第301話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート13


 「あなた達は何者なの?」



 ドラキュンは明らかに私たちを警戒している。



 「私はこういう者です」



 私は、警察が警察手帳を見せるように、冒険者証をドラキュンに突き付けた。



 「・・・」



 ドラキュンが私の冒険者証を見て呆然としている。



 「下手くそな絵ですね」


 『クスクス。クスクス』



 ドラキュンは笑いを堪えるのに必死である。


 私の顔が真っ赤になった。私が冒険者証と思って出したのは、私が暇つぶしに書いているお絵かき帳であった。私の絵のセンスはかなり革新的すぎて、誰も理解できない作品なのである。



 ⭐️ルシスの描いたイラストは、近況報告に載せてあります



「これじゃありません。こっちです」



 私はお絵かき帳をしまって、冒険者証を見せた。



 「C1ランクの冒険者なのですね!」



 『ホロスコープ星国』でもC1ランクの冒険者はほとんどいない。この国で1番強い冒険者がドラキュンの亡くなった両親である。ドラキュンの両親はC1ランクの冒険者だったので、『ラスパ』はこの国でも最高位の冒険者なのである。



 「そうです」



 私は、さっきの失態を取り返すように自慢げに答えた。



 「では、子犬に変身できる女の子も『ラストパサー』の一員なのですか?」


 「違うのだぁ」



 ゲリは素直に答える。



 「あなたの身分証を見せてください」



 ドラキュンがゲリに詰め寄る。



 「ないのだぁ!」



 素直なゲリは、笑顔で答える。



 「身分証を持っていないのね。それなら、あなたは何しにハダルの町に来たのかしら」


 「お姉ちゃんを探しているのだぁ」


 「お姉ちゃん?」


 「そうなのだぁ」


 「お姉ちゃんも子犬に変身できるのかしら?」


 「子犬じゃないのだぁ。狼なのだぁ」


 「狼だったの?てっきり私は子犬だと思ったわよ」


 「違うのだぁ。こっそり町に入るために小さい狼に変身したのだぁ」



 ゲリは不法侵入しよとしたことを、自分から言ってしまった。



 「あなた達は不法侵入する予定だったのかしら」



 ドラキュンが私とゲリを問い詰める。



 「そうなのだぁ。ルシスちゃんが、そうしようと言ったのだぁ」



 ゲリは私に責任をなすりつける。



 「違います。不法侵入するつもりなどありません」



 私は冷や汗をかきながら否定する。



 「詳しい話は、留置所で聞きますわ。2人を拘束するのよ」



 私たちは不審者として門兵に捕まってしまった。そして、ドラキュンの屋敷の倉庫に運ばれたのである。ドラキュンの屋敷の倉庫は、留置所として使われている。その倉庫は、ジェミニ達が捕らえれていたところである。




 倉庫に連行されて、ドラキュンの尋問が始まった。



 「不法侵入は重たい刑罰ですわ。なぜ、そんな危険を冒してまで、お姉さんを探しているのですか?」


 「どうしても、お姉ちゃんに会いたいのだぁ」


 「ゲリちゃんは、行方がわからなくなったお姉ちゃんが心配で、夜も眠れないくらい憔悴しているのです。なので、少しでもお姉ちゃんの情報が欲しくて、この町に不法侵入しよとしたのです」



 私は、ゲリの代わりにドラキュンにきちんと説明した。



 「そうなのね。でも、きちんと説明しくれれば、町に入る許可を出してあげたわ」


 「ごめんなさい。どうしても、すぐに町に入りたかったのです」



 私はゲリの代わりに謝った。ゲリは、なんで捕まったのかもきちんと理解していないのである。



 「仕方がないわ。2人の可愛さに免じて許してあげるわ。それで、お姉ちゃんの詳しい特徴を教えてくれるかしら」



 ドラキュンは、美人と可愛い子には甘いのである。



 「お姉ちゃんは、美しい白い狼なのだぁ。人型に変身した時もすごく美人なのだぁ」


 「白い狼・・・美人な女性・・・フレキさんだわ」



 ドラキュンは、ゲリのお姉ちゃんがフレキだと思った。



 「ゲリちゃんのお姉ちゃんはフレキという名前なの?」


 

 私がゲリに確認をする。



 「お姉ちゃんは、お姉ちゃんなのだぁ」



 ゲリはお姉ちゃんの名前を覚えていない。



 「ルシスさん、ゲリさんのお姉ちゃんはフレキさんに間違いないわ」



 狼から人間の姿に変身できる人物など、ほとんどいないのである。



 「フレキさんはこの町にいるのですか?」


 「以前にこの町に来たことがあるのよ」


 「では、今はどこにいるのですか?」


 「たぶん・・・王の森は向かったのだと思うわ」


 「ありがとうございます」



 ゲリのお姉ちゃんの足取りがわかった。これで、見つけることができそうである。



 「ゲリちゃん、お姉ちゃんの足取りがわかったわ」


 「嬉しいのだぁ。これでおねちゃんに会えるのだぁ」



 ゲリは飛び跳ねて喜んでいる。



 「ちょっと待つのよ。王の森に入るのは危険だわ」


 「王の森に行くのだぁ」


 「私の話をきちんと聞きなさい。王の森には、ラードーンというこの辺りの森を支配する魔獣がいるのよ」


 「問題ないのだぁ」



 ゲリに怖いモノなどない。



 「あなたがいくらフレキさんの妹さんでも危険だと思いますわ」



 ドラキュンは、ゲリのことが心配なのである。



 「大丈夫です。私が付いています」



 私は胸を張ってドラキュンに言った。



 「私の親はC1ランクの冒険者だったわ。しかし、ラードーンにあっけなく殺されたのよ。いくらあなたがC 1ランクで強い冒険者でも、ラードーン相手では実力不足なのよ」



 ドラキュンは、ラードーンの恐ろしさを誰よりも知っている。



 「お姉ちゃんのがラードーンよりも強いのだぁ」



 ゲリの話では、ゲリよりもフレキの方が強い。しかし、フレキは神獣ではないので、神獣スキルは持っていない。なので、神獣となったゲリの方がフレキよりも強いと私は考えている。



 「どんな強敵が待ち受けていても、そこへ足を踏み入れるのが冒険者です。私は、ゲリちゃんに、お姉ちゃんを見つけると約束しました。なので、私は王の森へ行きます」



 私は、めちゃくちゃ強いので大丈夫です。と言っても信用してもらえないので、適当な言葉を並べて、ドラキュンに納得してもらおうとした。



 『ウルウル・ウルウル』



 私の話に感動したゲリが涙を浮かべていた。



 「ルシスちゃんの熱い気持ち嬉しいのだぁ」


 

 ゲリは歓喜余って私に抱きつこうとした。


 しかし、私の防衛本能が察知して、ゲリをさらりと避ける。私が避けたので、ゲリのベアハッグの餌食がドラキュンになってしまう。



 「ギャーーーー」



 ゲリに強く抱きしめられて、ドラキュンは悲鳴をあげて倒れ込んでしまう。



 「何があったのですか!」


 

 ドラキュン部下が、すぐに倉庫に駆けつける。



 「ドラキュン様・・・」



 部下は、ドラキュンが倒れている姿を見て、私たちを睨みつける。



 「お前達、姫になにをした」


 「何もしてません」


 「まったやってしまったのだぁ」



 ゲリがしょんぼりとする。



 「姫を屋敷へ運びだせ」


 「わかりました」


 「この2人はどうしますか?」


 「まずは姫の容態のが心配だ。こいつらはこのまま閉じ込めておけ」


 「わかりました」



 こうして、私とゲリは倉庫に閉じ込められるのであった。


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