第30話 ラディッシュの町パート2

                  


 非常にまずい。こうなったら、秘技話題そらしを実行するしかない。私には、あの秘密兵器があるのであった。



 「あの・・・それよりも、伯爵様にお土産があります。お口に合うかわかりませんが、受け取ってもらえませんか」


 「何!!!それは美味しいのか」



 トールさんが食らいついてきた。



 「あの・・・トールお姉ちゃんにじゃなくて、伯爵様になんですけど!」


 「なんだと、俺の分はないのか?」


 「たくさんあるので、ないこともないんですけど」



 トールさんの、悲しい顔を見かねてリアム伯爵が声をかける。



 「お気遣い感謝するぞ。皆の分もあるのなら、ここで、みんなで食べようではないか」


 「そ・そうだ!みんなで食べよう。みんなで食べれば、怖くないと言うしな」



 そんなの聞いたことない。でも、剣の話題はそれたので、トールさんには感謝しないと。



 「これなんですけど、プリンという食べ物です。トロトロした柔らかい食感で、口の中にいれると、トローンととろけるあまーいスイーツです。甘いものがお好きな方には、ぜひ、食べてもらいたいです」


 「まず、私が、食べさせてもらいます」



 と、オリビアさんが言った。命の恩人とはいえ、初対面の冒険者が出す食べ物を、いきなり伯爵家の方々に、食べさせるわけにはいけないのであろう。



 「では、いただきます」


 

 伯爵家の方々が、オリビアさんの状況をマジマジと見ている。



 「なにこれ、すごく美味しいですわ。このトロトロとした心地よい食感。口の中で優しい甘味が広がって、口の中を潤してくれるわ。これは革命的なスイーツですわ」


 「アメリア、そんなに美味しのですか?それなら私もいただくわ」



 そう言うと、ディーバ様がプリンを召し上がった。



 「これは、本当に素晴らしいわ。このトロトロ・プルプルのなんとも言えない食感。このような食感は、今まで味わったことないわ。しかも後から押し寄せてくる、優しい甘味が体全体に広がって、宙を浮いているような感覚になるわ」


 「そんなに、美味しいのか、ならわしも貰おう」


 「私も食べるわ」


 「私も欲しいー」



 伯爵家の方々が、プリンを大絶賛してくれる。プリン作戦大成功である。



 「さあ、ロキくん達も食べるとよい」



 トールさんは、我慢していた。流石に、伯爵家へのプレゼントなのであって、伯爵家よりも先に食べることはできないのである。 


 ロキさん達も、伯爵家の反応を見ていたのでかなり興味津々だ。



 「ルシスちゃんの作る物は、本当に美味しいわ。しかも、今まで味わったことのない物ばかりです。唐揚げや、フライドポテトも素晴らしかったわ」



 とロキさんが私の料理を大絶賛する。



 「ほかにも、美味しい食べ物があるのか?」



 伯爵様が食いついてきた。



 「はい、あります。お食べになりますか?」


 「ぜひ、もらおう」



 これは、いい流れだ。私は一つ考えていたことがある。この流れだと上手いこといくかもしれない。



 「これが、唐揚げといいます。鶏肉を焼くのではなく、油という物で揚げた物です。そして、こちらが、白身の魚を油であげた、フィッシュフライです。そして、最後にジャガイモを、油で揚げたポテトフライです。フィッシュフライには、このタルタルソースというものを付けて食べてください」


 「なんだ、このサクサクした食感から、溢れ出るジューシーな肉汁は!こんな調理方法があるとは、驚きだ」


 「この国には、油を使って料理することがありません。油さえあれば、簡単に料理することができます」


 「そうなのか?それで、油はどこで手に入る?」


 「油はユイール大草原に、生えている植物から作り出すことができます」


 「ユイール大草原かあ。あそこはコカトリス、バジリスクの巣だ。採取するにはかなり危険だ」


 「はい。そうです。しかし私はその食物の苗を、多量に持っています。それを領主様の土地で栽培し、油を生産すればよいと思います。そして、その油を領主様の治める土地の特産物にしてみてはどうですか」


 「それは、素晴らしい案だ。ディーバはどう思う?」


 「いい案だと思うわ。今後、パースリの町を復興させるには、何かしないといけないと思っていたし、パースリの町で、油を作る計画を立てれば、移住者も増えるはずだわ」



 私の思惑通りにいった。パースリの町を復興させないと生き残った子供達を助けることはできない。しかし、簡単に住み慣れた町から、パースリの町へ、移住する者はいない。でも、何かおいしい話しがあれば別だ。これで、あの子供達の暮らしも良くなるだろう。



 「パースリの町への復興になるなら、この苗は全てお譲りします。少しでも、早い復興を期待してます」



 と言うと、私は伯爵家の倉庫を行き持っている苗を全て渡した。



 「こんなにもらっていいのか?」


 「かまいません。子供達のためです」


 「これから復興には、かなりのお金がかかるので助かる。わしにできることがあれば言ってくれ!なんでも協力しよう」

 

 「はい。何かあればお願いします」



 私は苗を渡すと、広間に戻った。広間に戻ると、まだ、皆さんがお食事をしている。しかも人数が増えている。


 私が戻ると、ディーバ様が私に声をかけてきた。



 「苗の件ありがとね。本当に助かるわ。リアムも、この件について、緊急に会議をすると言ってバタバタしているわ」


 「お役に立てて、嬉しいです」


 「ところで、暴食の皆さんに、お願いがあるのです。私からの依頼を受けてもらいたいの」



  伯爵夫人からの依頼って、どのようなものであろうか?



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