第140話 妖精王パート10
「おかしいわ。全然浮き上がってきませんわ」
サラちゃんの機嫌がどんどん悪くなる。
「なんで、いないのよーー」
サラちゃんはヤミークラブが浮き上がってこないのでイライラしている。
「サラちゃんどうしたの?」
「えーーーと、えーーーと」
サラちゃんはヤミークラブの存在を隠したいのである。
「どうしたのサラちゃん?ビッククラブはたくさん捕れたから出雲山に行きましょう」
私は不機嫌な理由は知っているがあえて知らないふりをしている。
「ダメよ。もう少しここに居たいのよ」
サラちゃんはどうしてもヤミークラブを捕まえたいのである。このままここでじっとしていても無駄なので、私は少しアドバイスをしてあげることにした。
「ここから北に10キロくらい離れた円月海岸に、ヤミークラブの巣があるみたいです。ビッククラブに食べ飽きたのならヤミークラブを食べに行きませんか?ヤミークラブはビッククラブの数倍も美味しいと聞いたことがあります」
「それは本当か!!!」
サラちゃんよりも先に、トールさんが話しに飛びついてきた。
「ヤミークラブは私の物よーー」
と叫びながらサラちゃんは円月海岸に向かって高速で飛んで行った。
「サラのやつがあんなに急ぐということはかなり美味しいのだろう」
トールさんは瞬時に理解した。
「ルシス、俺たちも行こうぜ」
「わかりました」
トールさん達はフワリンに乗って、ヤミークラブの住処である円月海岸に向かった。
円月海岸は海に浮かぶ島の中央が、海蝕により円月形に空いている島の海岸のことである。円月海岸はヤミークラブの巣となっていると私は本に書いてあったと記憶している。
早く行かないとサラちゃんが、円月島ごと火の海にしてしまいそうなので、私だけいち早くサラちゃんを追いかけることにした。
私の高速スピードで、なんとかサラちゃんの後ろ姿を確認することができた。サラちゃんは円月海岸が見えると、すぐに円月島に降りていった。私もサラちゃんの後を追って円月島に降りたのであった。
円月島に降りるとサラちゃん以外にも人がいた。
「ヤミークラブは、どこにいるよ」
「私が美味しく頂いたわ」
「なんですって!!!私の分はないの?」
「もっと早く着てくれたら少し分けてあげたのに」
サラちゃんと誰か話しているみたいだ。話しの内容から察するとヤミークラブは既に全てなくなっているみたいである。これは大問題である。このままではサラちゃんの怒りが爆発して、先にヤミークラブを食べた人が危険である。なので私はすぐに2人の間に割って入ったのである。
「サラちゃん、暴れたらダメよ」
「・・・・」
「ルシスちゃん何しに来たの?」
「クラちゃん?」」
「またあったね。ルシスちゃんもヤミークラブを食べにきたの」
サラちゃんと話していたのはクラちゃんであった。クラちゃんもヤミークラブを獲りに円月島に来ていたみたいである。
「うん。ヤミークラブを獲りに来たけど全てクラちゃんが食べたの?」
「私が来た時もほとんどヤミークラブはいなかったわ。必死で探して3匹捕まえるのがやっとだったもよ」
「私のヤミークラブはどこに行ったのよー」
サラちゃんはかなり動揺している。それほどヤミークラブが食べたかったのであろう。
「サラマンダーちゃんそんなに落ち込まないでね。代わりにこの雷光石を一つあげるわ」
「本当に!」
「私とサラマンダーちゃんの仲じゃないのよ」
「わーーい。わーーーい」
サラちゃんはすぐにご機嫌モードに切り替わった。サラちゃんとクラちゃんは知り合いだったみたいである。
「クラちゃん、サラちゃんと知り合いなの」
「そうよ。昔はよく大食い対決をしたものよ」
「そうなのよ、クラーケンちゃんは私の大事なマブダチよ」
それはよかったのであった。ヤミークラブを取り合って、クラちゃんとサラちゃんが喧嘩をするのではないかと心配していたけど取り越し苦労であった。
「クラちゃん。どうして、ヤミークラブはいなくなったのかしら?」
「さっき、ヒュドラの姿を見たから、たぶん・・・ヒュドラが食べたのかもしれないわ」
ヒュドラとは、9つの首をもつ水蛇の魔獣のことである。
「ヒュドラが私のヤミークラブを奪ってのね!ぶち殺してやるわ!!」
サラちゃんはヤミークラブを先に食べられた恨みをヒュドラにぶつけるのである。
「ヒュドラはどにいるのよ」
「出雲山のある宍道湖にいるはずよ。出雲山は八岐大蛇もいる蛇の楽園よ」
「私が全ての蛇を成敗してあげるのよ」
「私も手伝ってあげたいけど次のご馳走が待っているわ。なので2人で頑張ってね」
そう言うと、クラちゃんは、クラーケンの姿になって海の中へ消えた行った。
八岐大蛇を討伐しに出雲山に行くはずが、水蛇の魔獣ヒュドラも討伐することになってしまった。しかし、クラちゃんは出雲山は蛇の楽園と言っていた。ヒュドラ、八岐大蛇以外にも、蛇の魔獣がいるのだろか?これは慎重に行動しないといけないと思ったのであった。
「ルシス、ヤミークラブはいたのか」
フワリンで、私を追いかけてきた、ロキさん達が到着した。
「トールお姉ちゃん。ここにもヤミークラブはいてませんでした」
「それは、残念だな。ヤミークラブを食べてみたかったぜ」
「私も食べてみたかったわ」
トールさんとポロンさんが、悔しそうにしている。
「仕方がないわ。ヤミークラブは諦めて、八岐大蛇の討伐に行きましょう」
「ロキお姉ちゃん大変です。出雲山にはヒュドラもいるみたいです。そしてそのヒュドラが原因で、ヤミークラブがいないのです」
「そうなの。それで、サラちゃんはあんなに荒ぶっているのね」
「ヒュドラ、ぶっ殺す。ヒュドラ、ぶっ殺す。ヒュドラ、ぶっ殺す」
サラちゃんは念仏を唱えるかのようにずっとつぶやいていたのであった。
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