第73話 ブロッケン山にてパート2
「まだ3体もいるのかよ」
「そうみたいだ。さっきからこちらの様子を、遠くから見ているみたいだ」
ブロッケン山の霧を、排除せずに登っていたら、サンドマンの眠り以前に、ワーウルフに、食い殺されていたのかもしれない。ワーウルフの嗅覚は鋭いので、視界が悪くても、問題ないのである。
しかし、私が霧を排除したので、ワーウルフは警戒して、自分からは、襲ってこないみたいだ。強い魔獣だが、警戒心も人一倍強いのである。
「私の弓で退治しますわ。この距離なら問題ないですわ」
ワーウルフは、20m先の木の影に隠れている。探知魔法が使える私は。楽勝で場所は特定できるが、ロキさんは、ワーウルフ鋭い視線の気配を感じ取って、場所を特定した。ロキさんは、感知能力に長けているみたいだ。
ポロンさんは、視力が人間の数倍あるので、肉眼できちんととらえている。なので、弓で確実に当てる自信があるのである。
「ポロン任せたぜ」
「おまかせあれ」
ポロンさんは、かなり自信があるみたいである。精霊神の加護を受け、イフリートの力を最大限に使えるので、討伐難度C3のワーウルフでさえ、倒せる自信があるのであろう。
ポロンさんは、弓を持つ。手の甲の精印から、赤く輝く矢が弓にセットされる。ワーウルフへ直接当てるには、何本かの木が邪魔で、直接当てるのは難しい。しかし、ポロンさんは、構わず弓を撃つ。
赤く輝く矢は、一直線にワーウルフ目掛けて、飛んで行く。わずかな木の隙間をすり抜けて、20m先のワーウルフのもとへ。
ワーウルフは身の危険を感じ、木を盾にして、完全に姿を隠す。
ポロンさんの放った矢は、ワーウルフを通り過ぎて行く・・・・否。矢は木を過ぎると、垂直に曲がり、ワーウルフの頭部に突き刺さる。
「グギャー」
ワーウルフは悲鳴をあげる。ワーウルフは突き刺さった矢を抜こうとした時、矢は激しい炎吹き出した。
「ググギャーーー」
さらに大きな悲鳴をあげる。激しい炎は瞬時にして、ワーウルフを焼き尽くした。
それを見ていた2体のワーウルフは逃げ出した。
しかし、ロキさんとトールさんは、ワーウルフを逃しはしない。2人のスピードは、逃げたワーウルフにすぐに追いついた。ポロンさんのイフリートの矢を見てビビったワーウルフは、もう2人の相手には、ならなかった。一体は、ロキさんの黒く燃え上がる剣により、首をはねられ、もう一体はトールさんのハンマーでぺちゃんこになっていた。
「今度こそ終了だぜ」
「そうだな」
「でも、なかなかサンドマン出てこいないぜ」
「ルシスちゃんが、霧を排除したから、かなり警戒しているのよ」
「そうだな。不意打ちができないから、困っているのだろう」
「先を急ぎましょう」
私たちは、ブロッケン山の、山頂付近までやってきた。舗装はされていなが、山頂までは、きちんとした道もあった。たぶんサンドマンが利用している道なのであろう。なので、この道を辿れば、サンドマンの住む家にたどり着くと考えていた。
「山頂に小さな小屋が見えますわ」
「あそこにサンドマンがいるのか」
「たぶんそう思いますわ」
「行ってみるか」
「罠かもしれない」
ロキさんが、小屋に行くことに反対した。
「大丈夫だろ」
「そうですわ。罠だとしても、問題ないですわ」
「油断しなければ、問題ないだろ」
「しかし・・・」
あの小屋から、確かに怪しい気配は感じる。なので、ロキさんは、小屋へ行くのに反対しているのだろう。私の感知魔法でも、あの小屋には、サンドマンがいるのは間違いないと思う。しかし、ここに居ても、サンドマンから攻撃を仕掛けてきそうにもないので、私も小屋に行くことに賛成である。
「小屋に行きましょうロキお姉ちゃん。あの小屋には、確実にサンドマンは居てると思います。私が、ブロッケン山の霧を排除したので、あの小屋で、待つことにしたのだと思います」
「ルシスちゃんが言うのなら、行くことにしましょう。それに、何か作戦があるのね」
「はい。あたって砕けろ作戦です」
私は、実はノープランであった。ダークエルフになったサンドマン・・・得意のプリンで、仲良くなれるかは未知数である。積年の恨みが、あるみたいなので、話し合いで解決しそうにない。眠りの砂さえ対処すれば、なんとかなると考えていた。
私たちは、山頂にある小屋にたどり着いた。とりあえず、扉を叩いてみた。
「コン・コン」
「私は、エルフのポロンと言います。少しお話があるので、中へ入れてもらえないでしょうか」
エルフなら、話しを、聞いてもらえると思い、ポロンさんが対応する事にした。
「何しにきた。エルフの冒険者」
こちらの状況をある程度は、把握しているみたいだ。
「ドワーフに頼まれて、眠りの呪いを、解除してもらいにきました」
「エルフが、ドワーフの味方になったのか」
「そう言うわけではありませんが、長年続いたお互いの確執を、無くそうと思ってます」
「・・・・・」
「お願いします。話だけでも聞いてください」
「わかった。中へ入れ」
私たちは、サンドマンの許可を得て、小屋に入ることができたのである。小屋の中は、質素な部屋であり、あまり生活感を感じない。部屋の中には、この部屋には、似合わないくらいの大きな鏡があるのに、少し違和感を感じた。
「お前はエルフだな。俺のことは知っているのか」
サンドマンは、大きな砂袋を背負った老人の妖精であり、また姿を消すことができる妖精である。エルフとの契約で、ダークエルフになったサンドマンは、とても美しい容姿をしている。エルフは長寿でもあり、成人してからも容姿が変わることなく、美しいままである。とても羨ましい種族である。
「ダークエルフになった、サンドマンですね」
「ああ、そうだ。俺はこの体を手に入れるのと引き換えに、ドワーフの王女を末代まで、眠りの呪いをかけることを約束した。なので、呪いを解除することはできない。どうしても、解除して欲しければ、俺を倒すことだな」
「そうなのですか。それは仕方がありませんね。それなら退治してあげましょう」
私たちは、話し合いは無理だと判断した。すかさず、ロキさんが剣を抜き、サンドマンの頭を切り落とす。
サンドマンの頭が、床に転がる。
「ハ・ハ・ハ・どうだ、俺の頭を切り落とした感想は。さぞかし、いい夢でもみているのだろう」
サンドマンの頭は、切り落とされてなどいない。そこには、小屋の床で倒れている4人のラスパのメンバーがいる。お互いに、攻撃し合い、トールさんの頭は、切り落とされていた。
「お前達は、俺の砂しか、警戒していなかったみたいだな。しかし、俺の睡眠魔法は、砂だけではない。そこの大きな鏡に写ったら、夢の世界へと引きずり込まれるのだ。そして幻影を見て、お互いを攻撃し合うのだ」
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