第308話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート20
⭐️竜騎士テフヌト視線になります。
「ラードーンの支配する王の森はどのあたりだ」
テフヌトは、赤いドランゴに乗って上空を飛行している。
「南西の方にある大きな森が、ラードーンの支配する王の森だ。もうすぐ着くだろうぜ」
イシスは青いドラゴンに乗っている。竜騎士は、ドラゴンを召喚する能力がある。なので、自分専用のドラゴンを持っている。
「セトは、かなりウルフキングにビビっていたな」
「そうだな、あいつはまだ若いからな」
竜騎士は、人間と違い寿命がエルフのように長い。それは、ドラゴンから能力を吸収して、寿命を伸ばすことができるからである。なので、高齢であればあるほど、たくさんのドラゴンから能力を吸収しているので、強いのである。
テフヌトは220歳であり、イシスは210歳である。そして、セトは45歳なので、竜騎士では、まだまだ若いのである。
「しかし、ラードーンが死んでしまったのなら、代わりのドラゴンが必要になるのではないのか?」
「そうだな。もう時期、竜の巫女が誕生する頃だ。早く作戦を進めないと、『ヘリオポリス島』の呪いから解放されないぞ」
竜騎士は、好きで『ヘリオポリス島』にいるわけではない。ある理由があって、『ヘリオポリス島』にいるのである。
「王の森に着いたぜ。代わりのドラゴンよりまずは、ラードーンを倒したウルフキングの実力を確かめるとするか」
「そうだな」
俺は、ドラゴンから降りて、王の森に侵入した。
「確か、ヴァンパイヤの城の近くが、ラードーンの住処と聞いているぞ」
「あれではないのか?」
ドラゴンから降りて、少し歩くと、大きなお城が見えてきた。
「間違いない。あれが、ヴァンパイヤの城だ」
「おい、ラードーンの死骸があるぞ」
ヴァンパイヤ城の近くには、フレキによって倒されたラードーンの死体が転がっている。
「この大きだだと、完全に力が戻っているはずだぞ」
俺たちは、150年前にラードーンを使って、『オリュンポス国』を滅ぼそうとした。なので、完全体のラードーンの姿を知っている。
「それなら、ウルフキングはラードーンより強いというのか?」
「その可能性が高いぜ」
「それなら、ウルフキングをラードーンの代わりに使えないか?」
「俺も今それを言おうとしていたところだ。ラードーンの代わりになりそうなドラゴンは、八岐大蛇か虹蛇しかいないだろう。しかし、八岐大蛇は何者かによって封印さえれたと聞いている。そして、あの巨大な蛇のドラゴン虹蛇は、何者かによって、殺されたと情報が入って来ている。ラードーンの復活が間に合わなければ、八岐大蛇か虹蛇を使う予定だったが、それも困難になってしまった」
『ラスパ』の活躍が、思わぬところで打撃を与えていたのである。
「ウルフキングとうまく交渉して、俺たちの味方につけないとな」
「それは問題ない。ウルフキングは、ラードーンや八岐大蛇と違ってただの魔獣だ。魔獣など知性のかけらもない低脳な生き物だ。操るのは簡単だ」
テフヌトは見下すように言った。
「そうだな。あいつらは餌を与えれば、すぐに言うこと聞く低脳な生き物だ。ラードーンも、扱いやすくて、使い勝手が良かったのにな」
「そうだな。ドラゴン族や魔獣は、俺ら竜騎士族の下僕にすぎないからな。ガハハハ」
ラードーン、八岐大蛇、虹蛇は魔獣と言われているが、正確に言えばドラゴン族である。一方以前登場したメデュー、ステン、エウリのドラゴン三姉妹は竜人族なので、違う種族なのである。
「テフヌト様、ラードーン様が殺されてしまいました。私はどうしたらいいのですか・・・」
俺に助けを求めてきたのは、オルトロスという二つの頭を持った犬の魔獣である。
「お前は誰だ!ラードーンの配下の物か?」
竜騎士族は魔獣と会話ができるのである。
「はい。一度テフヌト様ともお会いしたこともあります」
「悪いな。俺は魔獣の顔などいちいち覚えていない」
「全然構いません。それよりもラードーン様が死んでしまったので、ウルフキングを恐れて、魔獣達は王の森から逃げて行きました」
「それは困るな。お前ら魔獣達には、存分に暴れてもらう予定だったのにな」
「そうだったのですか・・・しかし、ウルフキングは圧倒的に強かったのです。魔獣王であるラードーン様を簡単に倒してしまったのです。あの強さは・・・」
『グチャ』
肉が砕ける鈍い音がした。
「くだらん」
俺は、つまらない話をするオルトロスの頭を剣で切り裂いた。
「テフヌト、殺してもよかったのか?」
「問題ない。このあたりの魔獣はウルフキングをビビって使い物にならん。『オリュンポス国』を滅ぼす時は、ディービルの森の魔獣を使うことにするぜ」
「そうだな・・・おい、テフヌト、ヘンテコな魔獣が白い狼を担いでいるぜ」
ホットドッグは、倒れたフレキを担いで、王の森にあるヴァンパイヤ城を目指していた。
「あの狼は・・・もしかしたらウルフキングかもしれないぞ」
「確かめてくるぜ」
イシスはホットドッグに近づいて行った。
「お前達は誰だ!」
ホットドックは、見知らぬ2人の騎士を見て動揺している。
「その狼はウルフキングなのか?」
イシスが、鋭い眼光で睨みつける。
「違う。ただの狼の魔獣だ」
ホットドッグは、危険を察知して嘘をつく。しかしホットドッグは動揺して、多量の汗をかいている。
「テフヌト、あの狼は間違いなくウルフキングだ。ラードーンとの戦闘でかなりの体力を消耗したのだろう」
「そうみたいだな。ウルフキングを奪って、『ヘリオポリス島』に戻るぞ」
「わかったぜ」
俺たちは、あのヘンテコな魔獣から、ウルフキングを奪うことにした。
「そんなことはさせないぞ!」
ホットドッグは、全力を振り絞って颯爽と逃げ出した。しかし、ホットドックの遅い足では、逃げることは不可能であった。
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