第287話 ホロスコープ星国 パート64


 「フェニちゃん、どうしても王になってくれないのですか?」



 レオは、私が1番王に相応しいと思っている。



 「フェニちゃん、俺たちの王になってくれ!」



 キャンサーもレオと同じ気持ちである。



 「ごめんなさい。軽はずみで王になると言ったけど、やっぱり子供の私が王になるのは、好ましくないと思うのです」



 私は、頭を下げて王になるのを断った。



 「フェニちゃんはまだ10歳よ。王になるよりも、学校に通った方がいいと思うわ」



 ヴァンピーは私の保護者視線である。



 「私は、フェニさんに王になってほしいと思っています。しかし、ヴァンピーさんの言うとおりだと思います。フェニさんはまだ、たくさん学ばないといけないこともあります。王になるために、学校に行くのも良いと思います」



 ポルックスは、ヴァンピーの意見に賛成である。



 「学校・・・行ってみたいですぅ〜」



 私は、パースリの町の孤児院では、兵士なる才能がないと判断されて、教育を受ける機会を奪われた。私も同じ年頃の子供と一緒に学校に行きたい。



 「わかりました。フェニちゃんが王になる件は、学校を卒業してからにしましょう」



 レオは、ポルックスの意見を尊重した。



 「俺も賛成だ」



 もちろん、キャンサーも同じである。



 「やっぱり俺が王になった方がいいのでは・・・」



 ロープで拘束されているアリエルが言う。



 「ポルックス様が1番がふさわしいと思います」



 みんなアリエルの言葉を無視する。そして、スコーピオがポルックスを推奨する。



 「私は『星の使徒』が王になること好ましくないと思っています」



 ポルックスの意思は堅い。



 「みんながなってほしい人が王になったらいいのですぅ〜」



 王になってほしいと言われて断った張本人の私が、適当なことを言った。



 「それだ!」


 「そうね」


 「確かにその通りですね」


 


 なぜか、みんなが私の意見に賛同した。



 「国民が望む者が王になる・・・なんて素晴らしい発想です」



 ポルックスが絶賛した。


 

 「確かにそれはいい考えだと思います。しかし、どうやって、国民が望む王を決めるのですか?」



 スコーピオが深く考え込む。



 「選挙という方式を取るのです」



 ポルックスが、スコーピオに選挙を提案した。



 「選挙とはどういうモノなのですか?」



 この国には選挙という概念はない。王は代々世襲であり、役職も全て王の判断で決まるのである。



 「選挙とは、王になりたい者が立候補して、その立候補した者を、国民たちに選んでもらうのです」


 「それは、面白いシステムだな」



 レオは興味津々である。



 「しかし、自己欲の強い者が王になったら、ジェミニと同じことをするのではないのか?」



 キャンサーは、選挙の危険性を訴えた。



 「確かにその可能性もあるでしょう。その危険を阻止する役割が『星の使徒』の役割だと思っています。『星の使徒』の能力は絶大です。『星の使徒』は、国が間違った方向へ進まないように、国を監視する機関として活動すべきなのです」



 ポルックスは自分の構想を説明した。



 「でも、『星の使徒』が王に加担したら、今と変わらないわよ」



 ヴァンピーがポルックスの構想の穴を指摘する。



 「その通りです。結局力の持つものが、自己欲に走れば、ジェミニの国の統治と同じことになるのです。なので、皆さんの意識の改善を図って欲いのです。一人一人が良い国を作る意識を持たない限り、どんなシステムを作っても結果は同じです」



 ポルックスは熱い思いをみんなにぶつけた。



 「大丈夫ですぅ〜。みんないい人なので、いい国になるのですぅ」



 またまた無責任な発言をする私であった。



 「ポルックス、俺はフェニちゃんの期待に応えたい。国民のための国の統治を俺に教えてくれないか?」



 レオは、忠誠を誓った私の期待に、こたえたいのである。



 「俺にも教えてくれ!」



 キャンサーも同じである。



 「私は、好きにさせてもらうわ」



 ヴァルゴは、笑顔でこの場を去って行った。



 「俺も改心するから、縄を外してくれ」



 助けをこうアリエルであったが、誰も相手にしない。



 「選挙・・・面白そうね。私が王になろうかしら?」



 ヴァンピーは、選挙に興味津々である。


 こうして、選挙によって王を決めることが決定した。


 そして、ポルックスは王都を守る兵士を集めて、ジェミニ王が王の座を退いたことを発表した。兵士たちは、ジェミニにより統治が終わったことに素直に喜んでいた。しかし、私が新しい王になると思っていたが、私が王になることを断ったことを知ると、兵士たちはかなりショックを受けていた。


 次にポルックスは、王都に住む国民たちへ、緊急声明を出した。


 緊急声明の内容は、もちろん、ジェミニが王を退いたこと、そして、選挙という方式で、新たな王を選出することである。


 緊急声明の内容は、レジスタンスと『星の使徒』によって、『ホロスコープ星国』全土に報告された。もちろんアケルナルの町の監獄にいる罪人は、ほとんどの者は解放された。解放されない者は、罪を犯した罪人たちである。


 アリエルとタラウスは、ポルックスに忠誠を誓って、レオの下で兵士として働くことになった。


 数日後


 王の選挙には、アダラの村長マテオ、レジスタンスのリーダーのワラキア、王国魔法師団の団長のヴァンピーなど、総勢10名の立候補者が名乗りを上げた。そして、選挙の結果、王になったのはヴァンピーであった。





 


 

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