第74話 ブロッケン山にてパート3


⭐️時は少しだけ遡ります。




 「よし、小屋に向かうぞ」


 「ちょっと待ってください」


 「どうしたルシス。お前も小屋に行くのには、賛成していただろう」


 「そうなのですが、相手の思惑にハマるのは、嫌なので少し小細工をします」



 私は、7大天使様と契約しているので色々な能力を持っている、よく使うのが、アリエール様の、自然を作り出す能力の応用で、アカシックレコードという私が作りたい物の作り方を教えてくれる能力がある。その他には、アズライール様の魂を救う能力の応用で、死者の蘇生ができる能力。これは太陽騎士団のケレスを蘇生した能力である。


 アズライール様の、魂を救う能力は他にも使い道があり、土を集めて魔力を魂の代わりにしてゴーレムを作ることができるのである。


 私は、この能力を使い私たちの身代わりのゴーレムを作って、小屋へおくることにした。小屋では、何が起こるか分からないので、ゴーレムを通して、中の様子を探ることにしたのである。



 「おいおい、中はどうなっている」


 「小屋の中は質素で何もない部屋です。でも、あきらかに、この小屋には似合わない、立派で大きな鏡があります。確実にあれは危険だと思います」


 「ダークエルフが、ナルシストなだけじゃないのか?自分の姿を見て喜んでいるんだぜ」


 「そうですわ。エルフの男性は、自分の美しさを見て喜ぶ種族ですわ」


 「・・・・」



 エルフの男性は、そんなにもナルシストだったとは知らなかった。あのダークエルフも、もうかなりの年齢なのに、見た目は美しいイケメンである。しかし、あの鏡は絶対に怪しい。



 「あ・・・・」


 「どうしたルシス。何かあったのか」


 「ゴーレム達が倒れました」


 「ダークエルフに何かされたのか」


 「はい。やはりあの鏡は危険な鏡でした。あの鏡を見ると、夢の世界へと引き込まれるみたいです。ドワーフの王女も、あの鏡を見て夢の世界に閉じ込められて、寝たきり状態になったみたいです。でもあの鏡を割れば元に戻るみたいです」


 「そうなのか。でも見ているだけで、そこまでわかるとは、ルシスの洞察力はすごいぜ」


 「いえ、ダークエルフが、私たちを夢の世界へと送り込んだと勘違いして、ベラベラと自慢げに解説してくれたのでわかりました」


 「そういうことか。それで、これからどうする」


 「そうですね。小屋の中に入って、鏡を叩き割りましょう。そうすれば、ドワーフの王女も、眠りから覚めて依頼達成です」


 「わたしに任せて。鏡を割ったらいいのね」



 そういうと、ポロンさんは小屋へ向かって行った。



 「ポロン待て、鏡は絶対に見るなよ」


 「大丈夫よ。鏡を見なければいいのね。楽勝よ」



 ポロンさんはそう言うと、小屋の中へ入っていった。



 

 「なんだお前は・・・夢の世界へ行って、死んだはずでは」



 ダークエルフは、いきなり現れたポロンさんに驚いている。ラスパのメンバーは、夢の世界へ送りこんで、同士討ちをして死んだはずなのに。



 「あなたの相手は後でよ。私は鏡を壊しにきたのよ」


 「鏡のことをなぜ知っている・・・・」



 ポロンさんは、ダークエルフの問いを無視してあたりを見渡す。



 「あの大きい鏡を壊せばいいのね」



 ポロンさは鏡を見つけ、弓を引いて壊そうとした。



 「鏡に写る私の弓を引く姿、とても美しいわ・・・・」



 エルフがナルシストなのは、男性だけではなく女性も同じくナルシストだった。


 ポロンさんは、鏡に写る自分の姿に見惚れてしまい、夢の世界へ引きずり込まれてしまった。



 「おいポロンどうした」



 心配になったトールさんが、すぐにポロンさん後を追って小屋の中へ入って行った。



 「次は誰だ・・・」



 ダーエルフは、また、夢の世界へ送りこんで、死んだはずのトールさんを見て驚いている。



 「どうなっているのだ」


 「お前の相手は後だ。まずは鏡だ」



 トールさんは、ポロンさんが、鏡の近くで倒れているの発見した。


 

 「ポロン、鏡を見てしまったのか・・・あれほど見るなと言われていたのに。仕方がない俺が鏡をぶち壊してやるぜ」


 

 トールさんはハンマーを振りかざし鏡を壊そうとした。



 「トール、最近太ったのじゃないの」


 「ああーーー、そんなんことはないぞ。ほら、鏡に写る俺は、スリムなボディだろ・・・・」



 トールさんは鏡を見てしまった。この鏡は、夢の世界に引き込む為に、相手が鏡を見たくなるような言葉をかけるのであった。


 ポロンさんも、「弓を引く姿はとても美しね」って言われて、自分の姿を確認したのであった。



 「なんだかよく分からないが、無事に、冒険者たちを夢の世界へ送り込めたな」



 ダークエルフは、労をせずに2人を夢の世界へ、送り込むことに成功した。



 「ルシスちゃん、鏡が壊れた音がしないわ」


 「そうですね。もしかしたら、失敗したのかもしれません」


 「そうね。あの2人なら・・・ありえそうだわ」


 「私たちは、慎重にいきましょう」



 もう、やることは決まっている。鏡を見ずに叩き潰すことだ。しかし2人は失敗した。ここは慎重に動かないといけない。


 私とロキさんは、静かに小屋のドアを開けた。小屋の中には、ダークエルフの姿と、鏡の前で倒れているトールさんとポロンさんがいた。



 「お前達まで、また現れるとは・・・最初に訪れたのはおとりだったのか?」


 「そんなところですわ」


 「もう知っているのだろう。鏡の秘密を」


 「もちろんです。今すぐ鏡を壊します」


 「好きにすればいい。俺は手出しはしない」


 「何か企んでいるのね。でも、私は慎重に行動するのでトール達みたいにはならないわよ」


 「疑り深いな。俺は何も企んでいないぜ」



 ロキさんは、鏡を見ないように近づき剣を構えて鏡を切り壊そうとした。



 「ロキお姉ちゃん、前髪がパッツンパッツンですよ」


 「何を言ってるルシスちゃん。昨日の散髪は完璧にしたはずだ」


 

 ロキさんは、自分の前髪が気になり鏡で自分の前髪を確認した。


 ロキさんは、前日に自分で前髪を切って、切り過ぎたことを後悔していた。ロキさんは、鏡を見てしまい夢の世界へと連れて行かれた。


 せっかくゴーレムを使って、小屋を覗き込んだのだが、鏡の力により、3人は夢の世界へ連れて行かれしまった。残ったのは私だけである。



 「残ったのはお前だけだな。お前に鏡を壊せるのか」


 「私は大丈夫です。何を言われても動じませんから」



 初めからわかっていれば簡単である。何を言われても、気にせずに鏡を割ればいいのだから、楽勝である。私は鏡に近づき料理用ナイフに手を伸ばそうとした時・・・



 「なんて小さくて可愛い女の子・・・」


 「誰がチビだと!ふざけるなボケ・カス」



 私は、転生する前は背が低いことが、すごいコンプレックスであった。転生してからは、まだ幼いので気にしてはいなかったが、鏡の問いかけは、心の奥底にまで響いてしまい、転生前の素の私がでてしまった。



 私は、怒りのあまり鏡をグーパンチで叩き割ってしまった。

 





 


 

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