第394話 ボルの人界征服編 パート7
「私はトールとは違うわ・・・トールの魔法・格闘センスは天才だと思うわ。トールはスポンジのようになんでも簡単に吸収していくし、戦いを通じてどんどん強くなっていくわ。でも、私は凡人で秀でたモノはないにもないわ。私ができることは真面目にひたすら毎日練習するだけ。もし、私に才能があるとすれば、それは諦めずに努力することだわ。トールの強さに肩を並べて歩くには、私はひたすら頑張るしかないとずっと思っていたわ。ここはトールの代わりに私が頑張るところだわ」
私は、ロキさんがこんなふうに自分自身の事を思っているのを知ったのは最近であった。私がラスパに加入してから、いつも思っていたことがあった。それは、トールさんとポロンさんは、強くなるために努力をしていないわけではないが、きちんと休息日と特訓の日を作ってメリハリのある生活を送っている。しかし、ロキさんがゆっくりと休んでいるところを見たことがなかった。ロキさんはトールさん達んが飲みに出かけている時も、夜遅くまで剣を振るっていた。そして、王都でのソールとの対決に引き分けた後、さらにロキさんは自分を追い込むように特訓をしていた。
私はそんなロキさんの直向きに強くなる努力を怠らない姿勢に尊敬の念を抱いていた。だから、私もたまにロキさんの特訓のお手伝いすることもあった。そんな時に私は、「なんで、そこまで頑張れるのですか?」と尋ねたことがある。ロキさんは「トールの足手まといにはなりたくないのよ」とロキさんは答えてくれた。
私は、ロキさんがトールさんの足手まといになることなんてないと思ったが、ロキさんなりに色々と思うことがあるのだろう。それ以来、私はロキさんにその件について触れることはなかった。
「トールが、いつになく弱気になっているわ・・・。私がなんとかしないと!せめて・・・いつものトールが戻ってくるまで、命をかけて時間を稼がないとね」
ロキさんは信じている。トールさんがいつもの脳天なくらいな強気な姿に戻ることを。
「どうした!顔色が悪いぞ。俺の魔力はまだまだ残っているぞ」
ムーンはロキさんに魔力を奪われても、湯水のように魔力を増大させている。『一天四神』と呼ばれるだけのことはある。
「安心しなさい。そんなに焦らなくてもあなたを倒してあげるわよ」
「まだ無駄口を叩く余裕があるのか・・・人間にしてはよくやったな。しかし、もう終わりだ。俺の魔力を受け取るがいい」
光球は七色に輝き出した。ムーンは自分からロキさんに莫大な魔力を注ぎ込んだのである。このままではロキさんは、ムーンの膨大な魔力によって全身が魔力の暴発によって砕けてしまう。
「だめだ・・・あんな化け物に勝てるはずがない。ロキ早く逃げてくれ・・・」
トールさんは屍のようにな姿で呆然と立ち尽くしている。
「トールお姉ちゃん!しっかりしてください。もう両腕の治癒は終わりましたよ。すぐにロキお姉ちゃんを助けに行きましょう」
小ルシスが大声で叫ぶがトールさんの耳には届かない・・・
「そうだ!ルシスならなんとかしてくれるはずだ。それにサラもいるはずだ。あいつらならあの化け物を倒してくれるはずだ。小ルシス!早くルシスに連絡してくれ」
「トールお姉ちゃん!今は応援を呼んでいる場合じゃないのです。ロキお姉ちゃんが1人で踏ん張ってくれているのです。早く助けにいかにとロキお姉ちゃんが死んでしまいます」
「俺が行っても足手まといになるだけだ・・・俺よりもルシスを呼んでくれ」
「何を言っているのですか!今ロキお姉ちゃんを助けることができるのはあなただけです。ロキお姉ちゃんの頑張りを無駄にするのですか!ロキお姉ちゃんを見殺しにするのですか!」
「しかし・・・」
「ロキお姉ちゃんは、あなたを助けるために命をかけているのです。そして、いつもの強気のあなたが助けに来てくれるの待っているのです!」
「ロキ・・・」
トールさんは、やっとロキさんが懸命に頑張っている姿を直視した。さっきまでは恐くてロキさんの姿を見るのを避けていたのである。
「ロキーーー。今行くぞ!」
トールさんは、ロキさんがムーンの魔力に圧されて苦しんでいる姿を見て、いてもたってもいられなくて、駆け出して行った。
「これで、終わりだ!」
光球は七色から真っ白に輝き出した。そしてあたり一面が白く怪しい光で覆われた。
「ロキ待たせたな!俺に魔力を分けてくれ」
「トール・・・遅いわよ。もうダメかと思ったわよ」
「悪かったな・・・でも、もう安心しろよ。神人だかなんだか知らないが、俺ら2人が協力すれば楽勝だぜ」
トールさんはロキさんに背中に手を当てて魔力を吸収する。
「これはキツイな。ロキ、こんなのを耐えていたのか?」
「そうよ。でも、これからが本番よ。あいつの魔力を完全に奪うわよ」
「どんとこいよ」
トールさんの強気な笑顔が、ロキさんに勇気を与える。
「なぜだ・・・なぜ破裂しないのだ!」
「おい!まん丸。お前の魔力をこんなものか?神人も大したことがないぜ」
トールさんはムーンを挑発する。
「2人になったからといって調子に乗るなよ。これならどうだ」
とムーンは意気込むが、これ以上魔力を放出すると『フルムーン』の状態を保つことができない。
「トール底が見えましたわ。一気にいくわよ」
「わかったぜ。次こそこいつを仕留めてやるぜ」
ロキさんは、光球からティルヴィングを抜き取り、大きく振り上げた。
『マジックブースト』
ティルビングから莫大な魔力が、黒い龍の姿になって光球を喰らい尽くす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます