第320話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート32


 投げつけられた棍棒は、黄金に輝いて私に向かって飛んでくる。



 『ライトシールド』



 私は再び光のシールドを張った。



 「無駄だ。俺の最大限の魔力を込めた神の鉄槌を防ぐのは不可能だ」



 黄金に輝く棍棒が私の『ライトシールド』激しくぶつかり、一面が目を開けることができないほど光り輝く。



 「なぜだ・・・」



 アトラースはうなだれるように跪く。


 巨大な棍棒は、私の『ライトシールド』にはじかれて、粉々に砕けたのであった。



 「プロメーテウスの力のが俺より強いのか・・・」


 

 アトラースは悔しそうに地面を叩きつける。



 「そうみたいですね。次は私が攻撃してもいいですか?」



 防戦一方では、勝負にならないので、私も攻撃を仕掛けることにした。



 「わかったぞ。お前は防御に特化したタンク職だな。それなら少しは納得がいく。お前は、プロメーテウスから、防御に特化した能力を授かったに違いない。俺をてこずらせるとは、プロメーテウスもいい素材を見つけたものだ。しかし、カラクリがわかれば俺にも考えがある。これだけは使いたくはなかったのだが、プロメーテウスのおもちゃに俺が苦戦したのがバレるわけにはいかない。もう少し遊んであげても良かったのだが、今すぐに殺してやるぞ」


 

 私は、神人がどれくらい強いのか知りたいので、ここは大人しく最後までアトラースの話を聞いて、アトラースの持てる力を全て把握することにしたのである。



 「さすが、神人ですね。私が授かった能力を見破るなんて驚きました」



 私はカタコトの日本語を喋るように棒読みで言った。



 「俺の凄さを思い知ったか!」



 私の棒読みのセリフに嬉しそうにするアトラースであった。



 「あなたの凄さはわかりましたが、防御に特化した私をどう倒すつもりですか?」


 

 私はアトラースの手の内を探るように挑発した。



 「心配するな。どんなに防御が特化した相手でも、簡単に斬り殺せる剣を俺は持っているのだ」



 ニヤニヤしながらアトラースは私を見ている。



 「そんな剣あるのですか?」


 「焦るな!今から見せてやるぞ」



 アトラースは、右手を上げて空間から剣を取り出した。



 「これは天界の7秘宝の1つ神殺しの剣『ロンギヌス』だ」


 「神殺しの剣!!!」



 私はアトラースを喜ばすために大げさに驚いてみた。



 「驚くのも無理はない。人界では幻の秘宝と呼ばれる神聖なる剣だ。この剣の前では神さえも恐れ慄いて、おしっこを漏らすとさえ言われている」


 「神殺しの剣・・・本当にあるのですね」


 「ああ、俺はこの天界の7秘宝の1つ『ロンギヌス』をとある神から預かっていた。まさか、使うことが来るとは思ってもいなかったぜ」


 「私はその剣で殺されてしまうのですね」


 「ようやく自分の状況を理解できたのか・・・でも、もう遅い。お前は、ここで死んでしまうのだからな。しかし安心しろ。神人に殺されるのは名誉なことだ」



 嬉しそうにアトラースは言った。



 「光栄でございます」



 私はアトラースをご機嫌をとる。



 「死ね!」



 アトラースは『ロンギヌス』の剣を振りかざした。


 私の張っている『ライトシールド』が真っ二つに割れた。



 「すごい切れ味だぜ」



 私の『ライトシールド』を切り裂いてアトラースは上機嫌になった。



 「次はお前の番だ」



 アトラースはカッコつけるために、無駄にジャンプをして、宙返りをしながら私に『ロンギヌス』の剣を振り下ろした。



 『ポキン』



 私は親指と人差し指で『ロンギヌス』の剣を掴んで、軽く力を入れて、『ロンギヌス』の剣を粉砕した。



 「・・・」



 アトラースの顔は驚きと絶望と悲しみで、ムンクの叫びのような顔になった。



 「これは偽物ですね」



 私は7大天使様が持ってきた天界の本で、天界の7秘宝のことを読んだことがあった。天界の7秘宝の1つ神殺しの武器『ロンギヌス』は、神を殺すことのできる槍である。アトラースが持っていたのは剣なので、すぐに偽物だとわかった。


 私はアトラースを喜ばせるために、わざと『ライトシールド』を壊したのである。



 「・・・」



 アトラースは言葉を発することができない。



 『ディメンション』



 私は闇魔法の『ディメンション』を使った。『ディメンション』とは異空間に閉じ込める闇魔法である。闇魔法は魔族しか使えない魔法である。


 黒い大きな手が空間から出てきて、アトラースを捕まえて空間の中へ連れ去って行った。アトラースは抵抗することなく異空間に連れ去れて行った。



 「これで終わりです」



 私は、神人の悪行を7大天使様に報告しよと思ったので、アトラースを殺さずに異空間に閉じ込めることにしたのであった。



 「ルシス様、大丈夫ですか?」



 シューは、私たちの戦闘に巻き込まれないように、遠くに離れていた。



 「大したことなかったです」



 私はニコリと笑った。



 「あなたは何者なのですか?」


 「通りすがりの冒険者です」


 「わかりました。そういうことにしておきます」



 シューは、詮索することを辞めた。そして、シューは誰に聞かれても、私のことは通りすがりの冒険者と説明することにしたのである。



 「アトラースは死んだわけではないですが、精神が崩壊して敗北を認めたはずです。私が皆さんの呪いを解除しなくても、もう呪いは解除されたはずです」


 「そうなのですか。これで、みんなの呪いも解除されるのですね」



 シューは嬉しそうに微笑んだ。



 「おーーーい!ルシス様。私はあなたのこと信じることにします」



 大きく手を振りながら、ドラゴンに乗ってアトゥムが私たちのところへやってきた。





 

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