第309話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート21


⭐️ルシス視点に戻ります。



 「早くお姉ちゃんに会いたいのだぁ」



 ゲリは軽快に飛ばして、王の森へ向かっている。



 「そうね。早くお姉ちゃんに会えるといいね」



 私はゲリに乗せてもらって心地よい風を感じながら、早くゲリがお姉ちゃんに会えること願っていた。


 王の森への行き道は、ヴァンピーが正確な地図をくれたので、迷うことなく着くことができる。なので、数時間後には、王の森へ着くことができたのであった。



 「このあたりが王の森です」


 「お姉ちゃーーーん」



 ゲリは王の森にたどり着くと大声で叫んだ。


 しかし、返事は返ってこない。



 「お姉ちゃんがいないのだぁ」



 ゲリは悲しそうな顔をする。



 「ゲリちゃん、フレキさんは、この森の奥にいるはずです。なので、森の奥へ進みます」


 「わかったのだぁ」



 ゲリは、気を取り戻して、王の森の奥へと進んでいく。


 王の森の奥へ進んで行くと、大きなお城が見えた。



 「ゲリちゃん、お城が見えます。もしかして・・・フレキさんがいるかもしれないです」


 「お姉ちゃーーーん」



 ゲリは大声で叫びながら、お城の方へ向かっていく。


 お城に辿り着くと、お城の前で1匹の魔獣が倒れ込んでいた。



 「ホットドックに似た魔獣が倒れています」



 私は、倒れている魔獣が、私が転生する前に住んでいた世界の食べ物に似ているので、驚きを隠せない。



 「ホットドック?知らないのだぁ」



 もちろんこの世界にはホットドックはないし、そして、ゲリの住んでいる神界にも存在しない。



 「私の名前を呼ぶ・・・の・・は・・誰のだ・・・」



 ホットドックという言葉に反応して魔獣が何か言葉を発した。



 「ゲリちゃん、魔獣が何か言っているみたいです。なんて言っているのか、確認してください」



 私は魔獣の言葉はわからない。でも、ゲリなら魔獣と話すことができるのである。



 「わかったのだぁ」


 「魔獣さん、今なんて言ったのだぁ」


 「私の名前を・・呼んだのは・・あなたですか?」


 「呼んでないのだぁー」


 「そう・・なの・・・ですか・・。あの・・お願い・・が・・・あるのです・・が・・もし魔法を使え・・えるのでしたら・・・私を・・・治療してくだい」


 「治療をしたらいいのだ?」


 「お願い・・します」


 「ルシスちゃん、この魔獣は治療してほしいと言っているのだぁ。どうするのだぁ」


 「うーーーん」



 私は考えた。私にとって魔獣とは、町などを襲う外敵である。なので、魔獣を助ける義理はない。しかし・・・この森にはフレキがいるはずなのである。もしかしたら、このホットドックに似た魔獣が、フレキの居所を知っているかも知れない。と私は思ったので、この魔獣を治療することにした。



 「もしかしたら、フレキさんの居場所を知っているかもしれないので治療します」



 『リフレッシュ』



 私は治癒魔法を使って、魔獣を全回復してあげた。



 「ゲリちゃん、フレキさんのことを知っているか、確認してください」


 「わかったのだぁ」



 ゲリは大きく返事をした。



 「狼の魔獣さん、私を治療してくださってありがとうございます」



 ホットドックは頭を下げてお礼を言った。



 「治癒してくれたのはルシスちゃんなのだぁ」


 「そうなのですか。ルシスさん、本当にありがとうございます」



 ホットドックは私に頭を下げてお礼を言うが、私には、何を言っているのわからない。



 「私はお姉ちゃんを探しているのだぁ。お姉ちゃんはどこにいるのだぁ」


 「お姉ちゃんと言われても、わかりません。あなたのお姉ちゃんはどのような姿をしているのですか?」


 「お姉ちゃんは、きれいな白い毛並みの美しい狼なのだぁ。そして、人型でもすごく美人なのだぁ。さらにお姉ちゃんはとても強いのだぁ」



 ゲリは自慢げに言った。



 「もしかして、フレキ様のことですか?」


 「そうなのだぁ」



 ゲリはなんと!お姉ちゃんの名前を覚えていたのであった。



 「申し訳ありません。フレキ様はここにはいません。フレキ様はラードーンとの戦いで体力を消耗してしまい、倒れ込んでしまいました。そして、私がフレキ様をドラキュラ城に運ぶ途中に、ドラゴンに乗った兵士が、フレキ様を連れて行きました。私は必死にフレキ様を守ために逃げたのですが・・・私の遅い足では、逃げることはできませんでした」



 ホットドッグは涙を流しながら、ゲリに謝罪したのである。



 「兵士はどこへ行ったのだぁ」



 ゲリの顔が急変した。いつもニコニコしているゲリの顔が、険しい顔になっているのである。



 「ドラゴンに乗って、上空へ飛んで行きました。なので、どこへ行ったのかわかりません」



 ホットドッグは申し訳なそうに頭を下げた。



 「ゲリちゃん、何かあったの!」



 私はゲリの急変した顔を見て、フレキに何かあったのかと察知した。



 「お姉ちゃんが連れ去られたのだぁ」



 ゲリは、思い詰めた表情で私に言った。



 「誰に連れ去られたの?」


 「ドラゴンに乗った兵士なのだぁ。空に逃げたのだぁ」


 「ドラゴンに乗った兵士なのね。そして、フレキさんを連れて、空に逃げたのね」


 「そうなのだぁ。早く助けに行くのだぁ」



 ゲリは大地を蹴って、大きくジャンプするが、空を飛ぶことはできない。



 「早く助けに行くのだぁ」



 ゲリは何度も大きくジャンプするが、空を飛ぶことはできない。



 「ゲリちゃん、落ち着くのよ。ゲリはちゃんは飛べないよ」



 私は諭すように言った。



 「お姉ちゃんが・・・お姉ちゃんが・・・」



 ゲリは激しく動揺している。



 「ゲリちゃん、私は自由に空を飛ぶことができます。なので、子犬サイズに変身してくれたら、ゲリちゃんを連れて、フレキさんを取り戻しに行きましょう」


 「ルシスちゃん、ありがとうなのだぁ」



 ゲリはお姉ちゃんを探しに行けるとわかってとても嬉しかった。そして、お約束のベアハッグをするために、私に抱きついてきた。もちろん、私はさらりと避けてしまう。


 

 「グギャーーー」



 ホットドックの悲鳴が、王の森に響くのであった。

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