第235話 ホロスコープ星国 パート12


 ドラキュンは、野外ステージでコンサートをすると言ってやっと宿屋から出て行ってくれた。これでゆっくりと眠ることできると思った私の考えは甘かった・・・


 ドラキュンのトチ狂った歌声が町中に響きわたる。歌というよりも朗読に近い音程を感じさせない、アグレッシブルな歌は私に安眠を与えてくれなかった。


 しかも『恋フェロモン』によって、心を支配された魔獣たちは、ドラキュンのひどい歌声も、天使の歌声のように感じて歓喜をあげて喜んでいるのであった。


 町の住人もドラキュンに、バンパイヤにしてもらったドラキュン派閥のバンパイヤなので、ドラキュンの歌声にうっとりとして喜んでいた。


 私とフレキだけがドラキュンのトチ狂った歌声によって苦しめられていた。


 ドラキュンの野外コンサートは深夜0時をもってやっと終了した。


 これで、やっと私とフレキは安眠を取れると思ったが・・・


 魔獣たちがいざこざを始めてしまった。



 「お前ごときが、ドラキュン様に結婚を申し込むとは甚だおかしいぜ」



 グリフォンが怒りが頂点に達していた。



 「お前こそ、どの面下げてドラキュン様に結婚を申し込んでいるのだ」



 ケルベロスも同じである。



 グリの森の主グリフォンとケルの森の主ケルベロスが揉めている。


 ドラキュンの野外コンサート終了後、ステージの上に立つドラキュンに対して、2体の魔獣が歓喜余って、ドラキュンに結婚を申し込んだのである。



 「私はみんなの姫なので結婚は致しません」



 とドラキュンは毎回言っているが、それでもドラキュンに結婚を申し込む魔獣は後をたたない。


 しかし、今回は森の主の2体の魔獣が求婚をしたので大騒ぎになっている。


 ドラキュンがステージからさった後グリフォンの軍勢とケルベロスの軍勢が睨み合っている。



 「この際だからはっきりさせようではないか。ドラキュン様はどちらの森のお姫様なのか!」



 グリフォンが大きな声で怒鳴る。



 「はっきりさせるまでもない。ドラキュン様はケルの森の姫だ!」



 ケルベロスも大声で叫んだ。ケルベロスは三つの頭を持つ犬の魔獣である。討伐難度C2ランクの魔獣になる。



 「調子にのるなよ」



 グリフォンは、翼を広げて上空に飛び上がりケルベロスに向かって炎を吐き出した。


 凄まじい炎がケルベロスを襲う。


 ケルベロスの体は激しく燃え上がった。



 「こんな炎では、俺の強靭な体を燃やすことはできないぞ」



 ケルベロスは、激しく燃えているがダメージはさほどないみたいであった。


 ケルベロスは、大きくジャンプしてグリフォンの足を噛みつこうとした。


 グリフォンは、翼をばたつかせてケルベロスの攻撃を交わす。


 ケルベロスは、グリフォンへの攻撃を失敗して地面に着地する。


 ケルベロスが地面に着したところをライフォンが突進してタックルをぶちかます。



 『バコ、ベキ』



 タックルをしたライフォンが、ケルベロスの強靭な体に弾かれて倒れ込む



 「お前ごときが俺に勝てると思っているのか」



 ケルベロスが、倒れ込んだライフォンの首にかぶりつく。



 「グギャーーーー」



 ライフォンが悲鳴をあげる。


 グリフォンがライフォンを助けるために、急降下してケルベロスの頭部を鋭い足の爪で斬りつける。


 ケルベロスは、もう一つの頭でグリフォンの足をかぶりつく。



 「グギャーーーー」



 グリフォンが悲鳴をあげる。そして、ケルベロスはもう一つの頭で、グリフォンの首をかぶりつく。


 グリフォンは首から多量の血を流して倒れ込んだ。



 「俺は魔獣王様の正当な血を引き継ぐ魔獣だ。お前らのような下等な魔獣と一緒にするな」



 ケルベロスは勝利を確信してグリフォンの上にのしかかる。



 「助けてくれ・・・」



 グリフォンがうなだれるように言った。



 「死ね」



 ケルベロスは、グリフォンの首を噛みちぎった。



 「グリの森に住む魔獣どもよ今日から俺がグリの森の支配者になる。俺に従わない者は、グリフォン同様に咬み殺すぞ」



 ケルベロスが、魔獣達を威嚇する。



 「俺はグリフォン様に使える偉大なる魔獣だ。お前になんか絶対に従わない」



 ライフォンは首から多量の血を噴き出しながらケルベロスに屈服しない。



 「まだ生きていたのか」



 ケルベロスは、ライフォンの頭を踏みつけて息の根を止めた。



 「まだ俺に逆らう者がいるのか!」



 ケルベロスはさらに魔獣達を威嚇する。



 グリフォン、ライフォンが殺されたのでケルベロスに逆らう魔獣はいない。



 「何を騒いでいるのですか」



 魔獣たちが、騒いでうるさくて眠れなかった私とフレキは、魔獣たちに静かにしてもらうように、野外ステージに来たのであった。



 「お前がウルフキングか・・・」



 ケルベロスはフレキを睨みつける。



 「グリフォンさん・・・ライフォンさん・・・」



 フレキは、グリフォンとライフォンが殺されている姿を見て呆然とした。



 「あなたが2人を殺したのですか」



 フレキはケルベロスを睨みつける。



 「そうだぜ。俺に逆らう者はああなるのだ!お前も俺に逆らうと、どうなるかわかっただろう」


 「なぜ、同じ魔獣なのに殺したのですか」



 フレキは怒りに満ちて言った。



 「同じ魔獣だと・・・何を言っているのだ。俺は魔獣王様の血を引く、高貴な魔獣だぞ。あいつらと同じにしてもらったら困るぜ」



 ケルベロスは笑いながら言った。



 「くだらない・・・あなたの言っていることはとてもくだらない」



 フレキは静かに言った。



 「フェニちゃん、森の外に出てすぐにわかりました。人間も魔獣もとてもくだらない生き物ということが・・・私はただ、平和にみんなと暮らしたかっただけなのに、どうしても邪魔をする者がいるみたいです。私はそんな生き物を許すことができません」


 「フレキさん落ち着いて!」



 私はフレキが心配になった。



 「フェニちゃん、少し離れていてくれるかしら・・・グリフォンさんたちの仇をとります」



 フレキは、私を背から下ろしてケルベロスの元へ向かった。

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