第67話 アトラス山脈にてパート6



  3mくらいの大きな扉が私たちの前に現れた。これが試練の扉なのであろう。扉には、文字が刻まれている。



 「これより先は、火の精霊神サラマンダーの支配領域になる。我が加護を望むエルフよ、おのれに自信があるのなら、仲間と共に試練を受けるがよい。しかし、試練の挑戦は一度のみしか許さない。覚悟を決めて挑むがよい」


 と書かれていた。



 「ポロン、覚悟はできているよな」


 「もちろんですわ。このために私は、故郷を捨てて旅に出たのですわ」



 ポロンさんは、これでやっと、やらかし王女から脱却できるのである。そして、あれ以来飲むのを辞めたブドウ酒を飲む事ができるのである。だからポロンさんは、絶対に精霊神様の試練を受けないといけないである



 「精霊神の試練とても楽しみです」



 火の精霊神の試練とはどんなものだろう。イメージとしては、精霊神との戦いや決めれた素材を集めるなどの試練だろう。ポロンさんには、悪いが私はすごく楽しそうでワクワクしている。


 ポロンさんは、試練の扉の前に向かった。試練の扉を開くことができるのはエルフのみである。


扉には、印がありそこに魔力を注ぐと、扉が開かれる仕組みになっている。


 ポロンさんは、印に魔力を注ぐ。すると扉が光り出して少しずつ開いていく。


 扉が開かれると大きな洞窟が出てきた。ここを通っていけば精霊神に会えるのだろう。


 洞窟は真っ暗で先が見えない。ポロンさんは、火の魔法で灯りをつけようとした時、声が聞こえた。



 「私が案内いたします」


 

 小さな火の玉が話しかけてきた。



 「あなたは精霊ですの?」


 「私は聖霊神様の一部です。あなた達を早く連れてくるように頼まれているのです」


 「そうなのですか。私たちが、ここにくる事をご存知なのですか?」



 ポロンさんは驚いている。なぜ精霊神が、私たちがここに来る事を知っているのか。



 「知っています。精霊神様は、自分の配下の微精霊から情報を集めることができるのです」だから、あなた達が、ここへ向かっているのは、微精霊から聞いています」


 「そういう事なんですね。びっくりしましたわ」


 「精霊神様が、待ち侘びているので急ぎましょう」



 真っ暗だった洞窟は、急に光を浴びたかのように明るくなった。私たちは、火の玉に導かれるままに洞窟を進んだ。


 洞窟を進むと、あたりはマグマが溢れ出す溶岩地帯に入った。ここは、通常の装備だと、全身が溶けてしまうくらいの暑さである。これも試練なのであろう。耐火装備・耐火魔法を使わないと、この場所は通ることはできないのである。


 私たちは、シールドを張っているので問題はない。


 溶岩地帯を進むと、大きな円形の岩の神殿が見えてきた。神殿に近づくと、小柄で赤い鎧を着た紫の髪の女の子が腕を組んで待っていた。



 「遅いですわ!お腹がペコペコよーー」



 これは、以前見た光景に似ている・・・・アトラス山脈の頂上で、貢物を待っていたあの子と同じだ。これは、食いしん坊の精霊神に間違いない。

 

 私たち4人は確信した。まともな試練は出てこないに違いない。しかし、ポロンさんのために引き返すわけにはいかないのである。



 「精霊神様、私はポロンと言います。火の聖霊神サラマンダーの加護をもらいに試練に挑みにきました」


 「わかっているわ!まずは、私の腹ペコの胃袋を満たしてよ。できれば、お酒も欲しいのよ」



 やっぱり、私たちの予感は当たったのである。この女の子が、火の精霊神のサラマンダーなのであろう。精霊神は、微精霊を使って私のたくさん保管している食料の情報を手に入れたのだろう。なので、間違いなく私の持っている食料を狙っていると判断した。



 「ルシスちゃんどうしましょう」


 「そうですね。これも試練なので、私の唐揚げと日本酒を渡すことにします」


 「そうですよね。それしかないですよね」



 ポロンさんは悔しそうだ。この日のために頑張ってきたのに、まさかの食事の要求とは悲しすぎるのである。



 「どうぞ、これを食べてください」



 ポロンさんは、唐揚げと日本酒を渡した。



 「おーーーこれが唐揚げと日本酒というものね。微精霊から聞いて、気になって仕方がなかったのよ」



 サラマンダーは、ヨダレを垂らしながら食事を始めた。



 「うーん。たまらないわ。サクサク・ホクホクで、さらにジューシーで美味しいわ。今までいろんな冒険者達に差し入れをさせたが、こんなに美味しい物は初めてよ。第一の試練は合格よ」



 この食べ物の試練は、私たち限定じゃなかったみたいだ。毎回食べ物を要求していたみたいである。このサラマンダーの試練を通った者はいないと聞いていたが、こんな試練なら楽勝なのではと思ってしまう。


 

 「次の試練はかなり過酷ですわ。さぁ冒険者よ。プリンを用意しなさーーーーい」



 プリンを名指ししてきた。よほどプリンが食べたかったのであろう。ロキさんとトールさんはやる気を無くして座り込んでしまった。ポロンさんは、どんな試練であろうとも、加護を受けないといけないので必死である。



 「ルシスちゃん、幸運にも次の試練はプリンだわ」


 「そうですね。幸いにも、私が持っているのでなんとかなりそうですね」


 「ここにプリンがありますわ。これで良いのかしら」


 「わーーーーい。プリンだぁー」



 サラマンダーはプリンを見て大喜びして、パクパクと食べだした。



 「美味しいーわ・・・・でもこれでは足りませんわ。この量だと試練は失格にします」


 「ルシスちゃん、やばいですわ。もっとプリンはありませんの。このままだと失格になってしまいますわ」


 「大丈夫です。まだありますので、これを渡してください」


 「さすがルシスちゃん。頼りになりますわ」


 「これが追加のプリンですわ。これで満足してもらえますか」


 「わーーーーい。わーーーーい。追加のプリンだ」



 サラマンダーはまた、パクパクとプリンを食べている。とても嬉しそうな表情をしている。



 「情報通りの冒険者だわ。私の胃袋も満足してきた事だし、そろそろ最終試練に入ろうかしら」


 「最終試練とはどんなものですか」


 「それは、私との戦闘よ。私に勝つのは不可能だから、私のツノに触れることができたなら加護をあげるわ」


 「もしも勝った場合はどうなるのですか」



 私は気になったから、聞いてみた。



 「そんなことあり得ないわ。もしも私に勝つ事ができれば、召喚精霊として、あなた達の配下になるわ」



 それはいいことを聞いた。サラマンダーを召喚できるようになれば、私以外にも、サラマンダーに乗ることによって、空を飛ぶことができるのでは?これは、なんとかして、ポロンさんに勝ってもらわないといけなくなってしまった。



 火の精霊神サラマンダーのイラストです。

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