第75話 ブロッケン山にてパート4
「鏡の誘導に惑わされないお前は・・・一体何者だ」
この鏡は、転生前の私のことまでは、知ることができなったのであろう。この鏡に惑わされなかったのは本当に偶然であった。
「私の精神力を持ってすれば、何を言われても動じることなどありません」
嘘である。小さいと言われて、メンバーの中でも1番動揺して、怒りのグーパンチをしてしまったくらいである。
「まだ幼いのに、お前の精神力はかなりのものだな・・・」
夢の世界に送り込まれていた3人が、鏡が割れたことによりこちらの世界へ戻ってきた。
「ルシス、どうなっている。お前が鏡を割ってくれたのか」
「はい。私が鏡を壊したのでもう大丈夫です。これでドワーフの王女の眠りも覚めるはずです」
「そうか。これで依頼達成だな。このダークエルフはどうするよ」
「貴様ら、4人がかりで俺を倒すのか?卑怯じゃないか・・・・」
「鏡を使って夢の世界へ送る方が卑怯だぜ!」
「あれは作戦だ。なので卑怯ではない」
ダークエルフは、鏡を壊されて万策尽きたのか、怯えながら私たちに、見逃すように説得を始めた。
「俺は、エルフの契約によって、仕方なくドワーフの王女を眠らせただけだ。契約を破るわけにはいかないのだ」
「なら、またドワーフの王女を眠らせるのか?」
「それは・・・・」
「契約を打ち切ればいいのだ」
ポロンさんの精印からイフリートがあらわれた。
「お前はイフリート・・・・」
ダークエルフはイフリートを見た途端、急に震えだした。
「なぜ・・・こんなところにイフリートがいるのだ・・・」
イフリートは、火の精霊神サラマンダーの分身である。妖精のサンドマンにとっては、目の前に精霊神があらわれたので完全にびびってしまっている。
「サンドマン、お前から契約を解除したら、その体を失うことになるが、この場から逃すことを約束しよう」
イフリートは、勝手に話しをすすめている。いつからラスパのリーダーになったの?と私は心の中で呟やいた。
「イフリート、何を勝手に話しをすすめているんだ」
やはりトールさんがツッコんだ。
「トールさん、妖精はいたずらをする者はいますが、多種族に危害を加える者はいません。サンドマンもエルフに利用されて、ダークエルフになってしまったのです。悪いのは妖精ではありません。悪いのはエルフです」
「私もそう思いますわ。妖精は、エルフの力になってくれる素晴らしい友人です。しかしエルフが、妖精の扱い方を間違えると、このようなことになってしまうのですわ。なので、契約を解除してくれたら、サンドマンは逃げしてもらいないでしょうか?」
「そうですね。イフリートの言う通りだと思います。悪いのはサンドマンを利用したエルフと私も思うわ」
「わかったぜ。俺も賛成するぜ」
「皆さんの許可はもらった。サンドマンどうするのだ」
「・・・・この森の主であるワーウルフでさえ撃退する冒険者達だ。俺が勝てる相手ではない。長い間この体を利用させてもらって、愛着もあるのだが降参するぜ」
そう言うと、サンドマンはエルフの体から出ていき、姿を消して逃げていった。
サンドマンが、体から抜け出たのでダークルフは床に倒れ込んだ。
「こいつはどうなるのだ」
「一度ダークエルフになったものは、2度とエルフには戻れないわ。妖精の力がなくなったので、能力はエルフ自身のみの力になります。でも、紫色の皮膚は2度と元に戻ることはないわ。それがダークエルフになった代償でもあるのですわ」
「・・・・う・うう・・ここはどこなのだ」
ダークエルフは、目を覚ましたみたいだ。
「お前達は、誰なんだ?」
ポロンさんが、ダークエルフに近づき、これまでのことを説明してあげた。
「そうだったのか・・・」
「これで、あなたの復讐は終わりました。150年前の悲劇はそれは苦しいことだと思います。しかし、これ以上の復讐は私が許しませんわ。これからは、エルフとドワーフは150年前のように手を取り合って仲良く過ごすのですわ」
「・・・・・・」
ダークエルフは、ポロンの話をおとなしく聞いていた。そして、瞳には大粒の涙が頬をつたっていた。そして肩を震わせ、拳を握りじっと何かを堪えているようだ。
「あなたは、もしかして、王族の方ですか・・」
「そうですわ。私は、アルフヘイム妖王国の第三王女ですわ」
「やはりそうなのですか・・・私の姉上にそっくりなはずです。私は、とても愚かなことをしてしまったのです。姉上に合わす顔もありません・・・本当に申し訳ない・・・・」
そう言うと、ダークエルフは、さっきまで我慢していた、抑えきれない感情を吐き出して、大声で泣き出したのであった。
ダークエルフも、暗殺された王女も、王族のエルフであるので、ポロンさんと同じ血縁である。なので、ダークエルフの姉に似ているのは偶然ではない。
ポロンさんの説得により、ダークエルフの抱いていたドワーフへの復讐も、姉上が望んでいたものとは違うことを感じたのだろうか、また亡くなった姉上に似ているポロンさんを見て姉上に再び出会えた喜びで、涙が止まらなくなったのであろうか・・・それはダーエルフのみが知るのであった。
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