第396話 ボルの人界征服編 パート9
「何をもたついているのだオーシャン。ゴミムシすら倒せないのか?」
嘲笑うかのようにフレイムがオーシャンを罵る。
「何か妖精のような奴が俺の邪魔をしているみたいだ。あの光のシールドは人間が作れるような代物ではないはずだ」
「言い訳など聞きたくない。お前が倒せないのなら俺が倒してやろうか」
「問題ない。あの光のシールドも俺の『ビッグウエーブ』に耐えきれなくて今にも崩壊しそうだ」
「そうみたいだな・・・でも、ゴミムシ相手に時間がかかりすぎだぞ。これではボル様になんて報告したらいいのだ」
「そうだな。ゴミムシ相手に手こずったとなったら『一天四神』の名が廃る。しかし、あいつらに苦戦していたムーンは、俺が跡形も残らないように消し去ったから俺らが苦戦した痕跡は残らないから問題ないだろう」
「しかし、なぜムーンほどの男がゴミムシに追い詰められていたのか不思議だぜ」
「あいつはそれだけの男だったと言うことだ。それよりも、ゴミムシのくせにまだしぶとく抵抗してやがる」
『メイルストロム』
オーシャンは、ロキさんたちにトドメを刺すために、オーシャンが使える最大級の魔法を唱えた。上空には空を覆うような大きな渦潮が出現した。それは水できたハリケーンのように爆音を響かせながら水が激しい勢いで回転している。
「これで終わりだ」
上空に覆い尽くすようにできた大きな渦潮は、オーシャンが腕を振り落とすと、ロキさんたちを守っているライトシールドに目掛けて急降下した。
「ロキ、上空を見てみろ!ハリケーンのように水が渦を巻いているぜ」
「あんなのが落ちてきたら、このシールドも破壊されてしまうわ」
「大丈夫ですよ!私が絶対にお二人を守ります」
「小ルシス・・・無理をするな。俺たちも協力からできることがあったら言ってくれ」
「そうよ。小ルシスちゃんだけに無茶をさせたくないわ」
「もうすぐルシスお姉ちゃんがきます。お二人はもしもの時に備えて魔力を温存して下さい」
「でも・・・」
「もうすぐあの大きな渦潮が襲ってきます。もう魔力は尽きてしましたので、私の生命魔力を使います」
小ルシスは自分を形成する生命魔力を使ってシールドを強化した。小ルシスの姿は今にも消滅しそうチカチカと点滅している。
「小ルシス!」
「小ルシスちゃん!」
ロキさんたちは小ルシスを心配して小ルシスの側に近寄る。
「ロキお姉ちゃん、トールお姉ちゃん、短い間でしたが楽しい時間を一緒に過ごせてもらえてありがとうございます。もっと一緒に過ごしたかったけど、もう生命魔力が尽きそうなのでこれでお別れです。これからも元気に頑張って下さいね」
小ルシスは笑顔で2人に別れを告げて生命魔力を使い果たして消えていく。
「小ルシス、勝手に消えるな!俺はまだお前に助けてくれたお礼を言っていないぞ。お前が俺を叱ってくれなかったら、俺はロキを見殺しにして逃げてしまうところだったんだぞ。お前がいたから俺は勇気を振り絞ってロキを助けに行けたんだ。これからも俺たちの側で俺たちを支えてくれよ。お前はもうラスパのメンバーだろ。勝手に脱退するのは許さないぞ」
「そうよ小ルシスちゃん。1人で死ぬなんて許さないわよ。早く戻ってきなさいよ」
「安心して下さい。ルシスお姉ちゃんはもうすぐ側にまできています。これで私の役割も終わりです」
小ルシスはそう言うと完全に消滅してしまった。
「バカやろーー」
「小ルシスちゃん・・・」
ロキさんたちは、消えてなくなった小ルシスの亡骸を抱えるようにして大声で叫んだ。
「これで終わりだ」
『メイルストロム』を放ったオーシャンは勝利を確信した。
『ブラックホール』
ハリケーンのような激しく水が回転する渦潮が、ロキさんたち目掛けて急降下している時、不気味な黒い渦が発生して、渦潮をあっという間に吸収した。
「どうなっているのだ」
口をポカーンと開けて死んだ魚のような目をして、オーシャンが呆然と立ち尽くしている。
「あなたは神人さんですね」
オーシャンの前に、綺麗な翼を広げた可愛い天使のような少女が姿を現した。もちろん私である。
「誰だ?もしかして・・・お前は天使様なのか?」
「違います!!!」
私は自分で可愛い天使のような少女と表現したが、天使と呼ばれるのは嫌なのである。それは、私は魔王の子供であり魔族だからである。力を授けてくれた天使様には感謝しているが、それとこれは別の話である。
「なら、お前は何者だ?」
「私はラスパの一員のルシスです。私の仲間を殺そうとした罪は重いですよ」
「いや・・・そういうことではなくて、種族を聞いているのだ。どう見てもお前は人間ではないだろ?」
「内緒です。とりあえず神人さんならアトラースと同じところへ閉じ込めてあげます」
『ディメンション』
黒い大きな手が異空間から出てきてオーシャンを鷲掴みにする。
「何をするのだ」
オーシャンは全身を大きく揺さぶって激しく抵抗するが、全く効果はなく、黒い大きな手からは逃げ出すことができない。
「なぜだ!魔力障壁で守られている俺の体が、抵抗もできずにこのまま握り潰されるのか」
「心配してないでください。あなたを殺しはしないですよ。ただ闇に覆われた異空間に連れて行くだけです」
「やめろ。そんなわけのわからないところへなんて行きたくない」
いくら抵抗しても大きな黒い手から逃げることができないとわかったオーシャンは、涙を流しながら私に訴えてくる。
「安心してくだい。さっきも言いましたがアトラースもいるので、2人で仲良くして下さい」
「やめろ!俺は神人だぞ。こんなことが許されるわけがないだろう」
能書きを垂れるオーシャンを無視して、大きな黒い手はオーシャンを異空間へ連れ去った。
一方、フレイムは私の『ブラックホール』を見て、すぐに逃げ出した。
「あれは、闇魔法の『ブラックホール』だ。なぜ、闇魔法の究極魔法を使えるヤツが人界にいるのだ。あんなヤツ相手にするのは危険すぎるぜ」
フレイムは私に恐れをなして逃げたのであった。
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