第373話 フェニ魔界へ行く編 パート2
僕たちは宿屋を後にして、次はケルト城に向かった。そして、ダグザとクーフーリンがガリアの町から集めた軍事用の魔石具を回収した。しかし、ケルト王国には、まだいくつかの軍事目的の魔石具が残っている。全ての軍事用の魔石具を集めるにはかなり時間を要するので、2度と軍事目的の魔石具を使用しないと誓約書を書かせたのである。
テウス王がいなくなり国はかなり混乱しているかのように思えたが、町の雰囲気は何も変わっていなかった。
「リプロ様、私たちは今まで隣国を襲うようなことは絶対にしなかったのです。しかし、急にテウスが隣国を攻めるように支持を出したので、みんな混乱していました。中にはオグマやブリードのように軍事用の魔石具を使って、弱いものを蹂躙するのを楽しむ者のいましたが、テウス、オグマ、ブリードが倒されたと知って、隣国からの復讐がないか怯えている者たちも多いのです」
「そうなんだね。テウスの恩恵がなくなれば、この国も弱小国になるけど地道に頑張るんだよ」
「わかりました。女神の奇跡を見た兵士たちは、2度と戦争などしたくないと怯えています。なので、もう争いをすることはありません。私とダグザはこれからテウス様のいなくなったケルト王国の立て直しに入りたいと思っています」
ダグザとクーフーリンは僕に跪いて話をしている。それほど僕に怯えているのである。
「争いを起こさないことは良いことでだよ。みんな仲良く暮らすのだよ」
「わかりました。傲慢な貴族たちも多いので、貴族の取り締まりから始めたいと思います」
「それがいいと思うよ。ボッタクリの魔石具屋も多いし、貴族だけがテウスが持ってきた魔石具の恩恵を受けていたと感じたよ」
「その通りです。テウス様に媚を売っていた貴族たちにより品質の良い魔石具が流れていました。しかし、もう魔石具は手に入りません。なので、自然と悪徳な商売をしていた貴族たちは没落していくと思います」
「いい気味です」
フェニは嬉しそうに言った。
「はい。自業自得だと思います」
「今後どうなるかフェニがケルト王国を監視しておいてね」
僕は、簡単には人界へ行くことはできないので、ケルト王国の監視はフェニに頼むことにした」
「はーーい」
フェニは元気よく返事をした。
「フェニ様の監視の元、より良い国を目指します」
ダグザとクーフーリンはフェニに頭を下げた。
「そんなにかしこまらなくていいのですぅ。ケルト王国には美味しいパンを作る方法を教わったのですぅ。パンを愛する人に悪い人はいないのですぅ。みんなで仲良くするのですぅ」
フェニは優しく微笑んだ。
「フェニちゃん、ありがとございます」
こうしてケルト王国はフェニの監視下に入ることになった。
僕たちはケルト王国での用事も済んだので、転移魔法で魔界へ戻ることにした。
「フェニ、今から魔界に行くよ」
「はーーい」
「フェニ、魔界には魔瘴気という魔人以外には猛毒となる瘴気が発生しているので、もし、魔瘴気で苦しかったらすぐに言ってね」
「はーーい」
フェニは全く緊張感はない。むしろ魔界に行けるとワクワクしているのであった。
僕は転移魔法を使って、魔王城の自分の部屋に転移した。
「リプロ様お帰りなさい」
低音だが心に優しく響く優しい声で、僕の帰りを持っていたのが、僕の世話係の女性ダスピルクエットである。ダスピルクエットは身長が2mを超える背の高い女性で黒い髪が地面につくほど長い。そして、常に顔を白い仮面で隠している。
「怖いですぅ」
フェニは、ダスピルクエットを見て怖がっている。
「リプロ様、その女の子は誰なのでしょうか?」
僕は、ダスピルクエットを信用しているので、フェニのことを詳しく説明した。
「事情は理解しましたが、魔瘴気の漂う魔界に人間を連れてきても大丈夫なのでしょうか?」
「フェニ、体調は大丈夫かい?」
「問題ないのですぅ。何も苦しくないのですぅ」
フェニは、かなり魔人に近い体になっているので魔瘴気の中でも平気みたいである。
「リプロ様、フェニさんのことはきちんとレジーナ王妃様に紹介すべきかと思います」
レジーナとは僕のお母さんのことである。
「うん。そのつもりだよ。それにナレッジについて報告もあるのだよ」
「リプロ様、ナレッジはもう魔界にはいません」
「えっ・・・どうして?僕はナレッジの悪事を見つけてきたのだよ」
「ナレッジのことは、レジーナ王妃様から詳しく説明があると思います。すぐに王妃様のところへ向かいましょう」
「緊張するのですぅ」
「心配しなくても大丈夫です。リプロ様がフェニちゃんのことは守ってくれるでしょう」
ダスピルクエットはフェニに優しく声をかける。
「ダスちゃん、ありがとうですぅ。見た目のイメージとのギャップがすごく萌えるですぅ」
フェニは、ダスピルクエットの不気味な白い仮面と高身長からの低いトーンでの喋りで、最初はかなりビビっていたが、ダスピルクエットの優しい言葉に、少し緊張の糸も解けていつものフェニらしくなってきた。
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