第322話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート34

 ⭐️ルシス視点に戻ります。



 村に逃げ帰っていた竜騎士たちが、アトゥムから呪いから解放されたことを聞いて、みんな喜んでいた。



 「竜騎士さんたちは、これからどうするのですか?」


 「この島はアトラースによって与えられた島なので、アトラースを裏切ったので、もうこの島にいることはできません。なので、地上に降りて住める場所を探したいと思います」


 「アトゥムさん、地上で暮らせるアテはあるのですか?」


 「いえ、ありません。私たちは150年以上もこの島で過ごしてきました。たまに地上に降りることはありましたが、人族との交易は避けてきましたので、どこに住むかはこれから考えることにします」



 私はふと思いついた。フレキを探していた時に、王の森に立派なお城があったはず。あそこを拠点に生活をすれば良いのではないかと思った。



 「私に良い考えあります。ちょっと私についてきてください」



 私はドラちゃんにお願いして、フレキとゲリのいるところに戻ってもらうことにした。



 「私のドラゴンなので、私も付いて行きます」



 私にドラちゃんを取られて少し悲しそうにしているシューであった。


 

 「フレキさーーん」



 しばらくすると、フレキたちの元に着いた。



 「ルシスさん、無事に解決したのですか?」



 フレキは優しい笑顔で私を見ている。


 私は、フレキがなぜ拐われたのか、そして、黒幕であるアトラースのことを説明した。



 「そのようなことがあったのですね。神人を簡単に倒してしまうルシスさんは、何者か気になりますが・・・色々と事情があると思いますので、聞くことはしません。しかし、一つ気になることがあります」



 フレキは深刻な表情をした。



 「何にが気になるのですか?」



 私は心当たりがない・・・



 「シューさんの話から推測すると、魔獣の群れを『オリュンポス国』に放っている可能性があると思います」


 「あっ・・・」



 シューの顔が凍りつく。



 「あっ・・・」



 私も口をポカーンと開けて現実逃避に走る。



 「ルシス様・・・申し訳ありません。すぐにディービルの森の魔獣たちに『オリュンポス国』を滅ぼすのは中止させたいのですが、一度命令を下すと魔獣たちは抑えることはできません。なので、我ら竜騎士族が魔獣の討伐に行ってきます」



 シューは額に汗を垂らしながら必死に誠意を尽くそうとする。



 「私の落ち度です。なので責任は私の仲間がとってくれるはずです」



 私は、ロキさんたちに魔獣の討伐をなすり付けることにした。ロキさんたちは、ジェミニを連れてラディッシュの町にいるはずである。しかし、こんな時のために私は、ある物をロキさんに渡していた。


 それは、7大天使様のアズラーイール様から授かった『魂を助ける』能力をアレンジして作り出した『ゴーレムを作る』能力とガブリエル様の能力『神の言葉・神へのメッセンジャー』をアレンジして作った『異世界電話』の能力を合体させて作った『子ルシス人形』をロキさんに同行させていたのである。


 『子ルシス人形』とは、10cmくらいの私の分身のゴーレムである。ゴーレムは自我がないので、命令通り機械のように動くだけだが、ガブリエル様の能力を足すことによって、私の思ったことを代わりに代弁してくれたり、私の思うように行動をしてくれるのである。


 私は、早速『子ルシス人形』に指示を出したのであった。これで、ディービルの森の件は大丈夫であろう。



 「それでは、ルシス様に任せてもよろしいのでしょか?」



 シューは不安げに言った。



 「問題ありません。私には頼れる仲間がいるので、ディービルの魔獣ごとき一瞬で倒してくれるでしょう」



 私は胸を張って言った。トールさんも神剣の『ミョルニル』を使いたがっていたので、丁度良い腕ならしになると思っていた。



 「何から何までありがとうございます」



 シューは深々と頭を下げた。



 「フレキさん、一つお願いがるのです」


 「ルシスさんの頼みならなんでも伺います」



 フレキは笑顔で答える。



 「竜騎士族さんたちの住む場所を探しているのです。確か・・・王の森に大きなお城があったと思います。誰も住んでいない荒れ果てたお城だったと思いますので、あのお城を拠点に竜騎士族の村を作ろうと思っているのです」



 これが私の考えた名案である。



 「あの一体はどこの国にも属していないはずです。最近まではラードーンの支配下にあったはずなので、全く問題ないと思いますが、私もあの一帯を『平和の森』にしたいと思っています。竜騎士さんも私の理念を理解してくれるのなら、一緒に『平和の森」を築いていきたいです」


 「『平和の森』とは具体的にどういう森なのですか?」



 アトゥムが真剣な眼差しで聞いている。



 「『平和の森』とは、そのままの意味です。この一帯ではどの種族も争いを起こすことを禁止します。それは魔獣も同じです。私は魔獣の言葉が話せるので、魔獣たちに争いを起こさないモノだけ『平和の森』に住むことを許可します」


 「俺たちも魔獣の言葉は話せます。もう、争いは起こしたくないので、フレキさんの志に賛同します」


 「ありがとうございます。一緒に『平和の森』の発展に精進していきましょう」


 「もちろんです。フレキ様」



 アトゥムはフレキに跪いて頭を下げた忠誠を誓った。



 「俺も2度と争いを起こさないから、ここから出してくれーーー」



 ゲリに飛ばされて、『ヘリオポリス島』の地面に埋もれていた大羊王が大声で叫ぶのであった。






 

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