第239話 ホロスコープ星国 パート16


 私は、ドラキュンに王都シリウスの場所を教えてもらいハダルの町を後にした。


 ハダルの町から王都シリウスへは2日間かかるらしい。なので、王都へ行く途中にあるカペラの町を経由することにした。


 私は、何もない草原を馬でのんびりと移動していた。馬の乗り方は、孤児院で教えてもらっていたので簡単に乗ることはできた。


 私の新しい旅の仲間である馬に名前をつけてあげることにした。



 「あなたの名前はベガにするわ」



 私は馬の名前をベガと名付けてあげた。



『ヒヒーーーン』



 ベガは、名前を気に入ってくれたのか嬉しそうに声を上げた。


 私はベガに乗りパカパカと馬を走らせた。


 カペラの町へ辿り着くまでに何度か魔獣と遭遇したが、私の『ヘルファイヤー』でこんがり焼いて、大事な資金源として収納ボックスに保管した。


 そして、日が暮れる前には、カペラの町にたどり着くことができた。



 「この町へ何しにきたのですか?」



 カペラの町の門番が私に問いかけてる。



 「家族が魔物に襲われてたので、逃げてきたのです」



 10歳の女の子が、1人で旅をしていると言ったら、怪しまれると思ったので、私は苦し紛れの嘘を言った。



 「それは大変ですね。すぐに町にへ入れてあげたいのですが、身分証は確認させてください」



 門番は心配そうに言った。



 「必死で逃げてきたので、身分証はありせん」


 「そうですか・・・それなら仕方ありせんね。町長に確認を取りますので、しばらくお待ちください」



 門番は町の中へ消えていった。



 「君はどこの町から来たのかな?」



 もう1人の門番が私に尋ねてきた。



 「私は、神守聖王国オリュンポスから逃げてきたのです」



 ハダルの町は、ホロスコープ星国の国民から恐れられているので、ハダルの町から来たとは言えない。また王都シリウスから来た言いたいところだが、私がきた方向とは、真逆なので話の辻褄がおかしくなってしまう。なので私は素直に言った。



 「北の森を超えてきたのですね」


 「はい。とても危険でした」



 私は、体を震わせる演技をしながら言った。



 「そうでしょう。家族の方は北の森で魔獣に襲われたのですね」



 門番は心配そうに言った。



 「はい」



 私は、門番の意見にのっかかる。



 「これから、どうするのですか」



 門番は優しく尋ねてきた。



 「王都シリウスに向かう予定です。ホロスコープ星国は素敵な国と聞いていますので、王都シリウスで、平和に過ごそうと思っています」



 「そ・・そうですか」



 門番の顔が曇り出した。



 「門番さんは、王都シリウスに言ったことがありますか?」



 私は笑顔で聞いた。



 「私は以前王都シリウスで仕事していました。しかし、いろいろあって、この町に引っ越してきました」



 門番の声に張りがなくなっている。門番は、王都シリウスから逃げてきて、この町に移り住んできたのだと私は思った。



 「そうなんですね」



 私は、王都シリウスについて聞くことは、よくないと感じてこれ以上質問をしないことにした。



 「許可が出ました」



 もう1人の門番が戻ってきた。


 私は門番にお礼を言ってカペラの町に入った。


 私は、すぐにカペラの町の冒険者ギルドへ訪れて、今日退治した魔獣の素材を売ってお金に替えた。そして、そのお金で宿屋に泊まることにした。


 私は、宿屋にある食堂で食事をして部屋でのんびりとしていた。



 「この手配書の女性2人を探している」


 

 私が宿屋に到着した頃、カペラの町へライブラが到着した。



 「その女性たちには見覚えはありません」



 門番は答えた。



 「そうか。この2人の女性を見つけたら、すぐに知らせろ」



 ライブラは偉そうに言った。



 「この女性たちは何をしたのですか?」



 門番はライブラに恐る恐る聞いてみた。



 「お前らような低俗な人間に、教えることは何もない」



 ライブラは、醜い生き物を見るような目で門番を睨みつけて、ハダルの町へ向かって行った。



 「お前、嘘をついて大丈夫なのか?」



 もう1人の門番が言った。



 「実は俺の妻は、青騎士団の連中に見殺しにされたんだ。それに、騎士団の連中は俺のことを虫けらのようにしか思っていない。あの女の子が、なぜ追われているかは知らないが、俺はあいつらに協力する気はない」


 「お前も、4色騎士団に恨みがあるのだな」



 もう1人の門番が言った。



 「そうだ。王都の人間は自分たちが特別だと思っている人間が多い。俺は『スター』を発動することができなかった落ちこぼれだ」


 

 悔しそうに門番が言った。



 「俺も同じだ。王都では『星の使徒』に選ばれた『ゾディアックサイン』の能力者と『スター』を身につけたエリートしか、王都では人間扱いされないからな」



 もう1人の門番も悔しそうに拳を握りしめていた。



 「王都は狂っている」



 門番は小さくつぶやいた。



 「そうだな。しかし、この件は町長には報告しないとな」


 

 門番はそういうと再び町長の元へ走って行った。



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