第69話 アトラス山脈にてパート8
サラちゃんは、気持ちよさそうに寝ている。イフリートが言うには、こうなると、なかなか起きる事がないので、この洞窟で一夜を過ごすことにした。
私は、簡易の家を収納ボックスから取り出して、暑さよけのシールドを張った。
「今日はここで泊まりましょう」
「そうだな。毎度ルシスの簡易の家には助かるぜ」
「そうですわ。ベッドにお風呂・トイレもありますので、野営なんてもうできませんわ」
「そうね。こんな便利なものがあれば、どこでも快適に過ごせるので本当に助かるわ」
「お役に立てて嬉しいです」
私は快適な冒険をするために、日々の努力を欠かさないようにしている。私1人なら、転移の魔法ですぐに町に戻れるのだが、そういうわけにはいかないのである。
そして、私たちは簡易の家でゆっくりと一夜を過ごした。
「ドン、ドン、ドン」
玄関のドアを、激しく叩く音で私は目が覚めた。玄関を開けると、そこにはサラちゃんがいた。
「なんなの?この家は。私の寝床に勝手に家を建てたらダメじゃないの」
「ごめんなさい。すぐに収納できるので後で片付けます」
「えっ簡単に収納できるの」
「はい。簡易の家なので、後で収納ボックスにしまいます」
「へーそうなんだ。中に入ってみてもいいかしら?」
「はい。どうぞ」
私はサラちゃんを家にあげて部屋を案内した。サラちゃんは部屋を見学している。
「このフカフカのベッドは、とても寝心地がいいわ。しかも何、このひんやりとした布団は・・とても気持ち良いわ。この簡易の家をとても気に入ったわよ。精霊神の加護と引き換えに、この家は私がもらわよ」
「えーーー。精霊神の加護は、試練を突破したら貰えるものではないのですか」
「契約の変更しますわ。この家はとても気に入ったので絶対もらうのよ!お酒に酔わして、私を倒した罰ですわ」
それを言われると・・・・何も言い返せない。仕方がないので、この簡易の家は渡すことはできないので、ここに新たに家を建てる約束をした。サラちゃんもそれで納得してくれた。
私は、みんなを残して1人で転移魔法を使って資材を調達しに行った。
残った3人とサラちゃんは、私の置いていった食べ物とお酒で朝から宴会を始めたのであった。
私は、アカシックレコードの力で、新たな家の作り方を調べて、必要な素材・資材調達をした。そして、そのついでに、追加の食べ物・日本酒も作ることにした。
ポロンさんは、サラちゃんと召喚主として、きちんと契約を結び、いつでもサラちゃんを召喚できるようになった。
「私の加護だけじゃなく、召喚契約までするなんて、前代未聞だわ」
「ルシスちゃんの作戦のおかげです。私1人だと、何もできなったですわ」
「確かに、あの子の持っているお酒と食べ物は、最高でしたわ。特にプリンは毎日食べたいわ。召喚精霊になったので、これで、いつでもあのプリンが食べれるわ」
サラちゃんは、最初から召喚契約をする気マンマンであったのである。プリンを目当てに・・・
「それでしたら、タイマンバトルは必要なかったの?」
「あれは、形式的にしないといけないのよ。それが精霊界の掟だからね」
ポロンさんは、少し複雑な気持ちになった。しかし、結果オーライなので、胸を張って故郷に戻ると決心した。
「ポロン、これからどうするのだ」
「そうですね、一度故郷に戻って両親に報告したいと思います。でもラスパのメンバーとして、冒険はこれからも続けますわ」
「そうか、わかったぜ。次はエルフの国へ行こうぜ」
「お願いしますわ。でも、エルフの国へ行く前に、ドワーフの王に、会い行かないといけないですわ」
「そうだな。竜光石の加工をしてもらわないとな」
「ドワーフの王に会いに行くのですか?」
「そうですわ」
「しかし、会ってくれるかしら?エルフのポロンさんがいたら、会ってくれない可能性がありますわ」
エルフとドワーフは仲が悪い。それは、150年前のある事件が原因なのである。
150年前までは、エルフとドワーフはとても仲の良い種族であった。エルフの国とドワーフの国は隣接しているため、お互いに行き来しあう仲であった。
しかし、150年前に、ドワーフの王の誕生祭に参加したエルフの王女が何者かの手により暗殺された。そして、その犯人がドワーフの王子であるとの情報がエルフの国へ伝わったのであった。
絶世の美女と言われたエルフの王女に、恋をしたドワーフの王子は、その恋が叶うはずもなく見事に砕け散ってしまった。そして、理性を失ったドワーフの王子は、王女を殺し自らの命もたったという。
王女を殺されたエルフの国は、全軍をあげてドワーフの国へ攻め込むことにした。それに対して、ドワーフの国も迎え撃つ体制を整えていた。
二つの国の全面戦争は、いつ起こってもおかしくに状況になっていたのだが、それを抑え込んだのが竜人であった。
大規模な戦争を抑えるために、竜人は、天空から降りてきて、2国の間にたち戦争を直前でくい止めたのであった。
その後、2国間に争いが起こらないように、アトラス山脈の山頂に、竜人を住まわせて監視しているという。
「そうかもしれませんわ。でも、私もラスパの一員としてドワーフに国に行きたいですわ」
「そうだなポロン。ドワーフとエルフの仲が悪いの知っているが、俺たちは仲間だ。一緒に行こぜ」
「トールの言う通りよ」
「嬉しいですわ」
「そうなのね。それなら検討を祈りますわ」
「おいおい。サラも一緒に行くんだぜ、ドワーフの町までは送ってもらわないとな」
「なんですって!!!」
「ここから、歩いてドワーフの王のいるターニプの町へはかなりの時間がかかるぜ。なので、サラに乗せてもらえば1時間もあれば着くだろ」
「そんな・・・召喚精霊としての役割が移動手段なんて屈辱ですわ」
「そんなこと言うなよ。ルシスに頼んで、たくさんプリンを用意させるぜ」
「そういうことなら仕方がないわ。私がターニプの町まで連れていってあげるわよ」
私は、3日間かけてサラちゃんのために家を作り、また必要な食べ物・お酒など準備したのであった。これでやっと、ドワーフの王に会いに行けるのであった。
新しく建てた家は、サラちゃんはとても喜んでくれたのであった。
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