第317話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート29


 「アトゥム様、冷静になって私の話を聞いてください。この女の子は本当に私たちの呪いを解除できるのです」


 「黙れ!アトラース様から侵入者を拘束するように指示されている。大人しくその女の子を引き渡せ」



 アトゥムは全くシューの話を聞き入れない。



 「10秒だけ時間をやる。命が惜しかったら手をあげて、大人しく跪いて降伏をしろ。いくらお前が強くても、この数の竜騎士を同時に戦うのは不可能なはずだ」



 アトゥムは私に降伏を要求した。



 「降伏などしません」



 私はキッパリとお断りする。



 「シューもろともアイツをドラゴンの炎で焼き尽くしてしまえ」



 アトゥムは総勢30名ほどの竜騎士に命令を出した。アトゥムの命令を受けた竜騎士は、私たちに接近して、乗っているドラゴンに指示を出して、炎を吐き出させた。


 灼熱の地獄の炎がシューのドラゴンに乗っている私とシューを襲う。


 

 『ライトシールド』



 私達の周りに光の膜が覆い尽くす。


 私の周りが火の海のように、真っ赤に染まり、全てのモノを焼き尽くす・・・はずが、私の張った『ライトシールド』によって弾き返される。


 『ライトシールド』のよって、弾き返された灼熱の地獄の炎は、私たちを取り囲んでいる竜騎士に襲いかかる。



 「アトゥム様、炎が反射してこちらへ戻ってきます」


 「上空へ避難しろ」



 竜騎士達は、急上昇して弾き返された炎を避ける。



 「あの光のシールドは光魔法ではないのか!!」



 アトゥムの顔が引き攣っている。


 私の『ライトシールド』は通常のシールドとは違い光魔法を使っているので、どんな魔法でも弾き返すことができる完璧な防御魔法である。私が光魔法を使えるのは、7大天使様の一人ウリエル様から授かった『神の光・神の炎』の能力のおかげである。なので、私は神と神人しか使えないと言われる光魔法を使うことができるのである。


 

 「光魔法は神と神人しか使えないと聞いています。あの子は神人なのでしょうか?」



 顔面蒼白のセトが、アトゥムに嘆くように言った。



 「アトラース様から、何も聞いていない・・・しかし、神人の可能性は高いかもしれない」


 「それなら、勝つのは不可能です。逃げましょう」



 セトは、そういうと颯爽と逃げ出した。



 「アトゥム様は俺まで殺そうとしたのか・・・」



 シューはドラゴンの上で膝から崩れ落ちる。



 「そうみたいですね。でも、私がいるので大丈夫です」



 私はニコって笑って、シューを励ました。



 「俺たちも逃げましょう」



 颯爽と逃げたセトの後を追うように他の竜騎士達も逃げ出した。



 「勝手な行動をとるな!」



 アトゥムが大声で叫ぶが、誰も支持には従わない。


 私は翼を羽ばたかせて、シューのドラゴンから、アトゥムのドラゴンに移動した。



 「あなたは逃しませんよ」



 私は笑顔でアトゥムに警告をする。



 「俺が逃げるだと・・・笑わせるな。俺は最初に竜騎士になった最強の竜騎士だぞ。逃げた奴らと一緒にするな。俺の本当の恐ろしさを見て後悔するなよ。俺の本当の姿を見た時それは・・・」



 アトゥムは悪役特有の挑発する言葉を並べて、私を侮蔑するような眼差して、悪態をつくでのある。



 『ドアノックパンチ』


 

 私は、相手の話を最後まで聞く優秀な小説の主人公ではない。これ以上無駄話を聞かされるのも面倒だし、いちいちアトゥムの本当の力を見てあげるほどお人好しでもない。なので。テフヌトたちを食らわしたドアをノックするような軽いパンチを、アトゥムのみぞおちにお見舞いした。



 『グフゥ』



 アトゥムはお腹を抑えて、悲鳴をあげながら転がり回る。



 「痛いよ。痛いよ。痛いよ」



 私は、アトゥムに話を聞き出したかったので、かなり手加減して、『ドアノックパンチ』を食らわしたのである。その甲斐あって、アトゥムは意識はあるみたいであった。



 「お話を聞きたいのですが」



 私は笑顔で声をかけた。



 「痛いよ。痛いよ。痛いよ」



 アトゥムは、ドラゴンの上で転がり回って、ずっと悲鳴をあげているので、私の話を聞ける状態ではない。


 私は話を聞き出せる状態でないことを悟り、回復魔法を使うことにした。



 『リフレッシュ』


 

 私の回復魔法を受けたアトゥムは、痛みがおさまりホッとしている。



 「私の話を聞いてくれますか?」


 「なんでも聞いてください」



 私の圧倒的な強さを知ったアトゥムは素直に返事をした。


 私はシューに話したように、神人に騙され得ていることを説明した。



 「本当なのですか?」


 「あくまで、私の推測ですが、間違いないと思います」


 「私もルシス様の言っていることが正しいと思います。私たちは、間違った力の使い方をして、この呪いをかけれました。しかし、呪いを解く方法は、あまりにも非人道的行為です。神がこのような行為を促すなんて、おかしいとやっと私は気付いたのです」


 「確かにお前のいう通りだ。俺たちは呪いを解くために、たくさんの罪もない『オリュンポス国』の国民を殺さないといけない。俺もこんな方法は間違っていると思っていたが、それしか俺たちの自由を手に入れる方法はないと諦めていた」


 「しかし、その方法すら嘘の可能性があるのです。私たちは、アトラースにいいようにもて遊ばれていたのです。それをルシス様が教えてくれました」


 「その女の子を信用してもいいのか?」


 「アトラースかルシス様かどちらが言っていることが本当に正しいのかは、ご自身で判断すべきだと思います。私も最初はルシス様の話を疑っていました。しかし、ルシス様の強大な力と、慈悲のある言葉で、私はルシス様を信用することにしました。そして、現に私の呪いは解除されました」


 「・・・」



 アトゥムは、目を閉じてじっくりと考え出した。





 

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