第29話 ラディッシュの町パート1
私達は、ラディッシュの町に着くと門兵に身分証をみせた。門兵から、少し待つように言われ、しばらくすると領主様の使いの者があらわれた。
「暴食の皆さんですね、お屋敷までお案内します」
私達は、領主様が用意してくれた馬車に乗り換えて、領主様の屋敷にむかった。
町の中央にある一際大きな屋敷が、領主様の屋敷らしい。屋敷に着くと、執事の男性と3人のメイドが出迎えてくれた。
「わざわざお越し頂きありがとうございます。旦那様に代わってお礼を申し上げます。私はこの屋敷の執事でクロニコルと言います。旦那様が、お待ちしていますので、お部屋まで案内させて頂きます」
私達は、来客用の大きな部屋に、案内されそこで待つように言われた。しばらくすると、領主様が部屋に入ってきた。
「わざわざ来てくれてありがとう。君たちが暴食の方でいいのかな?それと君が殲滅の魔王かな?」
私は、昨日助けた女性に殲滅の魔王と名付けられたみたいだ。
「そう呼ばれることありますが、私達はラストパサー(最後の晩餐)と言います。私はラストパサーのリーダのロキと言います」
「私は、ポロンと言います」
「殲滅の魔王ことルシスです」
殲滅の魔王・・・・私は、気にいってしまったのである。
「・・・・」
トールさんは、ここに来る前に領主様に失礼のないように、ロキさんから喋るなと言われていた。
「君の名は、なんと言うのかな。」
「・・・・・」
ロキさんは、冷や汗をかいている。
「申しわけございません。この子は、領主様の前で緊張して声が出ないみたいです。この子はトールと言います」
「そうなのか!トール君、楽にしてくれたらいいぞ。君たちは、パースリの町を救い、しかも、ルシス君は、私の娘の命の恩人だ。気を使わなくてもよいぞ」
「それを聞いて、安心したぜ。黙っているのも疲れるぜ」
「トール、領主様に失礼だぞ」
「いいんだよ、ロキ君。先程も言ったが、楽にしてくれたらいいからね」
「お心遣い感謝致します」
「領主さん、悪いけど、何か飲み物はもらえないか?」
ロキさんの冷や汗は、止まらない。
「これは、気が利きかなかったな。クロニクルよ、何か飲み物を用意しろ」
「かしこまりました」
「それでは、私の自己紹介をしよう。私はこの一帯の領主をしている、リアム・コーンウォリス伯爵だ。この度は、私の領土内の町を救ってくれて感謝している。多くの犠牲者がでたが、数名の子供達の命が救われて本当によかったと思っている。それと、王都から帰る途中の、娘の危機を救って頂いてありがとう。ルシス君が助けに来なければ、娘は死んでいただろう。しかも、オークパレードが発生して、この町を襲いかかるところを、未然に防いでくれたとも聞いている。あのまま、オークパレードが、この町まできていたら大変ことになっていただろう」
その時、扉が開いて、4人の女性が入ってきた。
「遅れて、ごめんリアム。中々抜け出せなくてね。私はリアムの妻ディーバ・コーンウォリス。冒険者でギルドでギルドマスターをしているわ」
「私は長女のアメリア・コーンウォリス。私の後ろに隠れているのが、妹とのアリア。昨日は助けて頂いて、ありがとうございます」
「私はアメリア様の専属護衛の隊長のオリビアと言います。ルシス様には、いくらお礼を言っても足りません。本当にありがとうございました」
オリビアさんは、アメリア様を守りきれなかったことを恥じているみたいだ。私が来なければ、確実に、アメリアは命を落としていたからである。
「気にしないでください、オリビアさん。あなたは命を懸けてアメリア様を守っていました。あなたが、時間を稼いでいてくれたから、私は皆さんを助けることができたのです」
「そうよ、オリビア。あなたと、ルシスさんのおかげで私は助かったの」
「そうだぞ、オリビア。これからも娘の護衛を任せたぞ」
「はい。これからも、全身全霊でお嬢様をお守りいたします」
これで、オリビアさんの心のわだかまりも少しは解けただろう。
「お姉ちゃんが、せんめつのまおうさまなのですか?」
さっきまで、アメリア様に後ろに隠れていた、アリア様が、私のところへテクテクと歩いて来て、私の服をつかみながら、聞いてきた。
「そうですよ」
「もっと、大きくて、怖い人だと思っていました」
「だから、言ったでしょ。すごくカワイイ魔王様だと」
「ほんと、カワイイ魔王様だわ。私も娘から聞いた時は信じられなかったわ。実際に会ってみると、想像以上にカワイイのでビックリしたわよ」
「わしも同感だな。こんな小さなカワイイ子だとは思わなかったぞ。たしか、オークスターも一振りで、首を切り落としたと聞いている。オリビアが言うには、伝説の剣グラムに匹敵する、短剣を持っているらしいな。ぜひ見せてくれないか?」
やばい、ものすごく、勘違いされているみたいだ。あれは、どこにでも売っている、料理用のナイフなのに。
「ルシス、そんな剣持っていたのか?」
トールさんまで、興味を持ちはじめている。
「えー〜と、あの〜〜、あれは・・・」
「私もぜひ見てみたいです。私は剣のことなら、かなり詳しくほうです。十拳剣の会という、会合を毎月開催して伝説の武器の研究をしています。あの短刀の切れ味は、神剣グラム以上の代物と感じました」
やばい、ガチの人だ。調理用ナイフなんて、絶対言えない。もし、言ったら、オリビアさんのプライドがズタズタになってしまう。せっかくお嬢様の護衛の件で立ち直ったばかりなのに・・・
さて、どうしよう?
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