第286話 ホロスコープ星国 パート63


 「ポルさん、ポルさん・・・」



 私は必死に回復魔法をかけ続けた。



 「フェニちゃん・・・死んだ人は生き返れないのよ」



 ヴァンピーは、必死に回復魔法をかける私に悲痛な思いで声をかける。



 「まだ死んでいません」



 私は、リプロ様の言葉を信じている。リプロ様の声は幻聴だったのかもしれない。でも、私はその声を信じて回復魔法をかけ続けたのである。


 回復魔法の効果もあって、ポルックスの体にできた無数の傷跡は修復されて、流れ出る血も治った。しかし、ポルックスは目を覚ますことなく、死んだままであった。



 「フェニ王、あなたは何も悪くありません」



 レオが重たい口を開いた。



 「ポルさん、ポルさん、目を覚ましてよーーー」



 私は回復魔法をかけながら、大声で叫んだ。




 

 「私は生きているのですか・・・」



 ポルックスが目覚めたのであった。



 「ポルさーーーん」



 私が嬉しくて、ポルさんに抱きついた。



 「フェニさんが助けてくれたのですね」



 ポルックスは優しい笑顔で、私の頭を撫でてくれた。



 「生きててよかったですぅ〜」



 私の瞳からは涙が止まらないのであった。



 「ポルックス、何が起こったのか教えてくれないかしら?」



 ヴァンピーだけでない、レオ達も何が起こったのか知りたいのである。



 「ジェミニは、もう一つの『ゾディアックサイン』の能力『身代わり』を使ったのです」


 「『身代わり』とはどんな能力なのですか?」



 ヴァンピーが問う。



 「『身代わり』は、生涯に一度しか使えない能力です。双子の兄弟である私とジェミニは、命の危機が迫った時に、私とジェミニを入れ替わることができるのです。おそらくジェミニは、フェニさんに殺されると察知して、私と入れ替わって逃げたのでしょう」


 「ジェミニはまだ生きているのね」


 「そうです。しかし、『身代わり』の能力を使うと2週間は、能力を使えないので、おとなしくしているでしょう」


 「それなら、今のうちにジェミニを倒しに行きましょう」


 「それは、少し待ってください。ジェミニに少し考える時間を与えてください。私は、ジェミニに今まで自分のした愚かな国の統治で、どれほどの人が苦しんでいたか、理解してほしいのです。私はジェミニにやり直しの機会を与えてあげたいのです」


 「ジェミニは、あなたの命を犠牲にして、自分だけ助かろうとしたのよ。それでも、ジェミニにチャンスを与えるの?」


 「はい。私は、こうなるのはわかっていました。なので、ジェミニを説得するようにライブラにお願いしています」


 「ライブラは、改心したのね」


 「いえ、彼の『星の使徒』としてのプライドは高く、改心することはありませんでした。しかし、私の意図を伝えるようにお願いしています」


 「そうのなのね・・・ジェミニは今ライブラと一緒にカペラの町にいてるのね?」


 「いえ、違います。ドラキュンさんにお願いして、私とライブラをドラキュンさんの屋敷の倉庫で監禁してもらっていました。私と入れ替わったジェミニは、屋敷の倉庫で監禁状態になっているでしょう」


 「それなら安心ね。そしたら私たちは、これからどうすればいいのかしら?」


 「ハダルの町では、ジェミニ、ライブラ、そして、カプリコーンも合流するでしょう。ジェミニが改心してくれたらいいのですが、その可能性は低いと思います。フェニさんの強さ知ったジェミニは、『ホロスコープ星国』を捨てて、隣国の神守聖王国オリュンポスに亡命すると思います。なので、私たちは、フェニ王の誕生を宣言して、新たな国を作り上げることに専念しましょう」


 「革命は成功したのね」


 「そうです。ジェミニを頂点にした『星の使徒』による統治は滅んでのです」



 ポルックスの顔は晴れ晴れとしていた。



 「フェニ王、お疲れ様でした」



 レオは私に跪いた。



 「やっぱり私は王の器ではないですぅ〜」



 私は、王という堅苦しい立場に立つのは無理である。初めから、事がうまく進んだら断るつもりでいたのである。



 「あなたしか王の器の者はいません」



 レオが困り果てた顔で、私を説得するように言った。



 「確かにフェニちゃんには無理かもしれないわ」



 ヴァンピーが笑いながら言った。



 「待たせたわね。私の『魅惑」の時間がきたわよ」



 ヴァルゴ、スコーピオ、ノスフェラーが食堂に到着した。



 「ポルックス様・・・なぜここにいてるのですか?」



 スコーピオが困惑する。


 ポルックスは、今までの経緯を語った。



 「フェニさん、ポルックス様の命を救っていただいてありがとうございます」



 スコーピオは私に向かって深々と頭を下げた。



 「私の『魅惑』の出番はなかったのね・・・」



 ヴァルゴが肩を落として、しょんぼりとしている。



 「フェニちゃんが、王になるのを断ったのなら、誰がこの国の王になるのかしら」



 ノスフェラーが、ボソリと呟いた。



 「仕方がない・・・俺がなってやろう」



 食堂の窓からアリエルが姿を現した。


 アリエルは、状況が気になって、『空とぶ羊』の能力を使って、こっそりとシリウス城に戻ってきた。しかし、シリウス城に戻ってきた時には、私の手によって、ジェミニが倒されたいたので、どうしていいか分からずに、食堂の窓からこっそりと様子を伺っていたのであった。



 「こんな状況で出でくるとは、いい度胸だな」



 レオが睨みつける。



 「ちょっと待て、俺はもう争う気はない。詳しい話は盗み聞きさせてもらった。ジェミニがいなくなった今、この国を統治できる能力があるのは、俺しかいないはずだ。みんなの思いも俺と同じだと思っているぜ」



 アリエルは、この場の空気を全然わかっていないのであった。そして、速攻で、レオに捕らえられるのであった。




 

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