第237話 ホロスコープ星国 パート14
私が宿屋で目を覚ますと、そこにはフレキの姿が見当たらなかった。
「フレキさん、フレキさん」
私は何度もフレキの名を叫んだが、フレキは私の呼びかけに答えることはなかった。
私はテーブルの上に1枚の手紙があることに気づいた。そして、すぐに手紙を読むことにした。
『フェニちゃん、黙って出ていくこと許してください。私は、森を出てすぐにこの世界に絶望しました。私が目指す争いがなく平和に過ごせる森など存在しないと実感しました。私はまず、このあたりの魔獣たちの行いを正す旅に出ることにしました。私の自分勝手な旅にフェニちゃんを連れていくことはできません。フェニちゃんは、この町でドラキュンさんと平和に過ごしてください。私も旅が落ち着いたらフェニちゃんに会いに戻ります』と書かれていた。
「フレキさん・・・私も一緒に連れていってくれたらよかったのに」
私は寂しくなって涙が溢れてきた。
「元気を出しなさい」
またまたドラキュんが、勝手に宿屋のお部屋に入ってきた。そして、悲しむ私をそっと抱きしめる。
「ありがとう。でも、なんでドラキュンさんが部屋にいるのですか」
「フレキさんが、私に声をかけてから旅に出かけたのよ。フェニちゃんが1人で寂しくないように、面倒を見て欲しいと言われたわ」
フレキは、私のことを気遣って、ドラキュンに私をこの町で面倒を見るようにお願いをしていた。しかし、ドラキュンの正体は私と同じ10歳である。同い年のバンパイヤに面倒を見てもらうのも少しおかしいと思った。
「フレキさんが戻ってくるまで、この町に住むといいわ。フェニちゃんの家も用意させるわ」
「ありがとうございます。でも、私も旅に出ようと思います」
私はドラキュンのご好意を断ることにした。フレキは魔獣が平和に過ごせるように旅に出たのである。私も人間が平和に過ごせる世界になるように旅に出ようと思ったのである。
神守聖王国オリュンポスと同様にホロスコープ星国も、星の使徒と呼ばれる者が支配するロクデモない国だとドラキュンから教えてもらった。結局どこの国へ行っても、強者が弱者を虐げるのは同じだと実感した。なので、私もフレキのように、人間世界が平和に過ごせる世界になるように、ホロスコープ星国の内情を探って、星の使徒が支配するこの国の体制を壊そうと決意した。
「どこへ旅に出るのですか?」
ドラキュンは、心配そうに私と見つめている。
「ホロスコープ星国の首都に行ってみます」
ホロスコープ星国の首都に行けば、ホロスコープ星国の内情がわかると思ったのである。
「1人では、危ないと思いますわ」
「大丈夫です。私にはリプロ様から頂いた特殊能力があります」
私には、『フェニックス』の能力がある。それは、死ぬことのない能力である。この能力があれば文字通り死ぬことはないので何も心配ないのである。
「そうなのですか・・・。私はフェニちゃんの意思を止めることはできませんが、もし、困ったことがあれば、これを使ってください」
私は十字のペンダントをもらった。
「このペンダントあれば、ホロスコープ星国に潜んでいる私の一族が、あなたを助けてくれるでしょう」
「それは助かります」
私は頭を下げてドラキュンにお礼を言った。
「ドラキュンさんって魔獣なのですか?」
私は疑問に思っていたので聞いてみた。
「私は、魔獣でなくバンパイヤ族よ。魔獣とは別の種族になるのよ。どちらかというと魔獣よりも人間に近い種族よ。だから、人型になることができるのよ」
「そうなんですね。ドラキュンさんは、これからもこの町に住み続けるのですか」
「そうね。私はこの町を守り続けたいわ。昨日は魔獣同士の争いが起きてしまったけど、私の『恋フェロモン』でこの町の平和を保ちたいわ」
「ホロスコープ星国は、なぜこの町を攻めてこないのですか?」
私は疑問に思ったので聞いてみた。
「魔獣の森に囲まれた場所なので、危険な町と認識している事と、私の『恋フェロモン』効果で、この町に近づく怪しい者は、魔獣たちが威嚇してくれる事もあると思うわ。でも、もしホロスコープ星国が攻めてきたら、どこかまた違う場所に町を作るわ」
ドラキュンは笑顔で答えてくれた。
「私がホロスコープ星国の悪事を成敗するので、ドラキュンさんは、この町で平和に暮らしていてください」
私は元気よく言った。
「期待しているわ」
ドラキュンは嬉しそうに言った。
私はドラキュンにお別れの挨拶をして、当初の目的地であったホロスコープ星国へ向かうことにしたのであった。
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