第182話 倭の国パート23
「徳川将軍ご無事でしたか」
「ヒメコ様申し訳ございません。私の力が足りないばかりでエードの町を混乱させてしまいました」
ヒメコ様は妖狐の姿からヒメコ様の姿に戻っている。
「気にしないでください。私がしっかりと監視すべきだったのですが、京の町からなかなか出ることができなくて、このような事態になってしまいました」
「ヒメコ様のせいではございません。武蔵達が反旗を翻したのが1番の原因です。それで、武蔵達はどうなったのですか」
「武蔵達はここにおられる冒険者のルシスさんとロキさんが倒してくれました。そして徳川将軍に化けていた化け狸を捕らえることもできました」
「鬼の化け物の方はどうなったのですか?」
「ここにいてます」
ヒメコ様は妖狐の姿に戻って、家康将軍に事の顛末を全て説明した。
「やはりヒメコ様が妖狐様だったのですね。子供の頃から妖狐様と織田将軍様の話しは、よく聞かされていました。倭の国を命をかけて守った妖怪様達の亡骸は京の都に埋葬されました。しかし、八岐大蛇を封印した英雄の妖狐様だけは埋葬されていないと聞いていましたので、もしかしたら生きているのかと噂されていました」
「私は妖力を失って確かに一度は命を失ったはずです。しかし織田さんの力により、微量の妖力が復活して生き返ることができたのです。150年経った今でも妖力はほとんど戻ることはありません。なので、倭の国の政治には直接口を出さないようにしていました。しかし、私は倭の国再興を図りたいと思います。若くして亡くなった織田さんの思いを無駄にしたくないのです」
織田将軍は40歳でその生涯の幕を下ろした。しかし10年間は、妖狐の人間の姿であるヒメコ様と共に過ごすことができたのであった。
「微力ながら私も手伝います」
家康将軍はヒメコ様と共に倭の国の再興を誓ったのであった。
そして、家康将軍達は地下牢から救出されたのであった。
次は化け狸、いやバカ狸の尋問である。
家康将軍達が捕らえれていた地下牢に、バカ狸を入れて尋問が始まった。
バカ狸は化けること以外は何もできないので、簡単に全てのことを自白した。
5年前、偶然エード城の酒蔵でバカ狸を封印しているツボを見つけた武蔵は、封印のツボをお酒と間違えて開けてしまった。封印のツボから出てきたバカ狸を見て驚いた武蔵だが、バカ狸の甘ーい誘惑にすぐに意気投合して、エード城を支配することにしたのであった。
そして偶然にも、ダイダラボッチに投げ捨てられた酒呑童子が、150年かけてやっと倭の国の酒蔵に辿りつき、お酒を盗んでいるところをバカ狸に見つかって、いいように言いくるめられて仲間になったみたいであった。
そして、バカ狸は聞いてもいないのに150年前の八岐大蛇の件のこともベラベラと喋り出した。
「俺は人間のような奴に頼まれて、八岐大蛇の封印を明智に解除させたのだ。本当は、俺が倭の国の支配者になるはずだったのに、八岐大蛇は命の恩人の俺を封印したのだ。だから、俺は被害者なのだ。だから少しくらいは恩恵を受けてもいいのだ」
バカ狸の言い分をきた私はバカ狸は何も反省していないと感じた。私はヒメコ様の許可をもらって、バカ狸を再び封印のツボに戻してあげたのであった。
私たちが剣術大会に参加していた頃、トールさん達はわんこそば大会の会場を目指していた。
エードの町のことをよくわからないトールさん達のために、ヒメコ様は1人のくノ一を案内役につけてくれていた。
「私はヒメコ様に使える3忍衆の1人、服部かえでと申します。ヒメコ様の命により、今日はエードの町を案内させてもらいます」
服部かえでは、もみじちゃんと違って目立たないように、町人と同じような格好をしている。
「かえで、よろしくな」
トールさんが挨拶をした。
「かえでちゃん、わんこそば大会の会場を案内してもらえるかしら」
ポロンさんが、かえでちゃんに案内を依頼する。
『キラーーーン』
サラちゃんの目が光る。
「あっちですわ」
サラちゃんが1人で走って暴走する。
「サラ、どこへ行く」
トールさんが叫ぶがサラちゃんの姿はもう見えない。
「ポロン、どうする?サラを探しに行くか?」
ポロンさんは目を瞑って考え込む・・・・
「サラちゃんの格好はエードの町ではかなり目立ちますわ。なので、焦って探さなくてもすぐに見つかると思いますわ。サラちゃんを探すよりも先に、わんこそばの大会の会場を目指しましょう」
ポロンさんは閃いたのであった。サラちゃんがいると、わんこそば大会の優勝は大食いのサラちゃんになってしまう。しかし、このままサラちゃんがいなくなれば、自分が優勝できるかもしれないと閃いたのであった。
「そ・そ・そうだな。むやみに探し回ってみんながバラバラになるより、目的地であるわんこそば大会の会場で待っていた方が無難なのかもしれないな」
もちろんトールさんも同じことを考えていた。これでライバルが1人減ったと。
2人の思惑は一致したのでサラちゃんを探すことをすぐに諦めて、かえでちゃんにわんこそば大会の会場を案内してもらうことにした。
私の知らないところでエードの町では、もう一つのくだらない戦いが始まろうとしているのであった。
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