第345話 魔石国家ケルト王国編 パート15
僕は門番から奪った鍵を使って、井戸の施設の扉の鍵を開けて中へ入った。中に入ると長い下り用階段があったので、僕たちは階段を下って行った。
「長い階段ですぅ」
フェニはため息をつく。
「そうだね」
長い階段は井戸の最下層まで続いていて、ようやく階段の終着点にたどり着いた。
「湖があるのですぅ」
階段を下り終えるとそこは地底湖になっていた。井戸の施設は地底湖から水を魔石具を使って組み上げているみたいである。
「喉が渇いたので、少し飲んでみるですぅ」
フェニが地底湖に近づいていく。
「フェニ、危ないからやめておいた方がいいよ」
「うーーん。でも喉が渇いてカラカラですぅー」
「フェニ、毒を発生させる魔石具を探すのが先だよ」
「でも、すごく綺麗な水ですぅ。飲んでも大丈夫そうですぅ」
フェニは地底湖に近づいて地底湖の水を手ですくおうとした。すると、地底湖から大きなドラゴンがあらわれて、フェニを食べてしまった。
「真っ暗ですぅ〜」
フェニはドラゴンの口の中で、悲しそうに言った。
『ヘルファイヤー』
フェニは魔法を使って、口の中を明るく灯した。
「バクちゃん、ここから出してください」
「バクゥウゥ」
バクはフェニの手元から離れて、ドラゴンの魔石に向かっていく。
『グボボッ』
ドラゴンは異変を感じてフェニとバクを吐き出した。吐き出されたフェニとバクは僕の目の前に落ちてきた。
「フェニ、おかえり」
「ただいまですぅ」
「バグゥゥ」
「あなた達がこの地底湖を汚染させた犯人ですか!」
ドラゴンは水色の長い髪をした美しい女性に変化して僕たちに声をかけてきた。
「違います。僕たちは、この井戸の調査に来たのです」
「あなたは・・・人間ではありませんね」
「そうです。詳しいことは言えませんが、この村の人々が毒で苦しんでいるので、井戸の調査に来ました」
「そうなのね。あなたの話を信じることにするわ。私は地底人の依頼を受けてこの地底湖の調査に来た竜人族のリヴァイアサンよ。この地底湖は地底人達の大事な水源でもあるの。最近地底人達が体調を壊しているので、竜人族に助けを求めに来たのよ」
「そうなのですか。毒を発生する魔石具がどこかにあると思います」
「そうね。私もそう思って地底湖の中を調べていたのよ。そしたら、怪しい人影が見えたので、てっきり、地底湖に悪さをした人間だと思って、口の中で拘束しようと思ったのよ」
「ごめんなさいですぅ。喉が渇いていたので水が飲みたかったのですぅ」
フェニはリヴァイアサンに頭を下げて謝る。
「こちらこそごめんね。怖い思いをさせてしまったわね」
「大丈夫です。バクちゃんもいるし、それにリプロ様がいるので何も怖いものはないのですぅ」
フェニは無邪気に笑った。
「私の体内で感じた恐ろしいオーラの持ち主がバクちゃんなのね」
「そうだと思います。バクは目でとらえる事はできません。そして、強大な魔力を持っていて、どんなところでも自由に移動することができます。なのであなたは危機を察知したのだと思います」
「それは恐ろしい魔獣ね。そんな魔獣を飼い慣らしているなんて、あなた達は何者なの?」
「それはお答えできません。僕は姉の難病を治す方法を探すために、この国を訪れているとだけお伝えします」
「そうなのね。お姉さんの状況を詳しく聞きたいけれど、まずはこの地底湖に毒を発生させている魔石具を探すの先決ね」
「はい。でも、もう大丈夫です。バクが見つけてくれたみたいです」
バクは魔石を食べる魔物なので、魔石の匂いには敏感なのである。魔石具は魔石を利用して作っているので、バクは簡単に毒の魔石具を見つけたのである。
バクは魔石具を食べずに、僕の手元に持ってきてくれた。
「バクありがとう」
僕はバクにお礼を言って魔石具の確認をした。これは間違いなく天界が関与していると思えるほどの高度な魔石具であった。軽度ではあるが絶えず毒を発生させて、地底湖の水を毒で蔓延させている。この地底湖の水を飲んだ者は、軽度の毒に侵されて体調を悪くしていると思われる。しかし、軽度な毒なので、治療魔法や毒消し草、毒を解除する魔石具によってすぐに毒の効果を消すことはできる。
「この魔石具は僕がもらってもよろしいでしょうか?」
「かまいませんよ。でも、その魔石具は誰が何の目的で地底湖に設置したのですか?」
「この村で異変が起きたのは、ガリアの町から移り住んできた魔石具屋のグリシャが来てからだそうです。しかも、体調を悪くした村人を救ったのは、グリシャが販売している魔石具のおかげだと聞いています。このことから考えると、グリシャが犯人だと思いますが、もしかしたら、グリシャを操っているのは村長かもしれません。村長はこの井戸を調べる事を反対していました」
「それは怪しいですね。これからどうするのですか?」
「朝にでも村長に家に行って事情を確認するつもりです」
「そうなのね。それなら私も着いて行くわ。大事な地底湖を汚した者を許すわけにはいかないわ」
「わかりました。それでしたら、この井戸の施設で明日の朝待っています」
「いえ、一緒に行くわ。今から宿屋に行くのよね。久しぶりに宿屋に泊まりたいわ」
こうして、僕はリヴァイアサンと一緒に宿屋に泊まることになった。
リヴァイアサンの人間の姿は、背が高くてスレンダーな女性だ。透き通る地底湖の様な水色の美しい髪はどこか神秘的な感じがする。そして、幻想的な紫の瞳はとても魅力的である。フェニは綺麗なお姉さんができたみたいで嬉しそうにしていた。
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