第68話 アトラス山脈にてパート7
最終試練は、ポロンさん対サラマンダーのタイマンバトルである。私が加勢出来るのなら、勝つ可能性は十分にあるのだが、タイマンバトルになると勝てないだろう。それに、ツノをつかむのも不可能に近いと思われる。
今まで、誰もサラマンダーの加護を受けることができなかった事を、ようやく理解することができた。
しかし、私には秘策がある。
「サラマンダー様!戦闘の前にみんなで宴会をしませんか?まだまだ美味しい食事・お酒があるので一緒に楽しみましょう」
「まだ美味しい食べ物があるのね!もちろん食べさせてもらうわよ」
サラマンダーは、目を輝かせて私の誘いに乗った。
「今すぐに準備いたします」
私は、みんなに作戦を説明した。ポロンさんが普通に戦っても加護を受け取るのは不可能に近い。だから、サラマンダーをベロンベロンに酔わせて立てなくなるくらいしてから、最終試練を受けることにしようと。
みんなはすぐに納得してくれた。それしかないだろうとの返答だった。
「サラ、このブドウ酒はめちゃ美味しいぞ。俺と飲み比べをしないか」
「何!!!そんなに美味しいの?なら受けて立つわよ」
早速トールさんが、サラマンダーにお酒をすすめる。
2人は、ポテトをつまみにぐいぐいと飲みまくる。数時間後には、私の用意したブドウ酒が底をついてしまった。
しかし、サラマンダーは、少しふらついているがまだまだ大丈夫そうだ。
「人間にしては、かなり飲むのね」
「さすが、精霊神・・・俺よりも飲むやつを見たのは初めてだぜ」
あのトールさんが敗北宣言をした。
「悪いが、ロキ交代してくれ」
「よくがんばったね。後は私に任せてね」
トールさんは、一旦休むことにしたらしい。次はロキさんの番だ。
「精霊神様、まだ飲み足りない様子ですね」
「そうよ。もっともっとお酒を用意するのよ」
私は、いつもよりもアルコール度数の高い日本酒をサラマンダーに渡して、ロキさんには水を渡した。
「サラマンダー様の為に、特別の日本酒を新たに用意しました。物足りないかもしれませんが、どうぞ」
「私専用なの?それは嬉しいですわ。感謝しますわ」
サラマンダーは、嬉しそうに日本酒を浴びるように飲みだす。おつまみもいろいろと用意したが、すぐになくなってしまう。
これは、私のお酒・食べ物の貯蔵量対サラマンダーの胃袋の戦いになりそうである。
「うーん、少し苦しくなってきたわ・・」
サラマンダーのお腹は、かなりタプンタプンになってきている。見るからに食べ過ぎである。顔も真っ赤になって、喋り方もおかしくなってきている。
「苦しいにょに、止まらないだわさ」
「もっちょ、ほしにょなぁー」
「おいしいにょーー」
「ニョキさんも、もっと飲むにょん」
ロキさんは、チャンスだと思いさらに日本酒を勧める。
サラマンダーはかなり酔ってきた。ついには、椅子からズレ落ちて床に倒れ込んでしまった。
私の貯蔵量が勝利した。サラマンダーを倒すには今しかない。
「ポロンお姉ちゃん、今がチャンスです」
「わかったわ。今行くわ」
ポロンさんは、倒れ込んでいるサラマンダーに駆け寄って行った。
「精霊神様、今から最終試練を受けたいと思います」
「ふがふが」
サラマンダーは、たぶんわかったと言ったのであろう。
「いきますよ」
ポロンさんは、倒れているサラマンダーのツノを抑えよとした・・・その時・
「フガーーーーーー」
サラマンダーは、仰向けになって倒れ込んでいた口から、燃え盛るマグマを吐き出した。
その勢いは凄まじく、天井の壁を突き破り、天高く吹き上がったのであった。まるでイディ山が、大噴火したような感じであった。
「ひゃーー」
ポロンさんは、ビックリして腰を抜かす。この場所は、シールドなしでは、かなり暑いので絶えずシールド張っていて良かったのであった。サラマンダーの吐き出したマグマの熱風で、その場はさらに過酷な暑さになってしまったのである。
「なんだこの暑さは」
ぐったりと倒れて休んでいた、トールさんもあまりの暑さで起き上がってきた。
「ポロンお姉ちゃん、サラマンダーは寝ぼけてマグマを吐いただけです。怖がらずに倒してください」
サラマンダーはマグマを吐き出した後、また仰向けの状態で、よだれを垂らしながらぐったりと倒れている。
しかし、ポロンさんは、先程のマグマに恐れてしまって、躊躇してしまっている。
「わかっていますわ。でも・・・でも・・・」
「ポロン、ここで恐れてどうする。なんのためにここまできたのだ。このチャンスを逃すと、もう2度と国へ帰れないぞ」
トールさんが、ポロンさんへ激を飛ばす。
「そうだわ。今しかないのよ。私の人生を取り戻すためにも、行くしかないわ」
ポロンさんは、マグマの恐怖を払いのけてサラマンダーのツノをつかみに行った。
サラマンダーは動くこともなくぐったりとしている。
「精霊神様、ツノをつかみましたわ。私の勝ちですわ」
「ぐゴーー」
ポロンさんは、一瞬ヒヤッとしたがツノを離さない。そして、さらに、仰向けに倒れ込んでいるサラマンダーの上に乗り、勝利のガッツポーズをした。
「精霊神様、あなたを倒したのは私ですわ。私の召喚精霊になりなさい」
「グゲゴー」
たぶん、サラマンダーはわかったと言ったのだろう。
私たちを案内してくれた。火の玉がポロンさんのところへ来た。
「内容はともかくあなたの勝ちです。火の精霊神サラマンダー様は、あなたの召喚精霊になりました。そして精霊神の加護として、私があなたの能力になります。私は、火の精霊神サラマンダー様の一部から作れたイフリートと言います。今から、あなたの手の甲に精印を刻み、そこに滞在し随時あなたに力を与えます」
ポロンさんの手の甲に精印が刻まれる。精印とは、精霊と契約した時に刻まれる印である。精霊はその印に滞在し、契約者の力になりまた共に戦うこともあるのである。
ポロンさんは、ついに精霊神様の加護を手に入れる事ができたのであった。
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