第302話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート14



 「ルシスちゃん・・・ごめんなさい」



 ゲリは私に泣きながら謝る。



 「気にしなくていいですよ。私が避けなければよかったのです」



 ゲリを責めても何も解決はしない。なので、今日はこの汚い倉庫に泊まることにした。



 「ありがとう。ルシスちゃん」



 ゲリはすぐに泣き止んで、ニコニコと笑い出した。



 「ルシスちゃん、お腹が減ったのだぁ」



 ニコニコと笑っていたゲリは次は、お腹が減ってしょんぼりとしている。



 「これでも食べる?」



 私は収納ボックスから唐揚げとフライドポテトを取り出した。私の収納ボックスにはたくさんの食べ物が入っている。ほとんどは、サラちゃんに奪われてしまうが、非常時の分はきちんと蓄えているのである。



 「いい匂いがするのだぁ」



 私の収納ボックスは、温かいものは温かいままであり、冷たいものは冷たいままである。なので唐揚げとポテトフライは揚げたてホカホカなのである。



 「好きなだけ食べていいよ!」


 「嬉しいのだぁ」



 ゲリは、至福の笑みを浮かべながら唐揚げとポテトフライを食べている。



 「さて、どうしようかな・・・」



 私は閉じ込められている倉庫内を見渡した。倉庫といっても、テーブル、椅子、ベッドは置いてある。しかし、どれも汚くて、清潔感を感じることはできない。


 私へ潔癖症ではないが、誰が使ったかわからない汚いベッドで寝るのは嫌である。私は宿屋に泊まれない時は、簡易の家を収納ボックスから取り出して、綺麗な家でフカフカのベットで快適に睡眠をとっている。もちろん、簡易の家にはトイレもお風呂もキッチンも付いている。しかし、この倉庫には、トイレもお風呂もキッチンもないのである。


 私は、すぐにでもこの倉庫から抜け出したい。私とゲリならこの倉庫から簡単に抜け出すことはできる。この倉庫は、頑丈な鉄の柵で周り覆われていて、簡単には逃げ出されないようにされている。しかし、私とゲリにかかれば、どんな強固な鉄の柵でも、一瞬で粉々に粉砕することができる。


 私たちがこの倉庫から逃げないのには理由がある。それは『ホロスコープ星国』と揉めるわけにはいかないからである。どんな理由にしろ、私とゲリは捕まったのである。なので、そのことを解決しないで、倉庫をぶち壊して逃げることはできないのであった。



 「壊さなければいいのよ!」



 私は名案が思いついた。


 それは、この倉庫をリフォームするのである。私が、今日一日快適に過ごせるように、内装から全てを変えればいいと思いついたのである。私には7大天使様の1人アリエール様が授かった自然を作り出す能力がある。私はその能力を応用して『アカシックレコード』という新たな能力を作り出した。『アカシックレコード』とは私が望むモノを作り出す方法を教えてくれる能力である。


 私は今までに『アカシックレコード』を使って様々なモノを作ってきた。なので、家のリフォームなどお茶の子さいさいなのである。


 私は、収納ボックスから今までコツコツと集めていた素材を使って、家のリフォーに取り掛かった。そして、私の匠の技で完璧なリフォームをしたのであった。


 ゲリはリフォームしている間も、唐揚げとポテトを美味しそうに食べ続けていた。



 「ゲリちゃん、倉庫をきれいにしました」


 「すごいのだぁ!!!」



 ゲリは、お食事に夢中になっていたので、私の匠の作業を見ていない。なので、急に倉庫内がきれいな豪邸に変身したのでびっくりしている。



 「お風呂もトイレもあるので安心してね」


 「うん。そうだ!お風呂に入りたいのだぁ」



 今日はたくさん歩き回ったので、ゲリはたくさん汗をかいている。ゲリは神獣であるが、人間の姿の時は、可愛い女の子である。なので、お風呂に入って汗を拭いたいのである。



 「一緒に入ろ」


 「うん」


 私は、この倉庫を魔改造して、地下に大浴場を作ったのである。そして、無駄に多量の魔力を消耗して、温泉の源泉を見つけ出し、そこからお湯を引っ張っている。



 「すごいのだぁ。魔王様の銅像があるのだぁ」



 私は、地下の大浴場の中心に、ブラカリの町で見た私のお父様の像を作った。そして、お父様の口からお湯が出るようにしたのである。



 「広いのだぁ。泳げるのだぁ」



 私が作った大浴場は縦15m横30mあるので、プールのように広い浴槽である。なので、自由に泳ぐことも可能なのである。


 ゲリは、大きな浴槽が楽しくて、はしゃぎながら泳いでいる。


 私はジェットバス機能が付いている温泉に浸かりながら、1日の疲れを癒している。



 「ルシスちゃん、私もそのブクブクをしたいのだぁ」



 ジェットバス機能が付いている温泉は一つしか用意していない。なので、私が占拠しているので、ゲリは入れないのである。



 「ゲリちゃん、電気風呂ならあります」



 私は、全身をチクチクと刺激する電気風呂も用意していた。



 「電気風呂?なんなのだぁ」



 ゲリの頭に❓マークが浮かび上がる。


 

 「体がチクチクと刺激されて気持ちいいのです」


 「よくわからないが入るのだぁ」




 ゲリは勢いよく電気風呂にダイブした。



 「なんなのだぁ!!」



 ゲリは体をピクピクとさせている。



 「気持ちがいいでしょ。疲れが取れますよ」


 「なんか、変な気分なのだぁ・・・」



 ゲリは電気風呂の刺激で体を癒している。


 こうして私たちは、のんびりと快適な監禁生活を過ごすのであった。

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