた大国である。チャンプル王国のゴーヤ王はボルに絶対服従を誓い、ボルの傀儡として国王の座についている。



 「ここが人界での俺の城だ。人間どもにしては立派な城を作っていたので、俺の人界での拠点として使ってやることにした」



 ボルはニヤニヤと笑いながら俺に説明をする。


 チャンプル城に着くと、全ての兵がボルに平伏して出迎える。本当の主人が誰だかは一目瞭然である。



 「ボル様、カースド共和国の件はどうなったのでしょうか」



 チャンプル王国とカースド共和国とは敵対関係はなく平和な関係を保っていた。なので、ゴーヤ王はカースド共和国がどうなったのか気になるのである。



 「お前に話すことは何もない。お前は俺の言われた通りに動けばいいのだ」



 ボルにとって人間はただの道具でありおもちゃであり、ゴミ以下の存在である。



 「心配するな。カースド共和国は無事だ。犠牲者もいないぞ」



 俺は、ゴーヤ王の様子から瞬時にカースド共和国の事を心配していると察知して、状況を簡単に説明した。


 

 「ゴーヤ、今日からこの国はガイア神国と名付けることにする。チャンプル王国などというくだらない国名は今日で廃止だ」


 「わかりました」


 「それと、お前の名前もチャンプルからゴミに変更だ。お前は今日からゴミ王と名乗れ」


 

 ボルは、子供の悪戯のような発想で、ゴーヤ王の名前を変えて嬉しそうにニタニタを笑っている。



 「ゴミ、お前は目障りだからもう失せろ!」


 「わかりました」



 ゴミ王は逃げるようにガイア城の地下にある倉庫へ向かった。ガイア城の地下がゴミ王に与えられた王室になるのである。



 「俺の玉座に案内してやる」



 ボルは以前ゴミ王が使っていた王の間に俺を案内してくれた。


 王の間は全てが金で出来ていて、室内は光り輝いている。椅子もテーブルも床まで金でできているので、かなりセンスが悪い。



 「この国にある金を集めさせてこの部屋を作らせたぞ。黄金の光は心が癒されるよな」



 悪趣味なボルにとっては快適な部屋になっているのである。



 「今後の活動について説明をするぞ。まずは、山を越えたところにあるケルト王国を滅ぼすぞ」


 「ボル様、発言することをお許しください」


 「許可しよう」


 「ありがとうございます。私は、人界の国を一つずつ滅ぼすよりも、一気に竜人族を滅ぼした方が人界を征服するには早いとも思います」



 オーシャンがボルに進言する。



 「そうだな。ナレッジの力を使えば、天空のどこかにある竜人族の国に転移することができるだろう。しかし、それでは面白くないのだ。俺は人界が恐怖に怯えて、俺の配下に加わる姿を見たいのだ!

だから、俺は敢えて遠い道を選択しているのだ」



 愉悦の表情でボルは己の願望を語る。



 「それは面白い発想です。ボル様の力があれば3世界の征服など容易いものです。私もヘファイトス様から授かった力で、人界の民が恐怖して平伏す姿を見たいと思います」



 フレイムもボルの考えに賛同した。



 「そのような意図があったのですね。若輩者の私には、ボル様の真意を見抜く事ができず、余計なことを言ってしまい申し訳ございませんでした」



オーシャンが頭を下げて謝る。


 

 「気にするな。意見があるならどんどん言っても構わないぞ」


 「ボル様、ケルト王国はプロメーテウスが支配していた国です。あの国を襲うとプロメーテウスのように竜人族が現れる可能性が高いと思います」


 「そうだな。しかし、それはそれでいいではないか!俺はガイア神国の近くの国から滅ぼすことにしたのだ。そして、たまたま山を挟んだ隣国がケルト王国だったのだ。いきなり竜人族と戦うことになるのかもしれないが、それはそれで運命だと思ってくれ」


 「わかりました」


 「ボル様、ケルト王国の北方にはキュテラ教国があります。ケルト王国を滅ぼした次はキュテラ教国に攻め込むのですか?」


 「キュテラ教国はアプロディーテー様を崇拝している国だ。あの国に手出しすれば、アプロディーテー様の怒りをかうことになるだろう。なので、キュテラ教国には侵攻せずに、少し遠くなるがホロスコープ星国を滅ぼすことにしている」



 3世界で1番強いと豪語するボルでも、神様との対決は避けたいのである。



 「ボル様!ケルト王国に攻め込む時にも、ガリア神国の人間の兵士も連れて行くのでしょうか?あいつらはなんの役にも立たないゴミクズだと思います」



 ムーンは下等生物である人間と行動するのは苦痛なのである。



 「ナレッジの転移魔法があるので、これからは俺たちだけで行動するつもりだ。それに、今回は大軍率いて相手をビビらせる演出をしたかっただけだ。俺もゴミクズと一緒に行動するのは無意味だと思っている」


 「ボル様、俺の転移魔法は1度に1人しか転移することはできません。そして転移は1時間に1度という制約があります。なので全員を転移する事はできません」


 

 俺の『時空の番人』の能力の一部である転移魔法は、自分自身には制約はないが、他人を転移させるには制約がある。それが1時間に1人だけという制約である。転移魔法は基本一度行ったことのある場所にしかいけないのだが、俺の転移魔法は行ったことのない場所でも時空を歪めて、どこでも自由に転移することができる特殊な魔法である。



 「使えないやつだな」



 吐き捨てるようにビバレッジが言った。



 「4人を運ぶなら4時間必要というわけだな・・・それなら飛んで行くよりも早いだろう。順番にナレッジに転移してもらうぞ。そして、最初に転移した者がケルト王国を1人で滅ぼしても構わないぞ」


 「それでしたら、私を最初に転移してください」



 1番に名乗りを上げたのはオーシャンであった。


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