第316話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート28
「俺たちが騙されているだと!!」
「はい。そうです」
「アトラース様は、俺たちに強大なる力を授けてくれた偉大なる神人だ。俺たちを騙すようなことはしないはずだ」
「でも、強大な力をくれても、この島から出ることができなければ意味ないです」
「だから、それは・・・俺たちがこの力を間違った使い方をした天罰なのだ・・・」
「人族・・・いえ、どの種族でも大きな力を得れば、その力を使って勢力を拡大するはずです。アトラースは、初めからあなたたちが、どのような行動をするかは予測をしていたはずです。アトラースの目的は、力を与えるのではなく、あなた方に制約を与えて、人族同士の混乱を見て楽しむことです」
「そんなことはない、アトラース様は神の使いだ。神がそんな愚かなことをするはずがない」
「そもそも神が、清廉潔白だと思っているのが間違っています。神は自分たち以外の種族をおもちゃとして見ています。なので、この世から争いはなくならいし、平和が訪れることがありません」
「神を冒涜するお前は一体何者なのだ?」
「私は通りすがりの冒険者です。でも、色々と知識は豊富なので、あなたより、神のことは詳しいはずです」
私は、魔王書庫でいろんな文献を読み漁っていた。もちろん神人のこと、そして、神のこともたくさん記載されていた。
「もう・・・アトラース様の意図などどうでも良いのだ。俺たちは、この島から解放されたいのだ」
シューは、か弱い声で言った。
「私がその呪いを解除してあげます」
「そんなことできるわけないだろう」
「神人ごときの魔法による呪いなど、私にかかればお茶の子さいさいです」
「本当にできるのか?」
「はい。でも一旦死んでもらいます」
「えっ」
「死んでもらいます」
「えっ!えっ!」
「何度も言わせないでください。死んでもらいます」
「死んだら呪いからは解放されるが、死んでしまったら意味がないじゃないか!!」
シューは大声で叫ぶ。
「大丈夫です。私が蘇生してあげます」
私は笑顔で言った。
「信用できるか!!!」
シューが信用できないのももっともである。この人界では死者を蘇らせる魔法などないのである。
「1番簡単な方法だったのに・・・仕方ありません。あなたのステイタスをイジって呪いを解除します」
「それは・・・死なずにできる魔法なのか?」
「もちろんです。あなたのステイタスに表示されている『呪い』を解除するだけです。しかし、これをすると、術者にバレてしまう可能性があるので、殺した方が安全なのです」
私はアトラースの悟られることなく呪いを解除したかった。あまりこちらの情報を流したくないのである。
「死ぬのは嫌だ。呪いを解除できるなら、ステイタスをいじるやり方を望む」
「わかりました」
私は7大天使様の一人カマエル様にもらった『精神を解放できる力』を改良して作った能力『スキャン』と『改ざん』を使った。
シューのステイタスが私に脳内に表示される。シューのステイタスを見ると、状態の欄に『呪い』と表示されている。私は『改ざん』の能力を発動して、『呪い』を『正常』に書き換えた。
すると、シューの体から赤い影が現れて、上空に消えていった。
「これで呪いは解除しました。先ほどの赤い影が呪いの正体です。赤い影は術者の元へ戻ったと思います」
「これで、俺は島を抜けることができるのだな」
「はい」
「ありがとう・・・俺たちはアトラースに騙されていたんだな・・・」
「そうです。たぶん・・・ネテア王妃の『裁きの力』を奪える話も嘘だと思います。あなた方を使って、『オリュンポス国』を魔獣を使って滅ぼす様を見て、楽しもうとしているはずです」
「本当なのか・・・」
「あくまで私の推測です。竜騎士族にかけた呪いは、術者ならいつでも解除できるはずです。なので、アトラースは人界が争う様を見て楽しんでいるだけなのです」
「俺たちは、アトラースのおもちゃだったのか・・・」
「そうです。退屈な神人の暇潰しだったのでしょう」
「このことはすぐにみんなに報告しないと!!」
シューは焦るように言った。
「もう、遅いかもしれません」
私の前にはドラゴンに乗ったたくさんの竜騎士が取り囲んでいたのである。
「シュー、何をしているのだ」
白髪の長い髪の男性がシューを怒鳴りつける。
「アトゥム様、呪いを解く方法がわかりました」
白髪の長い髪の男性はこの島の長であるアトゥムである。
「呪いの解放の方法はアトラース様から聞いているだろう。それ以外に方法はないのだ」
アトゥムはシューの話を聞こうともしない。
「それより、その女の子は誰だ」
「通りすがりの冒険者です」
シューは私が名乗った通りに説明した。
「通りすがりで、この島に入れるわけがないだろう。そいつは、テフヌトとイシスを簡単に倒したと聞いているぞ。お前はそいつの強さに屈して、言いなりになっているのか!」
セトは、私の強大な力を感じたときに、すぐに遠くに逃げて、様子を伺っていたのである。そして、私が、テフヌトとイシスをドアノックパンチで瞬殺してのを見ていたのであった。私はか弱い魔力を感じていたが、シューの方が気になったので、放置してしまったのである。セトは、急いでアトゥムの元へ戻って、近況を報告したであった。
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