第263話 ホロスコープ星国 パート40


 レオとキャンサーは、サジタリウス達の元へ行く前に、一旦私のところへやって来た。



 「フェニちゃん、お疲れ様です」



 レオがライオンの姿で頭を下げる。



 「ライちゃん、迎えてに来てくれたのですか」



 私はにこやかに言った。



 「到着が遅れていたみたいなので、心配になって関所に来ていました」


 「ライちゃん、遅くなってごめんね。ベガちゃんのダイエットに付き合っていたら、遅くなってしまいました」



 私は素直に謝った。



 「気にしておりません。フェニちゃんが無事なら何も問題ありません。しかし、ジェミニの部下が、フェニちゃんを尾行しているみたいです」



 レオの表情は一変して、険しい顔になった。



 「尾行しているのは、弓の名手サジタリウスに、水系のスペシャリストピスケスです」



 キャンサーが説明した。



 「そうなんだ。全然気づかなかったですぅ〜」



 全然危機感のない声で私は言った。



 「サジタリウスの尾行は完璧です。私はたまたま高台にいて、サジタリウス達の存在に気づきました。サジタリウスの『超ソゲキ』は危険です。暗殺される前に、退治いたしましょう」



 レオは、そう言うとサジタリウス達のところへ駆け出して行った。



 「私もついて行きます」



 私はベガちゃんから、キャンサーに乗り換えて、『高速横走り』でレオの後を追いかけた。


 キャンサーは、私を肩車して嬉しそうにしていた。一方ベガちゃんは、休息タイムだと思って、地面に座り込んでお昼寝を始めたのであった。



 「サジタリウス、ピスケス、なぜフェニちゃんを尾行している!」



 レオは、サジタリウス達の前に立ちはだかり、威嚇するように言った。



 「お前達こそ、その女の子をどうするつもりだ」



 サジタリウスは、私に危機が訪れたと思って、激しく怒っているのである。



 「フェニちゃんは、俺の仲間だ!」



 レオは、勇ましい態度で言った。



 「俺たちはあの子のスーパーヒーローだ」



 サジタリウスは、胸を張って高らかに言う。



 「俺もだぜ!あの子に危害を加えることは『見守り隊』として、絶対に許さない!」



 ピスケスはレオを睨みつける。



 「スーパーヒーロー?『見守り隊』・・・どういうことだ???」



 レオは少し混乱している。



 「あっ!この前は、ベガちゃんを助けてくれてありがとうございますぅ」



 私は、サジタリウス達の姿を見て、すぐさまお礼を言ったのであった。



 「フェニちゃん、サジタリウスのことを知っているのですか?」



 レオは、驚きの表情で私を見ていた。



 「ベガちゃんの命の恩人ですぅ」



 私は、サジタリウスとピスケスに、ベガちゃんを助けてもらった経緯を説明した。



 「サジタリウス、ピスケス・・・疑ってすまなかった」



 レオは素直に謝った。



 「俺はスーパーヒーローだ。そんな細かいことは気にしない」



 サジタリウスは空も見つめながら、詩人のようにつぶやいた。



 「そうだぜレオ。スーパーヒーローとは、人知れず誰かを助けるものだ。なので疑われても何も気にしないぜ」



 ピスケスも、ヘンテコなポーズを決めながら言った。



 「しかし、アリエルの邪魔をして、これからどうするのだ?」



 キャンサーが心配そうに言った。



 「俺たちはスーパーヒーローだ。俺たちの助けを必要とするその女の子の『見守り隊』として、これからは、活動して行くつもりだ」



 ピスケスは、誇らしげに言った。



 「それは素晴らしいことだ。俺たちも『見守り隊』に入らないか?」



 キャンサーがレオに言った。



 「それはいい案だ。俺たちは、フェニちゃんに忠誠を誓ったが、何をするかは特に決めていない。俺たちもサジタリウス達のように、強い意志を持って、行動を起こさないといけないな」



 レオは、サジタリウス達の強い覚悟に感動しているのであった。



 「歓迎するぜ」



 ピスケスは快く承諾した。



 「フェニちゃん、こいつらも仲間にしてもらってもいいかな」



 レオは私の許可を得ようとしている。



 「いいですよ」



 私は、ベガちゃんの命の恩人を快く仲間に迎え入れることにしたのであった。しかし、私と共に冒険するパーティーとは違い、あくまで私をサポートしてくれる『見守り隊』なのである。



 「カペラの町へ戻りましょう」



 私は、当初の目的であるカペラの町へ向かうことにした。なので、のんびりと寝ているベガちゃんを起こして、関所を通過することにした。



 ベガちゃんは、もう少し寝たい気持ちをグッと我慢して、私を乗せて、関所に向かった。



 「関所を通してください」



 私は、大声で関所の兵に言った。



 「少々お待ちくださいませ。確認いたします」



 兵士は、タラウスに確認を取りに行く。



 「タラウス様、どうしましょう」


 「ささっと通してやれ」



 タラウスは、もちろん何もしない。ただでさえ、私にビビっているのに、それに加えて4人も『星の使徒』がいるのである。関わらない方が賢明と判断したのであった。


 私は簡単に関所を通ることができたので、そのままカペラの町へ向かった。



 「フェニちゃん、私はタラウスからジェミニ王へ連絡がいかないように、タラウスを説得してきます」



 レオは、タラウスがどう動くか警戒しているのであった。なので、キャンサーと共にタラウスの元へ向かった。



 「フェニちゃんは俺たちが守るぜ」



 サジタリウスが、レオに腕を上げて言った。




 「何しに戻って来たのだ」



 タラウスが怯えながら言った。



 「俺たちがジェミ王を裏切ったのは、お前も気づいているだろう。お前はこの事をどう報告するつもりだ!」



 レオは、鋭い眼光でタラウスを睨みつける。


 レオの『ライオンモード』の腕力は、タラウスの『フルチャージ』の腕力を凌駕することをタラウスは知っている。なので、タラウスはレオに逆らう事はできないのである。



 「何も見ていないので、何も報告しない」



 タラウスは、顔面蒼白になり放心状態であった。



 「レオ、タラウスを信用しても大丈夫なのか?」



 キャンサーが心配そうに言った。



 「ここでタラウスを殺した方が大問題になるだろう。タラウスの『ゾディアックサイン』の能力は俺の劣化版だ。タラウスが俺に歯向かうことはないだろう。しかし、用心のためにサジタリウスに監視を頼んでおこう」


 「それがいいな』



 キャンサーは同意した。



 「タラウス、サジタリウスも俺達の仲間に加わった。お前の命はいつでも奪えることを忘れるなよ」



 レオはタラウスを脅して、カペラの町へ戻って行った。




 「タラウス様、すぐにジェミ王に報告しないと、危険ではないのですか」



 『グチャ』



 けたたましい鈍い音がした。



 「俺に命令するな。お前達にも言っておく、この関所には誰も来ていない」



 タラウスは、そのまま関所の監視業務に再開するのであった。

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