第89話 パーシモンの町パート9
私はキュンウサギに抱きついた。なんてフサフサして気持ちがいいのだろうか。赤く大きな瞳も見ているだけで心が浄化されてしまう。そして、モコモコの長い耳・・・とても気持ちがいい。このままずっとキュンウサギを抱いたまま、この山で過ごしたいと思ってしまった。
「完全にキュンウサギの虜になってるぜ」
「そうみたいですわ。しばらくはあのまましといてあげましょう」
「そうだな。私たちは氷河石を探しましょう」
3人は、私を放置して氷河石を探すことにした。コチンコチン山の山頂には大きな洞穴があった。カチンカチン山と同じである。だから、洞穴に氷河石があるに違いないと3人は確信した。
3人は洞穴に入り、氷河石を探すことにした。洞穴は、カチンカチンの山と同じようにとても大きな空洞になっていた。そして、洞穴の中央には、大きいな氷の台座があった。そこはウサクイーンの寝床である。氷の台座の中心に青く輝く小さな氷の結晶が転がっていた。
「あれが氷河石だろう」
「そうですわ」
トールさんは、台座に転がっている氷河石を、拾って帰ることにした。しかし、トールさんが氷河石に触れると・・・
私は、キュンウサギを抱きしめながら、至福の時を過ごしていた。あれから何時経過したのだろう。さすがの私も、このままではいけないと思い、キュンウサギとしばしの別れを覚悟したのであった。
私は、キュンウサギの魅了にかかっていたわけではない。ウサクイーンからキュンウサギに戻ったキュンウサギは、まだ魅了の魔力が戻っていなかったので、私は魅力にかからずにすんだのであった。
周りを見渡すと誰もいない。みんなはどこに行ったのだろうか・・・ふと目をやると、ウサクイーンの氷のティアラが落ちている。氷のティアラはとても美しく光り輝いていた。
「あのティアラ貰おうかな」
私は、ティアラが気に入ってたので拾って頭に乗せることにした。自分で言うのもおかしいが、とても似合っている。私はティアラをつけてとても気分が良くなりウキウキであった。
いやいや、そんなことをしている場合ではなかった。ロキさん達を探さないといけない。私は、近くにある洞穴が怪しいと思ってそこへ入ることにした。
洞穴に入ると、そこはかなり大きな空洞になっていて、中央に大きな氷の台座があった。そして、台座の近くでコチンコチンに凍っている3人を見つけたのであった。
一体、何が起こったのであろうか。私は探索魔法で周りを探ったが、何も感知することはできなかった。それなら、この洞穴に何かトラップがあるのかもしれない・・・と思い、私は慎重に周りを観察するが、怪しいトラップを見つけることはできなかった。
私は3人に近寄って周りを調べるが、特に怪しい物ははない。ただ、氷の台座に綺麗に輝く氷の結晶置かれていた。これが氷河石だろう。
3人は、氷の彫刻のように、とても綺麗で美しく凍りついてた。このまま芸術作品として置いておいてもいいだろう。
「早く溶かせ、ルシス」
なぜか、トールさんの悲痛な叫びが聞こえた気がした。
私は、状態異常の解除魔法を使って、3人の氷化を解除することにした。かなり高度な氷化だが、すぐに溶けるだろう。
私は、その間に氷河石を拾うことにした。これで、無事に氷河石をゲットできるのである。
「ルシス、危ないぞ」
氷化の溶けたトールさんが大声で叫ぶ。私はトールさんが、叫ぶより前に氷河石を触ってしまった。
「ルシス・・・・・・」
「ルシス大丈夫なのか」
「どういうことですか」
「俺たちは、氷河石を触ったら氷化されてしまったのだ。そして、触った俺だけでなく、周りにいたロキもポロンも氷化されたんだ」
「そうなのですか。でも私は触っても大丈夫でした」
「どうなっているのだ」
「それよりも、ルシスちゃんが頭に付けているのは、ウサクイーンのティアラですね。とても可愛くて似合っていますわ」
「ありがとうです。私もすごく気に入っています」
「もしかしら、そのティアラをつけていると、氷化しないのかもしれない」
「そうだな。それしか考えられないな」
私は、偶然付けたティアラのおかげで、氷化を防ぐことができたのであった。しかし、ティアラをつけないと、氷化を防げないとしたら、バルカンはどうやって氷河石を使うのであろうか。何か特別な方法があるのであろうか。
私は、氷河石を拾って収納ボックスにしまった。
「これで、氷河石はゲットできたよな。マグマ石はどうする」
「明日、サラちゃんを召喚して確認することにしましょう」
「そうだな。それしかないぜ」
私たちは、サラちゃんがマグマ石を全部食べていないことを願い、パーシモンの町へ戻ることにした。
パーシモンの町に戻った私たちは、イフリートの機嫌を取るために飲み屋街に行くことにした。そして、イフリートに美味しいお酒を飲ませてあげると伝えたら、嬉しそうに姿を表して上機嫌になり鼻歌を歌っていた。
その日は、イフリートに好きなだけお酒を飲ましてあげて楽しい夜を過ごしたのであった。
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