第315話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート27


 神人は天界の住人である。しかし、神人が住んでいるのは表天界である。天界には表天界と裏天界と二つの世界がある。神や、私に力を授けてくれて7大天使様、ゲリやクラちゃんが住んでいるのが裏天界である。


 悪魔が魔王の子供に力を授けるように、神人と言われる神の使いと言われる種族は神から力を授かるのであった。


 私が文献で読んだ内容では、魔界も天界も人界へは介入しないと取り決めを行っている。しかし、それは表面的な約束であり、お互いに少しは介入しているのである。


 ルシスは知らないが、魔界から、ブラカリの町へ魔石技術を供与しているし、最近では、リプロがフェニに強い力を授けている。なので、天界からも多少の人界への介入はある。


 もし過度な介入をした場合は、お互いにそれを阻止しないと人界のバランスが崩れてしまうのである。


 アトラースは神人であるので、神から直接力を授かっていると推測して、間違いないだろう。直接関わるのは危険なのかもしれないが、なぜ、フレキさんを連れ去ったのか理由を知りたい。



 「神人は噂では聞いたことがあります。神人のアトラースの指示でフレキさんを連れ去ったのですか?」


 「フレキ?」


 「ウルフキングのことです」


 「ウルフキングを連れ去ったのは、ラードーンの代わりにするためだ」


 「ラードーンの代わりとはどういうことなのですか?」


 「話せば長くなるぞ」


 「構いません」


 「そうか・・・俺たち竜騎士族は、昔は普通の人族の村人だったのだ。争いや魔獣の襲撃などで、村人たちは、食べる物も無くなって、絶望の毎日暮らしていた。しかし、そんな村にある時、金色のオーラを纏った一人の男性が現れたのだ。その男性は、村人の悲痛の叫びに同情して、ある力を授けてくれた。それが、竜を操る力『支配』という能力だ。一部の村人は『支配』の力を得て、ドラゴンを召喚しドラゴンを操って、争いや魔獣の侵略を簡単に退けることができるようになったのだ」


 「それは良かったですね」


 「最初の頃はそれで良かったのだ。しかし、『支配』の能力を与えられた者は、後に争いを仕掛ける側に回ってしまったのだ。近隣の町を襲い、領土を奪い竜騎士の国を作り始めたのだ。そして、国の半分を支配した頃、金色のオーラを纏った男が、竜騎士族の元へ現れたのだ。そして、その男がこう言ったのです」


 「私は、身を守るためにその力を与えたので。しかし、あなた方は弱者から、強者に立場が変わった途端、国を支配するという、愚かな選択をしてしまいました。私が与えた能力にはある制約があったのです。『支配』の能力を使って悪事を働くと『ヘリオポリス島』へ監禁されるという制約です」


 「そして、俺たちは、『ヘリオポリス島』に監禁されたのだ。しかし、監禁と言っても、4時程度なら島から出ることはできるのだ。でも、4時間を過ぎると、急激に魔力が消耗して、魔力がなくなると死んでしまうのだ。だから、俺たちはこの島から出ることができないのだ」


 「自業自得ですね。でも最初からきちんと説明してくれれば、結果は変わっていたのかもしれませんね」


 「そうだな・・・」


 「それで、その話がウルフキングを連れ去るのどどう関係があるのですか?」


 「俺たちがこの島から出る方法が一つあるのだ」


 「気になります」


 

 私はワクワクして聞いている。



 「『オリュンポス国』にいるネテア王妃の『裁きの力』を譲り受けることだ。『裁きの力』があれば、俺たちの制約という呪いを解除してくれるのだ」


 「ネテア王妃に頼んで、解除してもらったらいいのではないのですか?」


 「俺たちは竜騎士族になったので、人族のネテア王妃は俺たちの呪いを解除することは出来ない」


 「そうなんですね。それなら具体的にどうやった『裁きの力』を譲り受けるのですか?」


 「ここでラードーンの力が必要になるのだ。150年前にも俺たちは、当時の王妃から『裁きの力』を譲り受ける為に、ある作戦をアトラース様から授かったのだ」


 「ある作戦とは?」


 「魔獣王ラードーンに『オリュンポス国』を滅ぼさせて、絶望に打ちひしがれている時に、勇者として、俺たちが現れ魔獣王ラードーンを倒すのだ。魔獣王ラードーンを倒すことによって、俺たちは『オリュンポス国』の英雄になるのだ。そして、王妃に俺たちの状況を説明して、『裁きの力』をもらうことになっていたのだ。しかし、150年前の作戦は失敗に終わった。なので、今回こそは必ず成功させないといけないのだ。俺たちには時間がないのだ」


 「時間がないとはどういうことですか?」



 「『裁きの力』は誰でも授かることは出来ないのだ。『裁きの力』を授かることができるのは、150年に一度生まれてくら竜の巫女と呼ばれる赤子だけが授かることができるのだ。しかも生後1年以内ではないと授かることは出来ない」


 「それは、本当なのですか?」


 「アトラース様が言っているので間違いないはずだ」


 「それで、ラードーンの代わりにウルフキングを使うことにしたのですね」


 「そうだ」



 思わぬところで、私は、150年前『オリュンポス国』を襲った黒幕の正体を知らされた。黒幕は竜騎士・・・ではないアトラースだ。この竜騎士はアトラースにうまく利用されて、遊ばれているのだと私は推測した。


 150年前は、私のお父様がラードーンを倒して『オリュンポス国』を守ってあげた。しかし、真相は神人の介入を阻止するために、ラードーンを倒したのだと私は思った。お父様は直接天界に行くことは出来ない。なので、アトラースの悪巧みを阻止したのであろう。



 「竜騎士さん、あなたは騙されていますよ。神人は人族を使って遊んでいるのです」



 私は珍しく真剣な表情で言った。

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