第269話 ホロスコープ星国 パート46


 アケルナルの町に入ると、大きな道が、大きな綺麗な屋敷に向かって、真っ直ぐ伸びている。



 「この道は、ヴァルゴロードと言います」



 ワラキアが言った。



 「ヴァルゴロードとはなんだ?」



 レオがワラキアに問いかける。



 「アケルナルの町の中心には、ヴァルゴ様のお屋敷があります。ヴァルゴ様の屋敷を讃えるために、ヴァルゴ様の屋敷まで続くこの大きな道をヴァルゴロードと呼んでいると、聞いております」



 「それなら、この道を進めば、ヴァルゴに会えるのだな」


 「そうです」



 私たちは、ヴァルゴロードを進んで、ヴァルゴの屋敷に向かった。すると、反対側から、立派な馬車が、ものすごいスピードで、私たちの元へ走ってきた。


 馬車は、私たちの目の前で止まり、馬車の中から、白い鎧を着た男性が現れた。



 「誰の許可をもらって、アケルナルの町へ入ったのだ」



 アクエリアスが、怒りに満ちた表情で言った。



 「お前こそ、フェニ王を待たせておきながら、謝罪の言葉もないのか」



 レオの方が、怒りの度合いは高い。



 「フェニ王・・・なんのことだ???」



 レオの迫力に負けたアクエリアスは、レオの主張するフェニ王のことを確認することにした。



 「この方がフェニ王だ。ジェミに変わって、この国を統治するお方だ!」



 レオは、ベガちゃんに乗って、のほほんとしている私を指をさして言った。



 「レオ・・・正気なのか???」



 アクエリアスには、レオの言っていることが、全く理解できないのであった。10歳くらいの女の子が、新たな国王になると言われても、意味不明なのであった。



 「私が、詳しくお話ししましょう」



 レオの一方通行の話では、アクエリアスは、理解できないと思ったワラキアが、革命の内容を説明したのであった。



 「レオ、無駄なことを辞めるのだ。それに、そんな無謀な戦いに、ヴァルゴ様を巻き込むことは、俺が許さない」



 アクエリアスは、レオを睨みつけて言った。



 「俺は本気だ。だから、邪魔をするな・・・お前では俺に勝てないだろう」



 レオは、アクエリアスを睨み返す。



 「兵士ども、こいつらを拘束しろ」



 アクエリアスは。同行している兵士に命令する。しかし、キャンサーの『拘束横走り』の移動攻撃により、一瞬で兵士たちは、倒されるのであった。



 「『星の使徒』である俺に、勝てると思っているのか」



 キャンサーは、余裕の笑みを浮かべて言った。



 「兵士ども弓を放て」



 アケルナルの町には複数の塔がある。この塔から、受刑者を監視しているが、いざという時は、この塔から弓を放って、反抗する者を撃退する役目も担っているのである。



 しかし、全く弓矢は飛んでこない。もちろん、サジタリウスによって、塔の兵士は倒されているのである。



 「なぜ、弓を放たない・・・」



 アクエリアスは呆然と立ち尽くす。



 「お前の兵士達は、サジタリウスの矢によって、戦闘不能だ!」



 レオは、冷たい表情で言い放った。



 「サジタリウスもいるのか・・・」


 

 アクエリアスは、絶望的な目をしている。



 「アクエリアス、俺たちの邪魔をするな」



 キャンサーが、アクエリアスの肩を叩いて言った。



 「駄目だ。俺の敬愛するヴァルゴ様を、革命に巻き込むことはできない」



 アクエリアスのヴァルゴを思う気持ちは絶大である。なので、ヴァルゴのためなら死をも恐れないのである。



 『カプリ』



 アクエリアスの首元をノスフェラーが噛み付いた。



 『バタン』



 アクエリアスが倒れ込む。



 「私がヴァルゴの元へ案内するわ」



 ノスフェラーは、笑顔で私に言った。



 「お前は何者だ!」



 急に現れたノスフェラーに、レオが大声を上げて言った。



 「私は、ヴァンパイヤ一族のノスフェラーよ」



 素敵な笑みでノスフェラーは自己紹介をした。



 「ドラキュンさんの友達ですか?」



 私はヴァンパイヤと聞いて確認をした。



 「私は、ドラキュンの姉よ。そして、『レッドブラット』創始者よ」


 「ワラキア、本当なのか・・・」



 レオが、ワラキアに確認をとる。



 「間違えありません。ノスフェラー様が『レッドブラット』を作り上げたのです」


 「ワラキア、お久しぶりね」



 ノスフェラーは、笑顔でワラキアに声をかけた。



 「ノスフェラー様も、ご無事で何よりです。まさか、アケルナルの町に潜入していたとは、知りませんでした」



 ワラキアは、ノスフェラーとの再会に涙を流している。



 「いずれ、ヴァルゴの力が必要になると思って、アケルナルの町の副管理官かつヴァルゴの世話係として、働いていたのよ。まさか、あなたが乗り込んで来るとは思わなかったわ」



 ノスフェラーは、ワラキアの姿を見た時、革命の時が訪れたと察知した。そして、ワラキアからアクエリアスに革命の内容を聞いて、ノスフェラーも自分の役割を全うしようと思ったのであった。



 「お前も俺らの仲間ということで、間違い無いのだな」



 レオは確認をとる。



 「そうです。なので、ヴァルゴの屋敷まで案内します」



 ノスフェラーは、レオがリーダーだと思って、跪いて丁寧に対応をする。



 「俺にそのような態度をとる必要はない。崇むべき対象はフェニ王だけだ」



 レオは、力強く言った。



 「わかりました。フェニ王、私も一緒に革命を手伝わせてください」



 ノスフェラーは、私に跪いて頭を下げた。



 「頭を下げなくてもいいですよ。私は王になると決めましたが、みんなで仲良く、そして楽しく暮らせる国を作りたいのです。なので、かしこまらいでください」



 私は満面の笑みで言った。



 「そうなのね。それならフェニちゃん、よろしくね!」



 ノスフェラーはウインクをして愛嬌のある笑顔で言ったのである。

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