第346話 魔石国家ケルト王国編 パート16
僕は次の日、リヴァイアサンを連れて村長に家に向かった。村長の家は一際大きな屋敷なのですぐに見つけることはできた。
村長の屋敷の門には、屈強な兵士が2人立っていた。
「すみません。村長に合わせてください」
「見かけない顔だな!村長に何のようだ!」
兵士は鋭い眼光で睨みつける。
「井戸の水の件で話があるのよ」
リヴァイアサンが優しい笑みを浮かべながら兵士に答えた。
「これは、かなり上玉の女ではないか!村長に連絡してやろう」
兵士はニヤニヤといやらしい顔をして、屋敷の中に入って行った。
数分後。
「村長がお会いになるそうだ」
僕たちは兵士に連れられて、屋敷の中へ入って行った。
屋敷の中に入ると大きな応接室に案内された。応接室には豪華なソファーに光り輝く大理石のテーブルがあった。そして、1番大きなソファーに村長は腰掛けていて、村長を護衛する4人の兵士が村長の後ろに立っていた。
「ディラン様、連れてきました」
「ほほう・・・本当に絶世に美女だな」
村長の名前はディラン、中肉中背の無精髭を生やした中年の男性である。
ディランはニヤニヤと汚らしい目つきでリヴァイアサンを見ている。
「村の井戸の施設で毒を発生する魔石具を見つけました。これはあなたが井戸に置いたのですね?」
僕は村長に問いただす。
「それがどうした。お前には関係のないことだ!」
ディランはあっさりと認めた。
「村人が体調を壊して困っています」
「だからそれがどうしたのだ?体調を壊しても魔石具があるから問題ないだろ?この村の人間でない者には関係ないことだ。それよりも、そこの女!俺の妾にならないか?俺の妾になれば贅沢な暮らしができるぞ!」
ディランはリヴァイアサンを見てニヤニヤして、僕とフェニは完全に眼中にないみたいである。
「お断りします。あなたのような醜い心を持った男性には興味がありません」
リヴァイアサンは丁重にお断りする。
「何か勘違いをしているみたいだな。お前には選択肢はないのだ」
ディランは魔石具を手に取って、呪文のような言葉を唱えた。
「偉大なる神の力であの女の自由を奪いたまえ」
魔石具は青く光輝いてリヴァイアサンを包み込む。
「これは、従属の魔石具だ。お前は自分の意思では動くことはできない。これでお前は俺の物だ」
ディランは嬉しそうにニタニタと笑っている。
「私にはそんな魔石具は通用しないわ。それに、あなたの魔石具はもう存在しないわ」
「何を戯言と言っているのだ。お前は俺に逆らうことはできないはずだ。この魔石具の力を見せてやるわ」
ディランは従属の魔石具を握りしめた・・・
「???」
ディランは手に持っていたはずの魔石具がないことに気づいた。
「どこに落としたのだ・・・」
ディランは、あたりを見渡すが魔石具が見つからない。もちろん魔石具はバクが食べてしまった。
ディランがアタフタと床を這いつくばって魔石具を探している。
「お前らも探せ!」
応接室にいた4人の兵士たちは、ディランの命令により必死に魔石具を探す。
「どこにも見当たりません」
兵士が叫ぶ。
「そんなことはない。さっきまで俺の手の中にあったのだ。絶対に床に落ちているはずだ!」
ディランは怒鳴りつける。
「バクちゃん偉いねぇ〜」
「バクゥゥー」
フェニに褒められてバクは嬉しそうにしている。
「リプロ様、このままバクちゃんに魔石を食べさせますか?」
「いや、リヴァイアサンに任せよう」
僕は、地底湖を汚染させられて怒っているリヴァイアサンに、村長の処分を任せることにした。
「あとは、私に任せてね」
リヴァイアサンは、ディランの方へ歩いて行った。
「動くな!」
僕たちを案内してくれた兵士が、剣を抜き取ってリヴァイアサンを怒鳴りつける。
リヴァイアサンは指先から水球を作り兵士に放った。指先から放たれて水球は兵士の頭を覆い尽くす。水球に頭を覆い尽くされた兵士は息ができなくなりもがき苦しむ。
床に這いつくばって必死に魔石具を探しているディランは、今の状況を全く見ていない。
「早く魔石具を探せ!」
「いくら探しても魔石具はありませんよ」
「俺はお前のご主人様だぞ!魔石具は無くなったがお前は俺の奴隷だ」
「さっきも言いましたが、私には従属の魔石具は通用しないし、それ以前に魔石具はもうないわよ」
「黙れ!神のご意志により平伏しろ」
ディランは、魔石具の効力があると信じて、リヴァイアサンに平伏を求めるが全く効果がない。
「効果がないわよ」
「そんなバカな・・・兵士ども魔石具は後でいい!まずはあの女を拘束しろ」
しかし、兵士たちはすでにリヴァイアサンの水球によって、溺れ苦しんで失神している。
「あなた以外の者はすでに気を失っているわ。あなたが設置した毒の魔石具で苦しんだ人の痛みをあなたも受けるといいわ」
「待て、あれはグリシャがやったことだ。俺は最後まで反対したんだ。だから俺は全く悪くないのだ。そうだ!俺も被害者だ」
ディランは言い訳をするが、リヴァイアサンは全く耳を傾けずに水球を放った。ディランは水球に顔を覆われて苦悶の表情を浮かべながら失神した。
「リヴァイアサン、これからどうしますか?」
ディランの悪事を公にしたところで、腐りきっているケルト王国で罰を受けることはないだろう。ケルト王国では権力者が自分の私服を肥すことを積極的に応援しているからである。
「ディランは地底人の法で裁きます。あとは首謀者であるグリシャを探すだけです」
「ポーラさんの話では、グリシャはガリアの町にいると思います。一緒にガリアの町へ行きましょう」
僕たちは、グリシャを捕まえるためにガリアの町へも取ることにした。
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