第28話 人助けパート2

                     


 私に、声をかけてきた女性を見ると頬を膨らまして、プイッと顔をそむけた。私は、魔王の子供である。天使様には失礼だが天使と思われてイラッとしたのである。


 私がそっぽを向いたので、女性が困惑している。すると、馬車から別の女性が降りてきた。



 「助けていただいて、ありがとうございます。私の護衛が何か失礼なことを言ったのなら、申し訳ございませんでした。私は、馬車の中からあなたの魔王の様な圧倒的な力を見て驚愕してしまいました」



 魔王の様な・・・・私はその言葉に素早く反応した。先程とは違い顔が緩みニヤけてしまった。



 「いえいえ、そんな魔王様のような力は、私にはありません。私はただの通りすがりの冒険者です」



 私のあきらかな態度の変わり様に少し驚いているが、機嫌が戻って安心しているみたいだ。



 「いえいえ、まだ幼いのにオークスターを一振りで頭を落とすなんて、大魔王級の強さだと思います。今回は、お嬢様を助けていただいて本当にありがとうございます」



 護衛の女性が、魔王と言われて喜んでいる私の姿を見て、ここぞとばかりに、私を持ち上げるのであった。


 しかし、そんなみえみえのお世辞にのってしまう私ではない・・・こともない。私は、とても良い気分になってしまったのである。いわゆるナチュラルハイである。



 「困っている人を、助けるのは当然です。そう言えば、何人か負傷している人が、いるみたいだけど大丈夫ですか?」


 「お気遣いありがとうございます。私以外の護衛兵の9名、冒険者が2名が瀕死の状態です。なかには腕や、足を失った者もいます。私たちでは、助けることはできません。まだ生きていることが奇跡なことです」


 「私が治してあげます」



 瀕死の状態までいくと、レベルの低い治癒魔法では助けるのはことは難しい。さらに、四肢の欠損となると高位の治癒魔法が必要だ。


 しかし、私はラファエル様から授かった身体的、精神的な治癒の能力がある。それに加えて、アズライール様から授かった、魂を助ける能力を使えば蘇生だって可能である。私にかかれば治せないものはないのである。


 私は、とても気分がよかったので、目立たない行動をするつもりが、後々に、大事になるほどの魔法を使ってしまったのである。



 「これで、もう大丈夫です。私は急ぎますのでこれで失礼します」


 「もう、行かれるのですか?私はこの辺りの領主の娘です。お礼をしたいので、ラディッシュの町に寄って行きませんか?」



 領主の娘・・・。これはまずい事になったかも。わたしのチートな力がバレるかもしれない。レーザービームで、オークの大群を殲滅したのを見られていない事を祈ろう。



 「領主様のご息女様でしたのね。それでしたら、明日お伺いいたします。丁度明日に、お伺いする予定があります」



 そう告げると、私は逃げるように飛び去ったのであった。




 「あの女の子は、何者だったのかしら」


 「通りすがりの冒険者と言っていましたが、頭には白い2本のツノ、背中には天使の様な白い翼が生えた可愛い女の子の冒険者なんて、聞いたことはないわ」


 「あれ程の実力があれば、すぐに噂になるはずよ」


 「魔王に、憧れているみたいだから、あの町の関係者かもしれないわ。それなら亜人というのも納得できるわ」


 「私は、馬車の中から、遠くの空が白く輝いたと思ったら、無数の光が、オークの大群に降り注ぐのを見たのよ。あの光のような魔法で、オークの大群を殲滅したのだと思うわ。まるで殲滅の魔王のように・・・」


 


 「あーー、失敗してしまった」



 私はかなりやらかしてしまった。力を使い過ぎたかもしれない。領主様に会いに行った時にいろいろと聞かれたら面倒である。何か聞かれた時の逃げ道を用意しとかないといけないと私は思った。


 まず、宿屋に戻ったらロキさんに説明しておかないと後々厄介になるはずである。しかし、あの場から逃げて来たので、せっかく倒したオークスターの装備品を回収することができなかったのが残念である。


 私は宿屋に戻ると、トールさんも戻っていたので、みんなに今日の出来事を説明した。ロキさんと、ポロンさんはかなり驚いていて、いろいろ質問されると思ったが、トールさんが、そんなことより、例の唐揚げを作ってくれと急かすので、私は、宿屋の調理場を借りて唐揚げを作ることにした。



 「こいつは、絶品だな。俺は前からこのパーティーには、料理人が必要だと思っていたんだよ。悲願が達成して俺は嬉しいぞ」



 トールさんは本気の涙を出しながら喜んでいた。



 食事が終わった後、私は料理の保存を考えていたので、一人で夜中まで料理作りをがんばっていた。トールさんの盗み食いと戦いながら・・・。


 翌朝、ラディッシュの町へ向かう前に、ポロンさんが、どうしても私の翼を見てみたいと言うので、私は翼を広げて披露したのである。



 「カワイイ」


 

 そう言うと、ポロンさんは、私を抱きしめてきた。



 「苦しいです。ポロンお姉ちゃん」


 「ごめんね。可愛いからつい抱きしめてしまったわ」


 「出かけるぞ。ルシスは空を飛んで行くか?」


 「私もみんなと一緒に馬車に乗りたいです」



 そう言うと、私は馬車に乗り込みラディッシュの町へ向かった。


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