第430話 スカンディナビア帝国編 パート18
トールさんは全身に緑の血を浴びて、体を痙攣させて地面に倒れ込んでいる。ロキさんは小ルシス1号に治癒してもらったが、完全に麻痺が治ったわけでないのですぐに動き出すことができない。
キュクロプスの背中から生えた腕は、トールさんに潰されて背中から外れて地面に落ちる。トールさんの渾身の攻撃はキュクロプスの腕を粉砕したが、背中にはかすり傷一つも付いていない。そして、ロキさんの攻撃で受けた両腕の傷は、じわじわと修復していき傷は完治したみたいである
巨人族の体を構成する細胞は再生力が強く、不死の肉体を持つとも言われている。細胞の再生が追いつく前に倒さない限りすぐに傷は元通りに戻ってしまうのであった。
キュクロプスは、静かに地面に倒れ込んだトールさん方へゆっくりと歩き出す。そして、先ほど放り投げた大きな棍棒を拾い、棍棒を引きずりながら少しずつトールさんに近づいていく。
トールさんは全身が痺れて逃げたくても逃げることができない。
「トール!今助けるわよ」
ロキさんはトールさんと助けようと必死に走り出そうとするが、全身の痺れがまだ残っているので、思った通りに足が動かすことができずに派手に転んでしまう。
「ロキさん、無理をしないでださい。あとは私に任せてください」
ロキさんの前に現れたのは小ルシス2号であった。
「2号!ルシスお姉ちゃんはまだなのですか?」
小ルシス1号が大声で叫ぶ。
「間に合ってよかったです。私が来たからには、誰も傷つけるようなことはさせません」
小ルシス2号は、小ルシス1号の問いかけを無視して、トールさんを救いに颯爽と飛んで行った。
「トールさん。私が来たのでもう安心してください。そのままピクピクと痙攣したまま私の勇姿をご覧ください」
小ルシス1号は、トールさんのすぐ側に来て、大きな棍棒を頭上高く振り上げたキュクロプスに向かって飛んで行く。
『ハリケーン・トルネード・サンライトビッグパンチ』
小ルシス1号は拳を強く握りしめ、キュクロプスの後頭部の大きな目を狙って、突き刺すようにパンチをくり出した。キュクロプスは小さな虫が、目の中に飛んできたと思って瞼を動かして瞬きをした。
キュクロプスが瞬きをしたことにより、小ルシス1号は、キュクロプスのまつ毛にはじかれて、勢いよく弾き返された。
「あーれーーー」
小ルシス1号は回転しながら勢いよく飛んで行った。
「まずはお前から殺してやる」
キュクロプスは何事もなかったかのようにトールさんを睨みつけて、大きな棍棒を振り落とした。
大きな棍棒が振り落とされた地面には大きな亀裂が入り地面には5mほどの多きなくぼみができた。キュクロプスが大きなくぼみを覗き込むが、そこにはトールさんの姿はない。
「どこへ消えたのだ!」
キュクロプスが、前後にある大きな目で周りと見渡すと大きな炎が自分に向かっていることに気づいた。しかし、気づいた時には、もう避ける時間がなく体を丸めて炎を耐えることしか選択肢がなかった。
大きな炎はキュクロプスに直撃して、キュクロプスの体は激しく燃え上がる。キュクロプスの体はトカゲの尻尾のようにダメージを受ければ、ダメージを受けた部位を引き離せば痛みはない。しかし、全身が炎で焼かれてしまったら、体を全部を切り離すしかない。キュクロプスは、全身に激しい痛みが駆け巡り悲鳴を上げながら転げ回る。そして、キュクロプスは、少しでも痛みから逃れるために手・足・胴体を切り離して頭だけになった。幸いにも頭だけは燃えていなかったので、痛みからは解放された。
「俺の体が燃えるなんて・・・信じられん」
強靭な皮膚を持つ巨人の体を燃やすのは並大抵の火力では無理である。それを可能にするのは精霊神の加護を受けたキューティーメロンにしかできない芸当であった。しかし、私の魔法なら一瞬で消し炭にできるのである。
「セクシーバナナ!キュクロプスはまだ死んではいませんわ」
「そうのようでございます。次の作戦に移りますか?」
セクシーバナナとはイフリートのことである。イフリートは自分も『特盛フルーツパラダイス』のメンバーに入りたいと懇願するので、黄色の仮面をつけてセクシーバナナになったのである。
「トールさんお姉ちゃん、もう大丈夫です!」
私はキュクロプスの棍棒がトールさんに当たる寸前のところでトールさんを救い出したのである。そして、ロキさんのところへ連れて行き、ロキさん達を治癒して小ルシス2号を復活させたのであった。幸いにも小ルシス2号の無謀な激突が、私がトールさんを助け出す時間稼ぎになっていたのである。たぶん・・・
キュクロプスは、生命の危機に瀕すると細胞の再生力は加速して、通常の10倍のスピードで細胞が再生する。なので、キュクロプスの体はあっと言う間に元に戻るのである。
「セクシーバナナ、キュクロプスが元に姿に戻ってしまったわ。次の作戦のスパーロボットアンデスに変身するのよ」
「わかりました」
セクシーバナナは燃え盛る炎の姿から、ヒーロー戦隊物のロボットのような姿に変身した。その大きさは5mほどありキュクロプスと同等の大きさである。そして、炎のロボットの頭の部分にキューティーメロンが、肩車されるような形で乗っている。
この炎のロボットの案は私からの提案であった。私が転生する前に住んでいた世界で、テレビで見たことのあるロボットの絵を描いて説明して、このような姿に変身できないかセクシーバナナに提案したのである。セクシーバナナは私の描いた絵を見るなり、喜んで変身すると言ったのであった。
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