第267話 ホロスコープ星国 パート44


 「アクエリアスさん、私は、もっと美味しいパンが食べたいのよ。王都から1番のパン職人を、アケルナルの町へ連れてきてくれるかしら」



 ヴァルゴが、アクエリアスの瞳を見つめながら言う。



 「ヴァルゴ様がお望みなら、すぐにでも連れてきます」



 アクエリアスは、ヴァルゴの虜になっているので、なんでも言うこと聞くのであった。



  「他に何か要望はありますでしょうか?」



 アクエリアスは、少しでもヴァルゴの望みを叶えたいのである。



 「もう、この屋敷にも飽きてきたから、新しい屋敷を作って欲しいわ」



 ヴァルゴは、アクエリアスの首元に手を伸ばして、頬を撫でながら言った。



 「わかりました。この屋敷より豪華な屋敷を早急に作らせます」



 アクエリアスの喜びは絶頂であった。ヴァルゴに体を触れられるのは、この上なく嬉しいのである。


 アクエリアスは、すぐに屋敷を飛び出して、王都からパン職人を連れ去る作戦と、ヴァルゴの新しい屋敷の建築の手配を行う会議を開くのであった。



 「退屈だわ」



 ヴァルゴは、ボソリとつぶやいた。



「なぜでしょうか?」



 ヴァルゴの世話係のノスフェラーが言う。



 「全てが、私の思い通りになるからよ」



 ヴァルゴは、『魅惑』の能力により、何事も自分の思い通りになるのであった。



 「素敵なことではありませんか」



 ノスフェラーが、笑いながら言った。



 「私は刺激が欲しいのよ。私の意を反して、私に対して攻撃を仕掛けてくるような、素敵な人に出逢いたいのよ」



 ヴァルゴは、大きく両手を上げて、天を仰ぐように言った。



 「それは難しいことでしょう。ヴァルゴ様の美しさの前では、誰しも無力になってしまいます」



 ノスフェラーは、微笑みながら言った。



 「そうね。あなた以外はね・・・」



 ヴァルゴの目つきが鋭くなる。



 「そんなことありませんわ。私はヴァルゴ様をお慕い申しております」



 ノスフェラーが跪いて言う。



 「私にはわかるのよ。あなたの忠誠心は偽物よ」



 ヴァルゴは先ほどまでとは違い、氷のような冷たい表情になっている。



 「そう思うのなら、なぜ私を世話係に任命したのですか」



 ノスフェラーは、終始笑顔を絶やさない。



 「さっきも言ったけど、刺激が欲しいのよ。あなたを側に置いておけば、いずれ何かが起こると思っているのよ」



 ヴァルゴはノスフェラーの目を見て、笑いながら言った。



 「買いかぶりすぎですわ。私は何もできませんわ」



 ノスフェラーは、笑って誤魔化した。



 「いいわ。いずれあなたの正体を突き止めてみせるわ」



 ヴァルゴは、にこやかな顔をして言ったのであった。




★フェニ視点に戻ります




 私は、レジスタンスのアジトに案内された。



 「レジスタンスさんはどこにいてるのですか?」



 私はワラキアに聞いた。



 「どう言うことでしょうか」



 ワラキアは首を傾げる。



 「私はレジスタンスさんに、協力するように言われました。なのでレジスタンスさんと話をしたいのです」



 私は飲み込みの悪いワラキアに、不機嫌そうに言い放った。



 「フェニ王、彼がレジスタンスのリーダーのワラキアです」



 レオが、私に助言した。



 「レジスタンスのリーダーのワラキア???」



 もちろん、飲み込みが悪いのは私である。



 「そうです。レジスタンスとは、人の名前ではありません」



 レオは私の耳元で、小さくつぶやいた。



 「エーーーーー」



 私は、大声で叫んでしまった。



 「私が、レジスタンス『レッドブラット』のリーダーのワラキアです」



 ワラキアは、私の間違いがなかったかのように、きちんと挨拶をしてくれた。



 「レジスタンス?レッドブラッド?リーダー?ワラキア?」



 たくさんの名前が出てきて、さらに私がパニックになったのであった。


 

 「そうです。私がワラキアです」




 私のパニックを察して、ワラキアは、最低限の自己紹介に変更した。



 「私はフェニちゃんです」



 私は、最大限の笑顔で自己紹介した。そう・・・笑って誤魔化すという戦法をとったのであった。



 「フェニさんのことは、レオさんからいろいろと聞いています。フェニさんのおかげで、革命の火が灯りました。フェニさん、一緒に革命を成し遂げましょう」



 ワラキア、は熱い思いを私にぶつけた。



 「わかりました。全力で協力します」



 ワラキアの熱い思いは、私には理解できなかったが、私は会議室の空気を読んで、協力を承諾したのであった。



 「では早速、ヴァルゴ様のいるアケルナルの町へ行きましょう」


 「はーーい」



 私は、軽やかに返事をした。



 「フェニ王、どうやって、ヴァルゴを救出するつもりですか」



 レオは、私に尋ねる。



 「直接会って、連れて帰ればいいのです」



 私は基本無計画である。なので、とりあえず、ヴァルゴのところへ行けばいいと思ったのであった。



 「ほほう・・・ヴァルゴとフェニ王の会談ですね。それはいい考えだと思います。フェニ王の強さを知れば、ヴァルゴも協力するに違いありません」



 レオの瞳は曇っている。なので、私の意見は全て良いように捉えるのであった。



 「アケルナルの警護は鉄壁です。どうやって、ヴァルゴ様のところまで行くのですか?」



 ワラキアが、アケルナルの現状を私に説明する。



 「それは問題ない。ここには『星の使徒』が4人もいるのだ。『星の使徒』がアケルナルの町を訪れれば拒むことはできない。もし拒むようなら、俺が力づくでも門を開けてやるぜ」



 レオが勇ましく言った。



 「確かにそうでございます。私たちには4人の『星の使徒』にフェニさんがいてます。何も恐れる必要などなかったのですね」



 ワラキアは、嬉しそうに言った。

 

 そして、私たちは、アケルナルの町へ向かうのであった。



 


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