第238話 ホロスコープ星国 パート15

 

★ カプリコーン視点になります。



 「ジェミニ王、ご報告があります」



 カプリコーンは王都へ戻り、ホロスコープ星国の首都シリウスのシリウス城の王の間にいた。



 「魔獣の誘導が完了したのか?」



 ジェミニ王は25歳の若い王である。銀色の髪で銀色の瞳の美しい王である。



 「誘導は失敗しました」


 「なぜだ」


 「ウルフキングの妨害にあいました」



 カプリコーンは額に汗を垂らしながら言った。



 「ウルフキングと同格の魔獣を送ったのではないのか」



 ジェミニ王はイライラしている。



 「ウルフキングは、C3ランクの魔獣と認定されていましたが、その認定が間違っていたのです。ウルフキングの実力はC1ランクに相当すると私は感じました」



 カプリコーンは必死に弁明をする。



 「C1ランクだと!!なぜそんな強い魔獣が北の森にいるのだ。そんな情報今まで一度も報告されていないぞ」



 ジェミニ王は怒りをあらわにした。



 「詳しいことは分かりませんが、北の森からウルフキングが出てきました。ウルフキングを恐れて、グリフォンは、グリの森へ逃げ帰りました。そして、キマイラもウルフキングの支配下になったとウルフキングが言っていました。このままウルフキングが南下すれば、王都を襲う可能性があります」


 「それは危険だ!すぐに白騎士団に命じて王都シリウスの警護を固めろ。そして、魔獣1匹たりとも王都シリウスに近づけるな」



 ジェミニ王は、ほとんど情報のないウルフキングに怯えていた。



 「わかりました。すぐに準備いたします。あと、ウルフキングは人間に変身する能力を持っています。そして、人間の子供と共に行動していました」


 「魔獣が人間に変身するだと・・・それは厄介な能力だな。それに子供を連れているのか。すぐにウルフキングの人間の姿と連れの子供の手配書を作成しろ。そして、絶対に王都に侵入させるな」


 「わかりました。すぐに手配書を用意します」



 カプリコーンは、ジェミ二への報告を終えると、すぐに、シリウス城の会議室に向かった。


 会議室には、4色騎士団の団長が今後の作戦を立てるために集まっていた。


 4色騎士団とは、ジェミニに仕える4つの騎士団であり、王都シリウスを守る精鋭の騎士団である。その4色騎士団のトップがカプリコーン軍団長である。


 4色騎士団は赤、白、黄、青の4つの色に分類されていて、赤騎士団の団長は、真っ赤な綺麗な長い髪を持つイケメンのスコーピオ。白騎士団の団長は、白い短髪の巨漢のタラウス。黄騎士団の団長は、耳が隠れるくらいの黄色の髪の小柄なアリエル。青騎士団の団長は、青い髪の冷酷な表情のライブラである。



 「みんな集まっているな」



 カプリコーンが偉そうに言う。



 「カプリコーン様、私の方から、皆にこれまでの経緯を説明しました」



 気がきくスコーピオが言った。



 「なんだと!まずは、開会式の合唱が先だろ」



 カプリコーンが、大声でスコーピオを怒鳴りつける。


 4色騎士団の会議を行うときは、会議を始める前に、北の森へ向かうときに合唱したあの歌を、みんなで歌うのが習わしとなっていた。


 しかし、4色騎士団の団長たちは、その合唱がとても苦痛であったので、なんとか回避できないか、常日頃考えていたのであった。なので、素早く会議を始めるために、スコーピオは、今回の会議の内容を他の騎士団の団長に報告して、すぐに会議を始める作戦を取っていたのであった。



 「スコーピオの話によりますと、かなり深刻な事態だと思います。早急に対策を練る必要がある思います」



 黄騎士団の団長アリエルが言った。



 「人間に化ける魔獣なんてヤバすぎるぜ」



 白騎士団の団長タラウスが言った。



 「人間の子供もいてるようですが、見つけ次第殺しましょう」



 青騎士団の団長ライブラが言った。



 残りの3人の騎士団の団長も、スコーピオと同じ気持ちだったので、素早く会議を始めたいのであった。



 「待てお前ら、開会式の合唱がまだだろ」



 カプリコーンは引かない。カプリコーンは歌うのがとても大好きである。なので、歌わないと気分が乗らないのである。



 「スコーピオ、ウルフキングの特徴と人間の子供の特徴を教えてください」



 カプリコーンの声が、聞こえないフリをして会議を進めようとするアリエル。



 「手配書が必要になると思い、手配書を作成してきました。皆さん目を通してください」



 仕事が早いスコーピオ。



 「さすが、スコーピオ。お前はできる男だ」



 遠回しに軍団長は、カプリコーンよりスコーピオのがふさわしいと言いたいタラウス。



 「手配書を見せてくれ。俺が暗殺する」



 やる気満々のライブラ。



 「4月生まれはアリエスさん〜♪5月生まれはタラウスさん〜♪6月生まれは偉大なるジェミニ王〜♪」



 マイペースに歌を歌い出すカプリコーン。



 毎回会議はこのように進んでいくのであった。


 1時間後・・・



「では、ジェミニ王の指示である手配者は、私が既に作成していますので、これを王都中に配ります。そして、タラウスさんは王都シリウスの周辺の護衛をお願いします。ライブラさんは、単独でウルフキング達を探し出して、抹殺するという本人の申し出を受理することにいたします。ウルフキングは、私の進言通りに行動していれば、今はハダルの町に滞在しているでしょう。いつハダルの町から、王都シリウスに移動するかわかりません。ウルフキングが、王都シリウスに来る前に、防衛を強化して、ウルフキングを制圧する準備を整えましょう」



 スコーピオが会議の総括をした。



 「俺が抹殺するから問題ない」



 ライブラが淡々と言った。



 「期待してるぞ」



 カプリコーンが、軍団長らしく偉そうに言う。



 「これで、4色騎士団の会議は終了する。最後に会議の締めの合唱を行う」



 カプリコーンは嬉しそうに言う。



 「すぐにハダルの町へ向かう」



 ライブラが、逃げるように会議室を出て行った。



 「俺も周辺の警護で忙しいぜ」



 もちろんタラウスも逃げ出した。



 「黄騎士団の兵士たちに、手配書を配らせます」



 アリエルも逃走する。



 「アリエスさん、私も手伝います」



 スコーピオをアリエルを追いかけようとしたが・・・会議室の扉の前にカプリコーンが立ちはだかる。



 「最後の合唱だけは、付き合ってもらうぞ」



 カプリコーンが、悪魔のような笑みでスコーピオに言い放った。


 スコーピオは、うなだれるように倒れ込むのであった。

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