第310話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート22


 「ごめんなさいなのだぁ」



 ゲリはホットドッグに謝る。


 ゲリのベアハッグの餌食になって、気を失ったホットドッグを、私はすぐに回復魔法を使って治療してあげた。



 「気にしないでください。油断していた私が悪いのです」



 命の恩人であり、フレキの妹であるゲリに文句へ言えないのである。



 「今から、フレキ様を助けに行くのですか?」


 「うん」



 ゲリは満面の笑みで返事をした。



 「私も一緒にフレキ様を救いに行きたいのですが、邪魔になりますので、このドラキュラ城でお待ちしてます」



 ホットドッグは、一緒に行きたい気持ちを抑えた。ホットドッグは竜騎士と戦えるほど力がないのを自覚している。



 「私がお姉ちゃんを助けるのだぁ」



 ゲリは力強くホットドックに伝えた。



 「ゲリちゃん、フレキさんを助けに行くよ」



 フレキさんを連れ去ったのは、ドラゴンに乗った兵士である。私は、魔王書庫にて監禁されていた時に、魔王書庫にある膨大な本を全て読み終えた。なので、色々な知識を吸収している。


 ドラゴンに乗った兵士とは、竜騎士のことであると私は思った。そして、竜騎士は、『ヘリオポリス島』と言われる空を浮遊する島に住んでいる。なので、『ヘリオポリス島』を探すことにした。


 フレキさんを連れ去って、それほど時間は経過していないので、上空に飛んで魔力感知をすれば、すぐに見つかると私は考えていた。


 私は小さい狼になったゲリを可愛いペットバッグに入れて、上空へ飛び立った。


 フレキさんのことが心配なので、私はすぐに魔力感知を発動させた。


 

 「おかしいです。魔力が感知しないです」


 「お姉ちゃんどこにいるのだぁ」



 ゲリは悲しそうな声を出す。



 「もしかしたら、結界を張っているのかもしれません」



 フレキさんを連れ去ってそれほど経過していない。なので、全速力で上空を飛行する私の魔力探知に反応しないのはおかしいのである。だから、私は、『ヘリオポリス島』は見つけられないように結果を張っているのだと推測した。



 「ルシスちゃん・・・どうするのだぁ」


 「問題ありません。ガブリエル様に授かった能力を使います」



 7大天使様の1人ガブリエル様から授かった能力は『神の言葉、神へのメッセンジャーの力』である。この能力は、相手を洗脳したり、テレパシーを使える力である。私はこの能力をさらに改良を重ねて、相手の声をどんなに遠くに離れていても、聞き取ることができる『盗聴』の能力に改変したのである。


 私は、能力を発動して、周辺の声を感知する。


 様々な会話が私の耳に届いてくる。



 「違います」「これも違います」「これでもありせん」



 私はたくさん聞こえてくる会話を全て確認しながら、フレキさんのことを話している会話を探し続けた。



 「これです」



 私はフレキさんのことを話す会話を見つけることに成功した。そして、すぐにその会話をしている場所を突き止めた。


 しかし、私の完璧な魔力探知を防ぐことのできる結界を張っている竜騎士には、慎重に行動しないといけないと思っていた。


 私はこれまで、油断をしていたわけではないが、圧倒的な実力差によって、この異世界で無双を繰り返していた。しかし、今回は、いつもより慎重に行動しないと危険なのではないか?と思っていた。



 「ゲリちゃん、フレキさんを連れ去った竜騎士の居場所がわかりました」


 「すぐに助けに行くのだぁ」



 ゲリはペットバックの中で全速力で走るが、全く意味がない。



 「ゲリちゃん、落ち着いて。竜騎士はかなり手強い相手になるかもしれないのです。慎重に行動しましょう」



 私はゲリをなだめるように言った。



 「わかったのだぁ」



 ゲリは、素直に言う事を聞いてくれた。


 私は、会話が聞こえた方向へ全速力で飛行した。



 会話のするところへたどり着いたけど何もない・・・



 「この辺です」


 「何もないのだぁ」



 ゲリはしょんぼりとする。


 

 「結界で島の存在を隠しているのです。どこからか入ることができる入り口が必ずあります。入り口を探します」



 私は再び魔力感知を発動した。しかし、全く反応しない。



 「反応がないです」


 「お姉ちゃん・・・」



 ゲリはお姉ちゃんが心配で泣き出しそうである。



 「少し本気を出します」



 私は慎重に行動していたので、自分の存在が気付かれないように魔力を抑えていた。しかし、完璧な結界の前に、入り口を見つけることができない。なので、私は抑えていた魔力を少し解放することにした。



 「ゲリちゃん、少し魔力を放出するので、我慢していてください」


 「わかったのだぁ」


 ゲリは攻撃を無効化する『鉄壁』のスキルと持っている。しかし、私が制御していた魔力を放出すると、近くにいるゲリにも負荷がかかるので、注意を促した。


 

 「ヨイショーーー」



 私は制御していた魔力を少し解放した。私の周りに黒いオーラが発生する。


 しかし、魔力感知を試してみるが、入口は見つからない。



 「ヨイショーーーー」



 さらに魔力を解放した。


 あたりは私の黒いオーラで、綺麗な青空が、真っ暗な素敵な暗闇に変わる。



 「見つけました」



 私は、魔力感知で、結界の僅かな隙間を見つけることができた。



 「ゲリちゃん、竜騎士の島に潜入します。覚悟はできていますか?」


 「うん」


 

 ゲリは鋭い闘志をむき出しにして、返事をするのであった。

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