第236話 ホロスコープ星国 パート13


 「ウルフの森も俺の支配下にしてやるぞ」



 ケルベロスがフレキにじわりじわりと近ずいて行く



 『ホワイトブレス』



 フレキは白い突風を放った。



 「そんな、しょぼい風で何ができるのだ」



 ケルベロスは、『ホワイトブレス』を避けようとしない。自身の強靭な体に自信があるのだろう。


 突風がケルベロスを襲う。


 ケルベロスは涼しい顔をして、突風を全身で受け止めた。



 「心地よい風だぜ」



 ケルベロスは、余裕の笑みを浮かべて言った。


 

 「次は俺の番だな」



 ケルベロスは、フレキに向かって歩き出した。


 しかし、いくらケルベロスが、前に歩き出そとしても前に進まない。



 「なぜ、前に進めないのだ!」



 ケルベロスがイライラする。



 「その風は、無限に吹き続ける風です。なので、あなたはその場から動くことはできないのです」



 フレキの放った『ホワイトブレス』は、ケルベロスの前に風流の元が形成されて、無限に突風を放っていたのであった。


 ケルベロスは、動く方向に風流の元が移動するので、ケルベロスは前進することができない。



 「俺の動きを封じたくらいでは、俺を倒すことはできないぞ」



 ケルベロスは吠える。



 「私は、あなたの命をいつでも奪えます。最後にチャンスをあげましょう。もう争いをやめて森でひっそりと暮らしてください」


 「こんな風は大した事ないのだが、今回はお前の熱意に免じてお前の話を聞いてやろう」



 ケルベロスは威勢良く吠えていたが、内心はかなりビビっていた。



 「次はありませんよ」


 「俺は魔獣王の血を引き継ぐ高貴なる魔獣だ。嘘など言わない」



 フレキは風流の元を解除した。



 「約束は守ろう。俺は争いはしない」



 ケルベロスは言った。



 「しかし、俺は争いを起こすぜ」



 ケルベロスのもう一つの頭が言った。


 ケルベロスは、風流の元がなくなるとすぐにフレキの首元を噛みちぎろと突進した。



 『ガブリ』



 ケルベロスがフレキの首に噛み付くより先に、フレキがケルベロスの首を噛み付いた。


 ケルベロスの首が引きちぎられる。



 『ガブリ』



 「俺も争いを起こすぜ」



 ケルベロスのもう一つの頭がケレスの首に噛み付いた。


 フレキの首元から血が滴り落ちる。



 「くだらないです」



 フレキはそういうと、体を大きく揺すって、ケルベロスを弾き飛ばした。


 ケルベロスは地面に叩きつけられ倒れ込む。



 「なんて力なんだ」



 ケルベロスはフラフラになりながらも立ち上がる。



 「オルトロス、加勢しろ」


 「・・・」


 「オルトロス、早く加勢しろ」


 「・・・」



 ケルベロスが大声で叫ぶが返事はない。



 「あなたは、周りが見えていないのですね」



 ケルベロスは、周りを見渡した。



 「誰もいない・・・」



 ケルベロスがフレキと戦っていた間に、野外ステージ付近にいた魔獣はフレキの恐ろしさを感じて、すぐに逃げ出したのであった。



 「オルトロスというのは、二つの頭を持つ犬の魔獣ですね。オルトロスは、先陣を切って逃げて行きました」


 「俺の負けを認める。だから命だけは助けてくれ」



 ケルベロスは首一つ噛みちぎられ、加勢してくれる仲間もいないと気づいたので命乞いをする。



 「もう、あなたを信じることはできません」


 「俺は魔獣王の血を引き継ぐ高貴な魔獣だ。そうだ!俺と一緒に組まないか?150年前に、魔獣王が成し遂げれなかったこの世界の王に、俺と一緒に目指そうではないか!」



 ケルベロスは必死である。


 フレキは、大きく口を開いて『ホワイトブレス』を放った。


 閃光のような光り輝く突風が一瞬でケルベロスの体を粉々にした。



 「終わりました」


 「フレキさん、お疲れ様です」



 私は笑顔でフレキに言った。しかし、フレキの表情はとても悲しそうだった。



 「今日は、ゆっくりと休みましょう」


 「そうですね」



 フレキの首元の傷は、『ホワイトブレスヒーリング」で治療して2人で宿屋に戻った。




 ★オルトロス視点になります。



 「逃げるぞ」



 オルトロスが言った。オルトロスは二つの頭を持つ犬の魔獣である。



 「しかし、ケルベロス様がウルフキングと戦っています」



 ドッグワンが答える。ドッグワンは大きな犬の魔獣である。



 「ケルベロスはわかっていないのだ。ウルフキングはC1ランク以上の力の持ち主だ」



 オルトロスが怯えながら言った。



 「C1ランクを超えるとなると、魔獣王様クラスになると思いますが、本当なのでしょうか」




 ドッグワンは、オルトロスの言葉が信用できないのであった。




 「本当だ。今逃げないと、俺たちも殺されるぞ」



 オルトロスは、フレキに恐れて颯爽と逃げ出した。そして、オルトロスに続いて、野外ステージに集まった魔獣たちも一緒に逃げ出したのであった。



 「これからどうするのですか?」



 ドッグワンが聞いた。



 「ラードーン様に報告するぞ」


 「ケルの森を捨てるのですか」



 ドッグワンが問いかける。



 「俺たちではウルフキングには敵わない。だから、ケルの森に戻るのは危険だ。ラードーン様がいる。王の森に向かうぞ」



 オルトロスは、ケルベロスを見捨てて王の森へ向かった。


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