第311話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート23


 ⭐️竜騎士視線になります



 「こいつをうまく利用して、今回こそは絶対に成功させるぞ」



 テフヌトは力強く言った。



 「そうだな。今回も失敗すると、また150年待たないといけないからな・・・」



 イシスは強く拳を握りしめる。



 「テフヌト、ウルフキングを倒したのか?」



 セトは驚いている様子であった。



 「いや、俺たちが倒しに行った時には、すでにウルフキングは力尽きて倒れていた。ラードーンとの戦いでかなりの魔力を消耗したのだろうよ」


 「そうだったのか・・・それで、ウルフキングを使って『オリュンポス国』を滅ぼすのか?」


 「当初の計画通り作戦を実行する。ラードーンは死んだが、代わりにこいつを使って『オリュンポス国』を滅ぼす」


 「やっと、俺たちの呪いが解けるのか・・・」


 「そうだ。これで、俺たちは『ヘリオポリス島』から解放されるのだ」



 テフヌトは嬉しそうに述べた。



 竜騎士族は元々は普通の人族であった。しかし、神人から力を授かり、竜(ドラゴン)を操る能力を手に入れることができた。竜を操る能力『支配』により、魔獣と会話できるようになり、またドラゴンから能力を吸収して、寿命を伸ばすことができるようになった。しかし・・・大きな力を得た代わりに大きな代償を支払うことになったのである。


 それは、自由に行動できなくなったのである。人族から竜騎士族になったある村の村民たちは、村を捨てて、『ヘリオポリス島』に住むことになる。竜騎士族は、『ヘリオポリス島』以外では生活できない呪いをかけら、人界では生活ができなくなったのであった。しかし、完全に人界で生活できないのではなく、4時間程度なら、人界へ降りることができるが、4時間を経過すると、魔力が消耗していき、魔力を完全に失うと死んでしまうのである。


 そして、その呪いを解く方法が一つだけあるのである。それは、ネテア王妃が持つ『裁きの力』によって、呪いという能力を消し去ることだできるのであった。それならば、ネテア王妃にお願いして、呪いを消し去って貰えば良いと思うが、それでは、呪いを消し去ることはできないのである。竜騎士族の呪いを消し去るには、竜騎士族が呪いを消し去らないといけないのである。ネテア王妃は人族なので、竜騎士族の能力を消し去ることはできないのであった。


 なら、どうすれば、呪いを消し去ることができるのであろうか?それは、ネテア王妃の能力を手に入れたらいいのである。そして、ネテア王妃の能力を使うことができるのが竜の巫女である。


 ネテア王妃の能力を手に入れるのはどうしたらいいのか?というと、それは、ネテア王妃みずから、能力を授けると宣言しないといけないのである。なので、殺して奪ったっり、脅して奪うことはできないのである。


 そこで竜騎士族は、魔獣を使って『オリュンポス国』を滅ぼして、滅ぼされた『オリュンポス国』を助ける事で、『オリュンポス国』に恩義を売る作戦を思いついたのである。この作戦は、ネテア王妃など王族だけを助けて、恩義を得て、尚且つ滅びた『オリュンポス』国を竜騎士族が乗っ取るという、二つの意味合いが含まれているである。


 この作戦は、150年前にルシスの父である魔王カイザーの手によって、偶然にも阻まれてしまった。そして、それから150年経った今、ルシスの手によって阻まれそうになっているのである。



 「テフヌト様、竜の巫女が生まれました」


 

 血相を変えて、兵士がテフヌトの元へ駆け寄ってきた。



 「ついに誕生したのか。これで、俺たちの悲願が達成するぞ」


 「そうだな。手始めにディービルの森の魔獣たちを送り込むか!」


 「そうだな。最近『オリュンポス国』では内戦があって、国力が疲弊しているに違いない。ウルフキングの説得は後にして、まずは魔獣の大群を首都ジンジャーに送り込むぞ」


  

 竜の巫女は、いつでもネテア王妃の能力を授かることができるわけではない。生まれたから1年以内でないと力を授かることができないのである。なので、早急に『オリュンポス国』を滅ぼしたいのである。



 「シューを、すぐにディービルの森へ向かわせるぜ」


 シューとは竜騎士の1人で大柄な無愛想な男である。イシスの指示により、シューは急いで、ディービルの森へ向かった。



 「あとはこいつが意識を取り戻すのを待つだけだな」


 「そうだな。しかし、こんな狼が本当にラードーンより強いのか?」



 イシスが疑問に思う。



 「魔力を使い果たしているからわからないが、ラードーンが殺されたのは事実だ。こいつの魔力が戻ってきたら、真相が明らかになるだろ」


 「そうだな」


 「なんだ・・・この恐ろしい魔力は!!!」



 テフヌトが悲鳴を上げるように、急に大声で叫んだ。



 「頭が割れそうに痛い・・・。どこからこの恐ろしい魔力を感じるのだ」



 イシスも頭を抑えて叫び出した。



 「外からだ。この島の周辺に誰か現れたのだ」



 テフヌトが怯えている。



 「アトラース様が来られたのでは・・・」



 イシスが震えながら言った。


 アトラースとは、神人の1人であり、竜騎士族に力を与えた張本人である。『ヘリオポリス島』の結界を張ったのもアトラースである。



 「俺たちの計画を見にきたのか・・・」


 「かもしれない。あの計画を考えてくれたのはアトラース様だしな」



 『ドスン』



 テフヌトとイシスの前に、可愛い天使のような女の子が舞い降りてきた。

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