第395話 ボルの人界征服編 パート8


 黒い龍は光球を噛み砕いて破壊した。そして、あたり一面に光の破片が飛び散った。光球が破壊されて中からムーンが姿を見せた。



 「フルムーンを壊すとは・・・」



 ムーンの顔は先程の余裕たっぷりの表情から、一気に危機を感じて顔色が悪くなっていく。



 「トール任せたわよ」



 トールさんはムーンから奪った魔力を全てミョルニルに注ぎ込む。ミョルニルは黄金に輝き出してみるみる大きくなっていく。



 『メガトンハンマー』



 トールさんはミョルニルを大きく振り上げて、ムーンに向けて叩き落とす。



 「やめろーー。助けてくれ!」



 ムーンは多量の魔力を奪われて、魔力障壁を失い裸同然の防御力である。いくら神人でもトールさんの『メガトンハンマー』を叩きつけられると助かる見込みはない。



 「今更命乞いをしても遅いぜ。これでお前は終わりだ」



 トールさんは激しくミョルニルをムーンに叩きつける。抗う術のないムーンは怯えるように体を丸くして震えていた。しかしその時、空から鋭いは刃物のような雨が滝のように降ってきた。



 『ライトシールド』



 小ルシスがロキさんとトールさんを守るために『ライトシールド』を張った。



 「ロキお姉ちゃん、トールお姉ちゃん、敵の援軍が来たみたいです」


 

 ロキさん達が上空を見上げると黒髪の小柄な男と水色の長い髪の男が、ニタニタを笑いながら上空を漂っていた。



 「人間ごときにやられるとはムーンも落ちぶれたものだ」



 ムーンはオーシャンの放った『ナイアガラフォール』によって、トールさんの攻撃からは難を逃れたが、『ナイアガラフォール』によって、全身を鋭い刃物の雨によって、全身を串刺しにされて死んでしまった。



 「そうだな。ゴミムシに殺されるくらいなら、俺の手で名誉ある死を与えてやったぜ」



 オーシャンは、ムーンの無惨な姿を見て、嬉しそうにニヤついていた。



 「あいつらはどうする」


 「俺の『ナイアガラフォール』を防ぐ魔法など人界に存在などしないはずだ。もう少し魔力を上げて、あのシールドを破壊してやる」



 オーシャンは、魔力を上げて『ナイアガラフォール』の威力を上げた。上空からは滝のような轟音を上げて、鋭い刃物の雨が降り注ぐ。



 「絶対にこのシールドから出ないでくだいね」



 小ルシスは、『ライトシールド』でロキさん達を守るが、刃物の雨は『ライトシールド』を今にも破壊しそうな勢いて降り注ぐ。



 「子ルシスちゃん大丈夫?」


 「もうすぐルシスお姉ちゃんが来るはずです。それまで、耐え凌いでみせます」



 小ルシスは、私の魔力によって人間のように動くことができるのである。しかし、魔力を失ってしまうと電池の切れたオモチャのように動かなくなり最後は消滅してしまう。



 「ムーンを追い詰めたのはマグレではないようだな」


 「そうみたいだな。俺の『ナイアガラファール』を防いでいるぜ」


 「俺が力を貸してやろうか」


 「問題ない。俺の『ビッグウエーブ』であのシールドごと押しつぶしてやるぜ」


 『ビッグウェーブ』


 オーシャンは、手のひらから膨大な水を噴出した。それはすぐに大きな津波のような特大の波になり、小ルシスが作った『ライトシールド』を押しつぶすように襲いかかる。


 空を覆い尽くすような大きな波が、太陽に光を遮ってあたり一面を真っ暗にする。そして、爆音を上げて『ライトシールド』の上にのしかかる。



 「小ルシスちゃん。無理をしないでね。私がルーヴァティンを使って隙を作るからその間に逃げるのよ」


 「ロキお姉ちゃん。相手は2人いてます。なので、あの大きな波から逃げたところをすぐに襲われると思います。私が必ず耐え凌ぎます。だから、ルシスお姉ちゃんが来るまで待って下さい」


 「小ルシス・・・本当に大丈夫なのか?心なしかお前の姿が霞んで見えるぜ」



 トールさんには子ルシスの姿がうっすらとぼんやり見えるのである。しかし、それはトールさんの目が疲れているのではなく、小ルシスの魔力の消耗が激しすぎて、魔力切れで存在を保つことができなくなったいるのである。



 「気にしないでください。私の全ての魔力を使ってお二人を守ります」



 小ルシスは私が到着するまで、『ビッグウェーブ』耐え凌ぐ為に、全ての魔力を『ライトシールド』に注ぎ込んだ。


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