第268話 ホロスコープ星国 パート45
★アケルナルの町の監獄管理棟の会議室にて
「ヴァルゴ様からのおねだりを報告する」
アクエリアスは嬉しそう言う。
「まず一つ目が、王都シリウスの1番美味しいパンを作る料理人をこの町へ連れてくること、そして二つ目が、ヴァルゴ様の新しい屋敷を作ることだ。俺はこの二つのおねだりを実現しようと思っている」
アクエリアスは高らかに宣言した。
「もちろんです」
「異論はありません」
「ヴァルゴ様の望みは、絶対に叶えるべきです」
会議に参加した者は、誰も異論を唱えるものなどいない。なぜならば、全員ヴァルゴの美しさに惚れて、魅了されているからである。
「全員一致で、この二つのおねだりを可決する」
アクエリアスは、嬉しそうに言った。
『バタン』
会議室の扉が勢いよく開いた。
「ちょっと待ちなさい。その二つの案は却下よ」
ノスフェラーが慌てて会議室に現れた。
「また、お前か・・・なぜいつもヴァルゴ様のおねだりを邪魔をするのだ」
アクエリアスの顔が不機嫌になる。
「まず、王都から料理人を連れ出すのは危険よ。ジェミニ王には、ヴァルゴは地下の監獄に幽閉していると、報告しているはずよ。もし、料理人を連れ出すのに失敗したら、どう言い訳をするつもりなの?」
ノスフェラーは、アクエリアスに詰め寄る。
「部下が勝手にしたと言えば良いだろう。ヴァルゴ様が、自由にアケルナルの町で過ごしているを知っているのは、俺たちだけだ」
アクエリアスは、必死に抵抗する。
「何をバカなこと言っているのよ。この町で、ヴァルゴが自由に過ごしている事は周知の事実よ。だから、できるだけ危険なことはしないでほしいのよ」
ノスフェラーが呆れた顔で言った。
「俺たちはヴァルゴ様に、喜んで欲しいのだ。そして、少しでもお褒めの言葉をもらいたいのだ」
子供が駄々をこねるようにアクエリアスはジタバタする。
「そうだ!そうだ!」
会議に出席している者も賛同する。
「却下よ。そして、新しヴァルゴの屋敷の件も却下よ」
ノスフェラーは、大声で言った。
「なぜだ!」
アクエリアスは納得がいかない。
「この前に新しい屋敷を建てたばかりよ。だから、新しい屋敷はいらない話。それに、新しい屋敷を建てる予算もないわよ」
ノスフェラーは、捲し立てるように言った。
「ヴァルゴ様が欲しいと言っているのだ。それを叶えるのが、俺たちの仕事だ」
アクエリアスが、大きな声で反論した。
「そうだ!そうだ」
会議に出席している全ての者が賛同する。
「新しい屋敷を建てるお金がどこにあるのよ」
ノスフェラーは、アクエリアスを問い詰める。
「囚人たちに作らせたら良いだろう」
「囚人たちは、ジェミ二王から与えらた炭鉱の採掘業務があるわ」
ノスフェラーは呆れた顔で言った。
「炭鉱の採掘業務が終わってから、やらせれば良いだろう」
「そんなことをしたら、囚人たちは死んでしまうわ」
ノスフェラーは、ため息をついた。
「俺の能力は知っているだろう!囚人たちは俺の『元気の水』で、不眠不休で働けるはずだ」
アクエリアスの『ゾディアックサイン』の能力は『元気の水』である。アクエリアスの作る『元気の水』を飲めば、体力が一定の量回復するのであった。なので、囚人たちは『元気の水』を飲めば、炭鉱作業の後に、建築作業もできるのである。
「『元気の水』も限界があるわ。何日も不眠不休で働くのは無理なことよ」
『元気の水』は、多少の体力を回復するだけなの、永遠に不眠不休で働けるわけではない。ジェミニ王が、アクエリアスに、監獄の町アケルナルの監獄長に任命したのは、アクエリアスの『元気の水』の能力を上手く使って、囚人たちを、効率よく作業させるためであった。
『バタン』
会議室の扉が勢いよく開いた。
「アクエリアス様、レオ様がアケルナルの町へ入れるように、申し上げております。どうしましょうか?」
アケルナルの門を警護していた門兵が慌てて、会議室に現れたのであった。
「ここは俺の管轄の町だ。たとえ『星の使徒』であろうとも、入れるわけにはいかない。すぐに追いかえせ」
アクエリアスは、不機嫌な顔になった。
「もちろん、レオ様には入ることはできないと伝えました。しかし、門を開けないと無理矢理にでも入るとおっしゃるので、報告にあがりました」
門兵は、かなり怯えているみたいである。
「レオは何を考えているのだ・・・会議は一旦中止する。今から、俺はレオのところへ行ってくる」
アクエリアスは、会議室から出て行った。
「私も行くわ」
ノスフェラーもついて行く。
★フェニ視点に戻ります
「早く門を開けろ」
レオは怒鳴りつける。
「今アクエリアス様に連絡をしておりますので、もう少しだけお待ちください」
大きな門の横の高台から、門を監視している兵士が怯えながら言った。
「飛んだ方が早いかも・・・」
私はコソっとつぶやいた。しかし、みんなでヴァルゴを救出する作戦なので、私は大人しく動向を見守ることにした。
「レオ、焦ることはないぜ。すぐにアクエリアスが門を開けるだろうぜ」
キャンサーが、レオを落ち着かせる。
「俺は焦っているわけでない。アクエリアスごときが、フェニ王を待たせることに納得がいかないのだ!」
レオは、私への失礼な対応に、腹を立てているのであった。
「確かにそうだな・・・『高速横走り』」
キャンサーは『高速横走り』を発動して、門をスイスイと登っていった。そして、門の横の高台に移動して、門を監視している門兵のところまで行った。
「フェニ王を、これ以上待たせることはできない。いますぐに門を開けろ。門を開けないとお前の命はないぞ」
キャンサーは、兵士を脅す。
「わかりました。今すぐに開けるように伝えます」
兵士は、門の開閉係に、すぐに門を開けるように指示を出した。
『ガガガー・ガガガー』
大きな門が開いた。
「レオ、門が開いたぜ」
キャンサーが高台から叫ぶ。
「よくやった。フェニちゃん、中へ入りましょう」
門が開いたので、私たちは、アケルナルの町へ入って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます